第40話 次への作戦
「さて、次はどうする?どこに挑戦する?」
ムーヴを出たところでコウちゃんがみんなに聞いた。
「他はどこも難しそうだからね。」
ケンちゃんは腕を組み考えている。
「クリアできそうなのはドア&キーなんでしょ~?みんなでそこをやればいいんじゃないですか~?」
ユウちゃんは手をあげて笑顔でそう言った。
「あたしは力が有り余ってるから何でもやるぞ!」
野球のユニフォームのまま駆けつけたセイちゃんは普段以上にテンションが高い。ちなみに野球はピッチャーで7回をパーフェクトに抑えたらしい。恐るべし…。
「メイちゃん。うまくいった?メイズの図面。」
僕は隣にいるメイちゃんに聞いた。メイちゃんは僕を見てうなずき、ノートを見せてくれた。ゴールまでの道順はほとんど完璧にわかる。
「できれば完成させたいな。ここまで作ったなら。 」
メイちゃんはそう口を動かした。メイちゃんの性格がこういうところでよくわかる。
「おーい。メイ。ちょっと聞いていいかな?」
ケンちゃんがメイちゃんを呼んだ。メイちゃんはケンちゃんの方を見た。手にはノートとペン。会話をする準備だ。
「歩きながら図面にする能力はあとどれくらいできる?例えばもう一回メイズができるとか、メイズのエリア一つならできるとか。」
メイちゃんはペンでやや大きめに字を書いてケンちゃんに見せた。
「歩きなら昨日と同じくらいは大丈夫。走ったらわからないです。」
「そっか。わかった。」
ケンちゃんは少し考えて、うなずき顔をあげた。
「よし。みんな聞いて。」
みんながケンちゃんに注目する。ケンちゃんは話し出した。
「まず現時点で一番クリアしやすいのはさっきユウちゃんも言ってたドア&キー、その次は少なくともやることがわかっているテレパス、一番厄介なのがミラー。」
「は~い。何でミラーは厄介なんですか~?」
ユウちゃんが手をあげて聞いた。
「ミラーは鏡だらけの上に、迷路なのか他に仕掛けがあるのかもわからないから。闇雲にみんなで突入しても混乱すると思う。」
「なるほど~。」
「だからまずはミラーの内部を調べることと、テレパスで試せることを試してみること。この二つをやってみて、それからドア&キーに挑戦するべきだと思う。」
「なんだ?そのテレパスで試せることって。」
セイちゃんがケンちゃんに聞いた。
「うん。まず、声がどこまで届くのか。キュウの話だと5個目の部屋のドアが閉まったとき、メイにキュウの声が聞こえなくなった。でもメイの吹いた笛の音はキュウに届いた。で、いいんだよね?」
「うん。それであってるよ。」
「だとするなら、例えば4の部屋にいたら5の部屋の人の声は聞こえるのか。3の部屋ならどうか。ついでに2と3と4の部屋のドアは開かなかったのか。その辺がわかれば対応も変わるから。」
「それがわかったくらいで対応が変えられるもんなのか?」
セイちゃんが聞いた。
「つまりドアが閉まっても二つ隣の部屋まで声が届くなら、伝言ゲームみたいな感じにできるってことだ。そうだろ?ケン。」
ケンちゃんはうなずく。
「うん。そういうこと。あとは例えばコウちゃんやセイが思いっきり声を出したらドアが閉まってても聞こえるんじゃないかと思うし、笛の音が聞こえたならユウちゃんの高い声だったらどうなるかも知りたいし。」
「なるほど。よく考えるなー。感心するよ。」
セイちゃんは腕組みしながらうなずいた。
「今言ったことをやるために、まずキュウとメイにはミラーの内部を探索してきてほしい。部屋数もわからなければ、ドアがあるかないかもわからないから。」
「うん。わかった。やってみるよ。」
僕はそう答え、隣でメイちゃんがうなずいた。
「そして残りの四人でテレパスに挑戦する。四人でいけばいろいろ試せるはずだから。」
「おう。わかった。」
「は~い。」
「よし。さっさとやろうぜ。グラウンドの端まで届くあたしの声をみせてやるから。」
みんなが返事をする中、セイちゃんの気合いはすごい。今にも爆発しそうだ。
「ここは本当に頼りにしてるから。頑張ってくれよ。セイ。」
「おう!任せとけって!」
ケンちゃんの『頼りにしてる』が嬉しかったのか、セイちゃんは満面の笑みでケンちゃんの背中をバシーンと叩いた。
「背中はもう勘弁してくれ…。」
ケンちゃんはそう呟いた。
「よし!作戦も決まったことだし、さっそくテレパスとミラーの部屋を開けるか。キュウ、頼む。」
「うん。わかった。」
コウちゃんに言われて僕はパズルをはめ込む。ガチャッという音が響く。
「じゃあ、ユウ、ケン、セイ!いくぞ!」
コウちゃんがテレパスに向かう。
「は~い。じゃあキュウちゃんとメイちゃん。また後でね~。」
ユウちゃんが僕たちに手を振ってから歩き出す。
「じゃあ、ミラーは頼むよ。」
ケンちゃんはそう言って片手をあげ、コウちゃんたちを追いかける。
「キュウ。やったな。ムーヴ!嬉しい限りだよ。後で方法を教えてくれよな。」
セイちゃんは笑顔でそう言ってみんなの方へ走っていく。そして途中で振り向いた。
「メイのこと頼んだぞー!任せたぞー!」
手を振りながらそう叫んだ。そして四人はテレパスの部屋に入っていった。
「メイちゃん。僕たちもいこうか。ミラー。」
メイちゃんは笑顔でうなずいた。僕たちはパズルの台のすぐそばにあるミラーの部屋のドアを開けた。すぐ目の前には自分が見える。メイちゃんも見える。
「よし。ミラーの部屋の探索開始!」
僕が部屋に入る。メイちゃんも入る。
「メイちゃん。離れたらダメだからね。」
僕は振り向いてメイちゃんに言った。メイちゃんは大きくうなずいて僕の服をギュッとつかむ。
テレパスのときみたいにならないようにしないと。
僕は何度も自分にそう言い聞かせた。




