第47話 タイムアタック
「あー、危なかった。」
「それは僕たちのセリフだよ。コウちゃん。」
「そうだよ~。私はコウちゃんに連れてきてもらった身だから文句を言う資格ないかもしれないけどさ~。」
「悪かったよ。まだ行けると思ったからさ。」
コウちゃんは頭をかいた。
「まあ、みんなわかってたことだ。あの時点でコウなら行くだろうって。」
セイちゃんは笑いながら言った。
「さて、じゃあ帰る前にもう一つ無理してみるか。」
「これ以上、何をするの?あと5分もないよ。」
「そうだよ~。さすがに何かするのは無理だよ~。」
「あたしもさすがに反対だ。みんな疲れてるぞ。あたし以外!」
さすがに今度ばかりはコウちゃんに反対意見が飛んだ。するとコウちゃんは僕を見た。ニヤッと笑う。
「キュウ、あと少し無理できるか?」
コウちゃんの目が真剣だ。
「内容によるよ。ムーヴは無理だよ。」
それを聞いてコウちゃんはうなずいた。
「よし。『ドア&キー』を2分間!やってみてくれ!」
「あ~。なるほど~。それならいいかも~。キュウちゃんがやれればだけど~。」
「キュウ。やれるのか?」
みんなが僕を見る。確かにみんなが『パズルと同じ僕の分野』と言ってた。やってみたい。
「うん。やってみるよ。」
「よし。じゃあ行くか。」
コウちゃんが立ち上がる。
「待って。それなら条件を同じにしないと。」
ケンちゃんが僕を見た。目が真剣だ。
「僕たちと同じように何も知らない状態で行ってほしい。誰かが教えたら平等じゃないから。」
「あんたはまたそんなことを!」
ケンちゃんにセイちゃんが詰め寄った。
「セイちゃん。いいよ。それで。」
「あんたもか。さっきと一緒だな…。」
セイちゃんはふぅっと息を吐いた。
「じゃあ時間ないから行ってきます。早くしないと本当に時間がなくなっちゃうから。」
僕は立ち上がって『ドア&キー』に走った。入り口を開ける。すると後ろに気配を感じた。服をギュッとつかまれる。
「私は入っていいはずだよ。連れてって。」
メイちゃんが僕をじっと見る。僕はうなずく。
「うん。一緒にいこう。」
メイちゃんは笑顔でうなずいた。
「よし。メイ!一つの部屋をクリアしたら笛を吹いてくれ。そしたらあたしはその部屋に入る。あんたらは次に進む。これならあたしが教えることはない。これでいいんだろ?ケン。」
「ああ。それならかまわない。」
「よし。キュウ。急げ!」
「うん。わかった。いきます。」
僕とメイちゃんは第1の部屋に入る。ユウちゃんの説明のままの部屋、すぐ目の前には次のドアがある。僕はドアノブをつかみながらまわりを見た。ドアノブの位置はドアの右側、左を見ると手前に引っ張れる金具が見える。ドアノブをまずは右に回して引く。ドアは開かない。
「ということは…。」
僕はドアノブを左に回して引く。するとドアが開いた。
「メイちゃん。次行くよ。」
メイちゃんはうなずいて歩きながらピーッと笛を吹いた。セイちゃんが入ってきた。
「やるな。頑張れよ。」
僕はうなずいて次のドアを見た。第2の部屋のドア。さっきと同じで手前に引くドア。ドアノブをつかんで左に少し回してみるがまわらない。でもドアノブに違和感があった。回し終わりのぶつかる感じがない。
「もしかして…。」
僕はドアノブを右に一回転させた状態で両手で一度止める。さらに右に回してみた。ドアノブはさらに一回転する。そして止まった。ドアノブを引くとドアが開いた。
「よし。メイちゃん。」
メイちゃんはうなずいて笛をピーッと吹く。そして次の僕と一緒に部屋に入った。
「時間がないから次々いかないとね。」
メイちゃんにそう言ってから僕はドアの前に立つ。第3の部屋のドア。まずは周りを見る。少なくとも引くドアではないみたい。ドアノブを左に回すが回らない。右に回し押してみるが動かない。一応引いてみて動かないことを確認する。
「前後じゃないなら。」
僕はドアノブを回したまま左右に動かしてみる。すると左に動く感触があった。ドアノブを持ったまま左に力を入れるとドアは横にスライドした。
「やっぱり横か…。」
振り向くとメイちゃんが目を大きくして固まっている。僕がうなずくとメイちゃんもうなずき笛を吹く。そして次の部屋に二人で入った。
