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アメイズ  作者: D-magician
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第39話 迷路の行方

「順調だよな?間違えてないよな?」


 コウちゃんが不安そうな声で後ろの僕たちに聞いた。


「大丈夫だよ。みんなで確認しながら進んでるから。なあ?キュウ。」


「うん。間違いないから。どんどん進んで。まだ第2エリアだから。」


 ケンちゃんと僕は地図を見ながら答えた。


「そっか。ただやっぱり先頭は緊張するな。間違ってないか不安になるよ。」


 いつになく自信のないコウちゃんを見てみんなどこか楽しそうだ。


「しっかりしてよ~。何も聞かないで『じゃあ俺が先頭!』って言い出したのはコウちゃんなんだから~。」


 ユウちゃんは笑いながらそう言った。


「わかってるよ。ただ、こんなに不安になるとは思わなかったから。あー、セイがいたら譲りたいよ。」


「いや、セイに任せたらいきなり直感で曲がりそうだから。あいつに任せるなら僕が先頭をやったよ。なあ?キュウ。」


「うーん。間違えて行き止まりについても、いきなり壁を突き破るかもしれないね。初めての迷路で何の策もないならセイちゃんが先頭でいいけど、今はお勧めできないと思う。」


 ケンちゃんと僕の意見を聞いてみんなは笑った。


「ほら。キュウもああ言ってるから。コウちゃん頑張って。」


「わかったよ。頑張って進むよ。そのかわり間違ったらすぐに止めろよ。」


 そう言ってコウちゃんは進む。僕たちの先頭を走る。





「じゃあ作戦を説明するよ。」


 メイズの入り口のドアの先、迷路に向かう廊下を歩きながらケンちゃんが言った。


「おう。頼む。」


「は~い。お願いしま~す。」


 コウちゃんとユウちゃんの明るい声を聞き、ケンちゃんはうなずいて説明を始めた。


「まず図面を見て。二人に一枚だからコウちゃんとユウちゃん、キュウとメイで。見ればわかると思うけど、メイズは4つのエリアから成り立っていると思う。そして僕たちは昨日は第3エリアまで進んでいた。」


 ケンちゃんが配った図面はエリアごとに色で囲ってある。入ってすぐの迷路で地図では左下にある第1エリア、地図では右下にありグルグルと渦巻きみたいな道があるのが第2エリア。そしてメイちゃんの才能で明らかになった、左手方ではたどり着けない空間が真ん中にあるのが第3エリアだ。


「だからまずは第3エリアまでみんなで進もう。図面を見ながら進むから迷わないはずだよ。」


「よし!じゃあ俺が先頭!」


 コウちゃんは手をあげてそう言った。


「うん。じゃあコウちゃんを先頭に進もう。第3エリアに入ったらだけどまた右手法と左手法で進もう。目の前にある図面を見て書かれてない壁に触れて行けばたぶん真ん中の空白のエリアに入れるはずだから。」


「了解。メンバーは?」


「キュウとメイには大変かもしれないけど昨日の方法で図面を作ってほしい。もちろん僕も昨日と同じ方法で反対の図面を作れるようにしておくけど、僕とコウちゃんとユウちゃんはスピード重視でクリアを目指す。階段とかを見つけたらとりあえず何か合図を出して知らせる。そしてそのグループから先に次の第4エリアに移動する。」


「おお。いいね。」


「第4エリアに入った後は~?」


「入った順番にすぐ横の壁を左、右の順に片手法で移動。隠し扉や回転扉があったら今回はそれを通過して進む。ゴールはその先にあるはずだから。」


「よし。わかった。」


「は~い。了解で~す。」


「キュウ、今までの説明で疑問や質問、訂正はあるか?」


 ケンちゃんが僕に聞いた。


「いや。完璧。それでいいと思う。」


「そっか。ならよかった。じゃあこの方法でゴールを目指そう。」


 ケンちゃんの説明が終わったとき僕たちは廊下を抜けてドアを通り、迷路に続く階段を下りていた。


「よし。じゃあ、みんな俺についてきてくれ!」


 コウちゃんはそう言って迷路の中に入っていく。僕たちもその後ろを進んだ。





 僕たちは順調に進み、第2エリアを抜けようとしていた。。


「コウちゃん、そこを左に曲がったら止まって。そこから第3エリアだから。」


「おう。そっか。ミスなしでここまで来れたか。よかったー。」


 コウちゃんは左に曲がって止まった。


「さて、どこの壁でスタートする?」


 コウちゃんがケンちゃんに聞いた。


「そうだね。これをスタートにして進もう。」


 ケンちゃんは目の前の壁に手を触れた。


「じゃあ俺たちは右手法、キュウたちは左手法な。階段とか見つけたら大声で叫ぶから。」


 コウちゃんが僕にそう言った。


「うん。わかった。こっちが先だったらメイちゃんに笛を吹いてもらうよ。」


 コウちゃんはうなずいた。


「よし!じゃあまた次のエリアで!」


「じゃ~ね~。」


 コウちゃんたちはそう言って右手で壁を触り進んでいく。


「メイちゃん。僕たちもいこうか。」


 メイちゃんは昨日と同じように僕の服をつかんだ。そしてうなずく。僕は進む……前にもう一度メイちゃんを見た。突然止まった僕にメイちゃんは不思議そうな顔をした。


「メイちゃん。頑張ろうね。終わったらまた話そうね。」


 メイちゃんは笑顔でもう一度大きくうなずいた。僕は前を向く。


「メイちゃん。今からは中断しないから。お願いね。じゃあ、いきます。」


 僕は歩き出す。僕に引っ張られメイちゃんも歩き出した。昨日よりも早く。昨日はセイちゃんがいたから曲がる方向も見てればわかったけど、今日は僕が曲がるから昨日よりも早めに言っておかないと。


