第42話 少し休憩。
「おつかれー。」
コウちゃんが僕の前まで来て手をあげた。僕も手をあげてそのままハイタッチ。僕はそんなことをする予定ではなかったので少し押された形になった。
「おつかれ~。頑張って声出したから疲れたよ~。」
ユウちゃんもそう言ってハイタッチ。どうやらこれをする流れを作ってしまったみたいだ。
「あー。あたしの声でも厳しいなんて。ずいぶん叫んだんだけど。」
セイちゃんが笑いながら僕の手を叩いた。
「おつかれ。いやー、やっぱり一筋縄ではいかないや。そっちはどうだった?」
「こっちもだよ。何とか第2エリアにたどり着いたけど、そこで謎にぶち当たった感じ。」
「そっか。まあ簡単に解けたら苦労はないからね。こんなもんか。」
バチーン。
僕とケンちゃんが話していると僕たちの背中をユウちゃんが叩いた。かなり痛い。
「は~い。話し合いはみんなでしましょ~。密談はやめましょ~。」
ユウちゃんはそう言って笑った。
「わかったけど背中は頼むからやめて。もう今日だけで四回目だよ。」
ケンちゃんは背中をさすりながらみんなの方へ歩いた。僕も歩いた。みんなはすでに輪になって座っていた。僕とケンちゃんも座る。僕たちの前に大量のクッキーが並んだ。ユウちゃんが持ってきたらしい。
「は~い。三種類あるから~。毒味おねがいしま~す。」
ユウちゃんはそう言って笑った。
「飲み物もあるからなー。と言ってもお茶しかないけど。」
2リットルのペットボトルのお茶と紙コップも出てきた。これはセイちゃんが持ってきたらしい。みんながそれぞれ食べたり飲んだりして休んでいる。僕も飲み物を取ろうとしたけど、横からジャスミンのにおいがしたから紙コップだけ取った。そして横を見るとメイちゃんは笑顔でうなずき水筒からそれを紙コップにいれてくれた。
「ありがとう。メイちゃん。」
「どういたしまして。」
メイちゃんは口を動かしてから笑った。
「なんだ?お茶があるのに。次は2リットルのジャスミンを用意してやろうか?」
セイちゃんは僕たちを見て笑った。
「セイちゃ~ん。メイちゃんに嫉妬したらダメだよ~。もしセイちゃんがジャスミン持ってきてもキュウちゃんはメイちゃんからもらうんだから~。無駄だよ~。」
ユウちゃんが笑いながらそう言った。僕は返答に困っている。
「だーれーがー、嫉妬なんてするか!お茶が残ったらどうするって言いたかっただけだ!まあ、あたしが持ち帰るけど。そして家で飲む!なあ?メイ。」
セイちゃんがメイちゃんを見た。
「飲みすぎは体によくないよ。あとセイちゃんがジャスミンを用意したらきっと濃すぎたりしてほうじ茶みたいになるから。私が用意します。」
メイちゃんのノートを見て全員が大爆笑。
「失礼だ!いつあたしがジャスミンをほうじ茶にしたんだ?」
セイちゃんの反論に対してメイちゃんはすごい早さで文字を書いた。
「目玉焼きをスクランブルエッグにしたり、カレーの水の量を間違えてスープカレーにしたり。レタスを豪快に手でちぎって皿にもって『サラダも作れるぞ!』って自慢気に言ってたよ。」
「もういい。やめてくれ。あたしが悪かった。」
メイちゃんの攻撃にセイちゃんは耐えられずに真っ赤になってダウンした。
「メイちゃんの勝ち~!でもメイちゃんがこんなにノートを使ったのも初めてみるよ~。そんなにジャスミン係をとられたくなかったの?」
ユウちゃんの言葉に今度はメイちゃんが真っ赤になってダウンした。僕も恥ずかしくてジャスミンを飲み干すとメイちゃんのコップと僕のコップにいれた。
「メイちゃん、飲んで。落ち着くよ。」
メイちゃんは『ありがとう。』と口を動かしてゆっくりとジャスミンを飲んだ。
「さて、盛り上がってるとこ悪いけど、そろそろ話を戻そう。」
コウちゃんがそう言うとみんなの表情が少し真剣になった。
「じゃあ、まずこっちの説明からするか。ケン、頼む。」
コウちゃんにそう言われケンちゃんはうなずき話し始めた。
「まず、キュウの言うように五番目の部屋からドアが閉まった。ドアは確かに全部の部屋で閉まった。そして開かなかった。」
「やっぱり開かないんだ。」
僕がつぶやくとコウちゃんが答えてくれた。
「ああ。俺とセイが開けようとしても全然動かなかったから。あれは力じゃ開かない。」
セイちゃんもうなずいた。さらにケンちゃんが説明を付け足した。
「ちなみに閉まらないようにしてみたけど、そのときは画面に次の問題が出なかったよ。」
「え?閉まらないようにしたの?」
僕はさすがにそこまで考えていなかったから驚いて聞いた。ケンちゃんは笑って答えた。
「セイが野球ボールを一個持ってきてたからドアに挟んだんだよ。」
「すごいよね~。発想が~。ずる賢いっていうか~、素直じゃないっていうか~。」
ユウちゃんがそう言って笑う。