「キュウ!あんたはすごい!あたしらはここまでにかなりかかったんだぞ!」
セイちゃんが隣の部屋から叫んだ。
「あとで説明するよ。」
僕はそう言ってドアの前に立つ。第四の部屋。ドアノブを回す。回る向きは右。前に押してもダメ。後ろもダメ。左右もダメみたいだ。
「前後左右がダメってことは…。」
メイちゃんが横に来て口を動かす。
「もしかして上下?」
「たぶん正解!」
僕は下に動かしてみる。すると20センチほど下に動いて止まった。それ以上は動かない。
「下じゃないってことは。」
僕は一度手の力を緩める。ドアノブは真ん中に戻る。今度は上に持ち上げてようとしてみる。でもドアノブは動かない。
「下に動いたのは確かだから…。」
下に動かす。そしてその位置で前後左右に動かしてみると前に動いた。そしてそこから動く方向を探すと…。
「やっぱり上だった。」
ドアは上にスーッと上がった。シャッターが上がっていく感じに見える。メイちゃんが笛を吹いた。セイちゃんが入ってくる。
「早い!すごい!でも時間的にも次がラストだぞ。できれば開けてみせてくれ。」
「うん。わかった。」
僕たちは第5の部屋に入った。今までとは部屋の中が違う。今までは『ドア』だけだったけど、この部屋からは『キー』、つまり鍵もある。部屋の左側の壁にはパズルと同じようにフックが10個くらいあり、そこにはそれぞれ円形の鍵の束。そして鍵が10個くらい繋がっている。右側の壁には天井の滑車からぶら下がるようにチェーンが輪になっている。そしてそのチェーンには大きな南京錠、そして鍵のついたリングがぶら下がっている。僕は一応ドアノブを回し前後左右上下に動かしてみるが全く動かない。『鍵があるけどかかってない』という引っかけ問題ではないみたいだ。
「その南京錠が開けばチェーンが外れて、そうすれば鍵がついたリングが取れてドアの鍵が開く。だよな?」
セイちゃんが僕に聞いた。
「うん。それが正攻法。ただ正解じゃないと思う。」
「は?正解じゃないのか?じゃあまさか壁の鍵のどれかがドアの鍵か?」
セイちゃんが驚いて僕に聞いた。僕はチェーンを回す。南京錠はチェーンと一緒に上に上がり、滑車を通って下に戻ってきた。
「だとしたら…。」
僕は頭の中の引き出しから手品やパズルの方法を探す。チェーンと南京錠のトリックは…。
「見つけた!この方法かな。」
僕はチェーンをもう一度、今度はなるべくゆっくり回す。チェーンを一つずつチェックしていく。南京錠が一番上まで上がった。
「ここだ!」
僕はチェーンを左右に引っ張る。
パチーン。
チェーンは真ん中で外れた。鍵のついたリングが床に落ちる。
「え?な、なに?まさか切ったのか?」
「まさか。そんなわけないよ。」
僕が答えると横でメイちゃんがノートを開いた。
「セイちゃんじゃあるまいし。」
僕は吹き出す。
「余計だろ!メイ!」
叫ぶセイちゃんを横目に僕は鍵のついたリングを拾いドアの前に立つ。そしてリングについた鍵を差し込んで回す。
ガチャッ。
僕はドアノブを回す。ドアは奥に開いた。
「この先はまた次回で。メイちゃん、セイちゃん。戻ろう。」
「お、おう。」
セイちゃんが戻ろうとドアノブをつかんだ。が、ドアノブが回らない。
「大変だ!閉じ込められた!」
セイちゃんが叫ぶ。僕も焦った。でもそのときパズルの部屋を思い出した。確かパズルの部屋はあった場所に物を戻さないといけなかった。ということは…。僕は手に持った鍵のついたリングをチェーンに引っかけて繋げた。そして南京錠が下にくるように回す。
「セイちゃん。もう一回やってみて。」
「お、おう。えーっと、あ、回った。よし、このドアは下にずらして上へ。」
セイちゃんがドアを開けた。僕が走って次のドアへ。横にスライドさせて開ける。メイちゃんが僕の横をすり抜けて次のドアへ。ドアノブを二回転させて開ける。最後はセイちゃんがドアノブをつかみ開ける。
「脱出!急げ!」
僕とメイちゃんが部屋から出るとセイちゃんがドアを閉めた。
「おーい!出たところ悪いけどそのまま走れ!アメイズからも脱出だ!」
声がする方を見るとコウちゃんが螺旋階段で手を振っていた。