「メイちゃん少し先で行き止まりだから右側に回るから。」


「左に曲がるよ。」


「すぐに行き止まりだから回るよ。」


 僕は早足で歩きつつ、目の前と左手にさわる壁の状況をできる限り細かく伝えていく。途中で直線が長いときに後ろをちらっと見た。そこにはメイちゃんが集中モードで線をひいていた。僕は静かに前を向き、スピードを一定に保ちながら進んだ。


「キュウちゃ~ん。階段見つけた~。先に行ってま~す。」


 ユウちゃんの明るい声が響いた。後ろのメイちゃんの図面では僕たちは反時計回りに右下から左上まで歩いたみたい。向こうの方が階段に近かった。


「はーい。わかったー。」


 僕はできる限り大きな声でそう言った。


「メイちゃん。少しスピードあげるね。」


 僕はそう言ってまた少し速く歩く。メイちゃんは普通についてくる。行き止まりの回数が増えた気がして後ろを見ると、メイちゃんの図面の壁が内側に入っていくのがわかった。そして図面が同じところをなぞりぐるっと回った。すると目の前に階段が現れた。


「メイちゃん。止まるよ。階段があるから。」


 僕は少しずつ速度を落とし、そして止まった。階段は先が真っ暗に見える。


「メイちゃん、大丈夫?」


 僕が聞くとメイちゃんはうなずく。


「じゃあ、いくよ。」


 僕はゆっくり下りていく。階段をだいたい普通の建物一階分くらい下りるとその後は廊下が続いていた。薄暗い…。こちら側と向こう側に見える光以外には何も明かりがない。僕たちは向こう側に見える光に向かって進んだ。


「メイちゃん。何かあったら引っ張ってね。」


 歩きながら僕がそう言うと突然背中に何かが当たった。後ろを見るとメイちゃんの頭がそこにある。


「大丈夫?」


 僕が聞くとメイちゃんは頭をつけたままうなずいた。たぶん暗いのが怖いみたい。あと半分くらい廊下が続く。と、僕はある方法を思い付いた。メイちゃんが怖くなくなる方法を。


「メイちゃん。もしできるなら目をつぶってみて。そしたら怖くないはずだから。次の階段についたらまた言うから。それでどうかな?」


 メイちゃんは頭をつけたままうなずいた。


「じゃあ進むね。」


 僕は光に向かって歩いた。背中にはメイちゃんの体温を感じる。だから僕は怖くない。そして無事に暗い廊下の先に階段が見えた。


「メイちゃん、もう少しで階段だから。もう目を開けても大丈夫だよ。」


 背中に当たっていたメイちゃんの頭の感触がなくなった。階段の前で後ろを見るとメイちゃんが僕を見て口を動かす。


「ありがとう。」


「どういたしまして。頑張ろう。」


 メイちゃんはうなずく。そして僕たちは階段を上った。階段を上った先は正面以外は壁で囲われていた。通路は左右と奥にも見える。みんながどっちに行ったのか考える僕にメイちゃんが肩をたたく。