「だからずる賢いは失礼だよ。まあ、いいか。話しを続けるよ。五番目の部屋の声は四番目の部屋には聞こえる。けど三番目には聞こえない。つまりドアが閉まると隣同士の部屋の声くらいしか届かないみたいだ。それは誰の声でも同じだった。厳密に言うと聞こえるけど何を言ってるかわからないって意味だけど。」
「じゃあ六人の伝言ゲームでも七番目の部屋までしかクリアできないってこと?」
僕が聞くとケンちゃんはうつむきながら答えた。
「いや、それも無理なんだ。なぜなら六番目の部屋からは人数制限があって一人しか入れないようにできてるから。」
「そうなんだ。じゃあ伝言は無理だね。」
「というわけでテレパスは作戦を練り直す必要があるってこと。次はミラーの方の説明を頼むよ。」
ケンちゃんがそう言って僕を見た。僕はうなずいて説明を始めた。
「まずはこれを見て。メイちゃんが作ったミラーの図面。」
メイちゃんのノートを広げみんなの前に置いた。入り口から入ったところは迷路になっている。そしてそれを抜けた先には四角い部屋。正しくは四角の角に四角い柱を立てたような形、メイちゃんのノートに描かれた形は太くて全部の長さが等しい十字架に見える。そしてその部屋の真ん中には僕が柱だと思った鏡の壁、その形も実は十字架の形だったらしい。だからこの部屋の図面は大きな十字架の中に小さな十字架が入った形に見える。そして図面はそこで終わっている。
「あれ~?迷路の先は?これで終わりじゃないでしょ~?」
ユウちゃんがそう言って指差した。
「左手法で行ける範囲はここまでだった。そしてこの迷路、第1エリアの中には隠し扉はないと思う。階段もメイズの時と違ってここまで隙間なく歩けているからこの迷路にはないと思う。だから僕は仕掛けがあるとしたらこの部屋、第2エリアだと思う。」
「うん。そうだね。僕もそう思う。迷路の中は考えにくいし、この第2エリアの部屋に何もないとも考えにくいから。」
僕の意見にケンちゃんが賛同してくれた。
「よーし、じゃあ二人の意見を参考にしてミラーはそれでいこう。で、今からはどうする?」
コウちゃんがみんなに聞いた。
「今度こそみんなでドア&キーでいいんじゃないかな~?」
「あたしもそれでいいと思うぞ!これだけの頭があればかなり進めるだろ?」
ユウちゃんとセイちゃんは同じ意見だったらしい。
「ケン。お前の意見は?」
ケンちゃんは腕を組んで少し考えて、そして答えた。
「今と同じメンバーで分けて僕たちはドア&キー、キュウとメイにはメイズの図面を完成させてほしい。というのが僕の意見かな。」
「おい!メイズはもう必要ないだろ?第3エリアからは右手法で進んで、第4エリアは出てすぐを右に走ってドアを抜けてつきあたりを右に走れば着くんだから。」
「う~ん。セイちゃんの言うとおりだと思う~。確認は必要だと思うけど~、それは明日以降じゃダメなのかな~?」
セイちゃんとユウちゃんはケンちゃんの反対らしい。
「だからこれは僕の意見だよ。僕はできることは先にやってしまいたいんだ。今やれば次からはメイズに入らなくてもいいんだから。」
「だから明日以降の暇な時間にやればいいんじゃないのか?みんなでやればいいんじゃないのか?違うのか?」
ケンちゃんとセイちゃんがお互い一歩も退かずに張り合っている。
「二人とも落ち着いて。僕とメイちゃんはケンちゃんの意見に賛成だから。」
それを聞いたセイちゃんは驚いた顔で僕を見た。
「え?なんでだよ!あたしが信用できないって言いたいのか?」
「違うよ。僕はどっちでもいいけど、メイちゃんは完璧主義だから。メイズから出たとき『できれば完成させたい』って言ってたし。ね?メイちゃん。」
メイちゃんは大きくうなずく。
「う~ん。まあキュウちゃんたちがそう言うなら仕方ないか~。ね~?セイちゃ~ん。」
「ああ。しょうがないなー。」
ユウちゃんとセイちゃんは納得してくれたらしい。ケンちゃんもほっとしているように見える。
「じゃあ決まりだな。ドア&キーを開けてくれ。キュウ。」
「うん。了解。」
コウちゃんにそう返事をして僕はパズルをはめた。ガチャッと音が響いた。僕たちはそれぞれの入り口の前に立った。今回は入り口が隣同士だから全員が同じ場所に揃っている。
「キュウ、メイ。そっちは頼んだぞ。もう入れるだろうし。」
「うん。わかった。」
コウちゃんが僕にそう言ってドアに入る。
「キュウ。メイのこと頼むぞ!」
「変なことしちゃダメだよ~。二人とも~。」
「へ?変なこと?しないよ。大丈夫だよ。」
セイちゃんとユウちゃんが入っていく。僕は変なことを言われたせいで変な汗をかいた。
「キュウ、これ。僕の歩いた方の図面。メイの図面が完成したら確認しておいて。」
「うん。わかった。頑張ってね。ケンちゃん。」
ケンちゃんは小さく笑いドアに入っていった。
「メイちゃん。僕たちもいこうか。」
メイちゃんはうなずいた。僕たちはドアを開けてメイズに入った。そして廊下を進む。一度クリアしているからか僕は軽い足取りだった。