「どうしたの?」


 メイちゃんは指差す先の壁の上には赤いペンで丸が書いてある。反対の壁には書いていない。


「そっか。じゃあ、こっちから始めてみよう。」


 メイちゃんはうなずく。僕は壁に右手をつける。メイちゃんは僕の後ろにくっついた。


「いきます。」


 僕は歩き始めた。まっすぐ進み右に曲がり、また右に曲がると壁があった。壁に少し隙間が見える。


「メイちゃん。回転ドアみたいな壁を押してみるから。」


 僕はスピードを落として手で押してみた。壁は奥に開いた。


「メイちゃん。そのまま進むよ。」


 僕は前進した。壁はゆっくりともとの位置に戻った。開いたままにはなってくれないらしい。


「メイちゃん、左に曲がるよ。あとさっきみたいに壁が動きそうなら『ドア!』って言うから。」


 後ろのメイちゃんがうなずく。僕は左に曲がってまっすぐ進み、突き当たりを左に…。するとまた前方の壁の一部に違和感が。今度は下に隙間が見える。


「メイちゃん。ドア!右に曲がりながら通過します。」


 僕は左手で壁を押す。壁は回転するように動いた。そのまま右手をつけたまま曲がる。すると右手をつけた壁はすぐ右にに曲がった。さっきいた通路の壁の反対側を進むらしい。


「メイちゃん、右に曲がるよ。」


 僕は右に曲がる。メイちゃんはノートに集中しながらも僕にぴったりついてきている。反射神経なのか何なのか…。とにかくすごい。


「お~い。キュウちゃ~ん。」


 見ると僕たちの前からみんなが歩いてきた。


「メイちゃん。みんなが来たから止まるよ。」


 僕はゆっくり減速してそして止まった。


「目の前からキュウたちが来たってことは壁がゴールにつながってなかったってことか?ケン。」


「うん。そうなるね。さてと、どうするか。」


 ケンちゃんが少し考えた。


「メイのノートを見せて。」


 ケンちゃんはメイちゃんのノートをのぞく。


「下半分と右側が行ってないね。あとはこの道沿いか。」


 ケンちゃんはまた少し考えてタイマーを見た。残り時間はあと4分だ。


「よし。一度階段の前に戻ろう。そして階段の前の壁から左右にわかれる。」


「おう。わかった。キュウ。戻れ。」


「うん。わかった。」


 僕たちは来た道を戻る。といってもメイちゃんの作りかけの図面を見ると二番目に通ったドアの直線に階段があることがわかったから時間は短縮できた。階段の前に立ち目の前の壁にさわる。僕は右、コウちゃんは左。


「たぶんどちらかはゴールできるはず。だから少し急いで進もう。」


 ケンちゃんがそう言うとみんながうなずいた。


「じゃあ、次はゴールで会おう。いくぞ。」


 コウちゃんたちが出発した。


「メイちゃん。さっきより急ぐから。お願いね。」


 メイちゃんがうなずくのを見て僕も出発。突き当たりを左に曲がり、まっすぐ進んで左に曲がる。急ぎながら進んでいくけど行き止まりが多く時間がかかる。でも行き止まりの先の壁が動かないとも限らないから、ちゃんと奥まで進まないと。また、目の前にゴールの階段が見えても壁があり先に進めないこともある。精神的にかなり辛い。タイマーがあと1分を切った。


「メイちゃん!スピードあげるから!」


 僕は昨日のラストスパートと同じくらいの速さで走る。僕たちかコウちゃんたちのどちらかがゴールできないと水浸しの可能性もある。僕はかなり焦っていた。


「急がなきゃ。急がなきゃ。」


 僕はそう呟きながら走る。メイちゃんに曲がる方向を示しながら。


「あと20秒。」


 目の前に回転ドアの仕掛けがある壁が見えた。


「メイちゃん。ドア!突っ込むから。」


 僕たちはそれを押して通過する。


「あと10秒。」


 ゴールの前の壁がなかなかなくならない。僕が諦めかけたそのとき!


「おーい。ゴールに着いたけどボタン押していいかー?」


 誰かがそう叫んだ。


「早く押してくれ!」


 この声はコウちゃんだ。じゃあさっきのは…。


 カチッ。


 タイマーが止まった。残り5秒。クリアした。


「メイちゃん。スピード落とすよ。」


 僕はそう言って少しゆっくり走った。


「おーい。こっちだぞー。」


 僕たちの目の前で回転ドアを押さえて待っている人影が。


「あー、え?でも、何で?」


 僕はそう言いながら近づく。そこに立っていたのはセイちゃんだった。


「お疲れー。いやー、あぶなかったよ。」


 セイちゃんはそう言って笑った。


「あ~!やっぱりセイちゃんだ~!」


 僕たちの後ろからコウちゃんたちが現れた。向こうの壁もここにつながってたみたいだ。


「セイ。助かったよ。」


 コウちゃんはセイちゃんにそう言った。


「おう。とりあえずみんなゴールに行こう。橋みたいなのが架かっててスタート地点まで帰れるから。」


 セイちゃんはそう言って進む。みんながセイちゃんについていく。ゴールの階段を上ると迷路の上に橋が架かっていた。


「よし。とにかくセイのおかげでメイズクリアだ!」



「やった~!」


 コウちゃんとユウちゃんが嬉しそうに橋を渡る。僕とケンちゃんは同じ疑問をセイちゃんにぶつけた。


「セイ。いったいどうやったらここに着けたんだ?」


 ケンちゃんが聞くとセイちゃんは笑って答えた。


「階段の部屋まではメイのノートのコピーを見て進んで、あとは右手を壁につけて走った。階段を上ったあとは時間がなかったからとにかくまっすぐ右側に走ってみて、変な壁を突き抜けて、突き当たりを右に曲がって。あとは壁沿いを走ったら着いたぞ。まあ、勘だな。ははは。」


 笑うセイちゃんを見て微妙な顔をするケンちゃん。


「セイちゃんってすごいね。」


 僕がメイちゃんに小さな声で言うとメイちゃんはうなずいた。


「あれを才能っていうんだよ。」


 メイちゃんはそう口を動かしてから笑顔で僕を見た。


「うん。あれは才能だね。でも、メイちゃんもだよ。お疲れさま。」


 メイちゃんは嬉しそうにうなずいた。メイちゃんの手に握られたノートにはメイズの図面が昨日と同じように正確に描かれていた。


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