第3話 薄暗い廊下の先
ここが目的地。アメイズ…。
何か不気味…。何か異質…。そもそも入っていいの?入って大丈夫なの?危険じゃないの?
僕の中で色々な不安が駆け巡る。
コウちゃんは僕を乗せたまま自転車を建物の右側に走らせる。そして裏口っぽいドアのそばに停めた。セイちゃんも隣に停めた。よく見ると他に二台の自転車が見える。たぶん先に行った二人のだろう。
「ここって何なの?ホテル?」
「質問はあと。時間がないから。もう53分。あと7分しかない。」
コウちゃんが入り口のドアを開けて中に入っていく。セイちゃんとメイちゃんも後に続く。僕もみんなに置いていかれないようについていく。
裏口からはまっすぐの廊下が一本。左右に窓はなく、蛍光灯がところどころにあるくらい。だからかなり薄暗い。お化け屋敷を明るくしたような雰囲気だと思う。
正直かなり不安だし怖い。絶対一人では入りたくない。
怖がる僕を気にすることなく三人は早足で進む。たぶん何度も来ているから慣れているんだろう。
廊下を少し歩いたら急に広い場所に出た。たぶんこの建物のフロントロビーみたいな場所だと思う。
左には大きな扉、たぶん正面の入り口だと思う。木の板が打ち付けられていて開きそうにない。 ギィッ、ギィッと歩く度に音が鳴る。今まで普通の廊下だったのにここだけ木の床に絨毯が敷いてあるみたいだ。
「ドアはもう開くけど、あと5分だよ。無理じゃない?」
「サンキュー。さすがケン。仕事早いな。まあ、とりあえずやってもらうだけでもいい。俺たちは誰もできなかったんだし。」
右を見ると先に行った二人も合流していた。眼鏡をかけた少年はケンというらしい。その子とコウちゃんが話している。よくわからないけど五時で時間切れらしい。
「おーい。こっちに来てくれ。」
コウちゃんに呼ばれ僕は走って駆け寄った。
コウちゃんたちのそばの机にはパソコンがあり、ケンという少年がキーボードをカタカタといじっている。それを僕も含めた5人が見ている。
「よし、クリア。」
ケンという少年がキーボードを叩くと奥の方でガチャッと鍵の開くような音が聞こえた。
音のした方をよく見るとフロアの奥の方へ下る階段、その先には部屋が3つ見える。そしてその中の1つ部屋には電気がついているように見える。
「さすがケンちゃん!すご~い!」
「ユウちゃん、毎回驚かなくてもいいって。」
髪の長いユウちゃんと呼ばれる女の子の声が響き、それにケンちゃんが答えた。僕は今、やっと全員のあだ名と顔が一致した。
「よし、急ごう。ついてきてくれ。」
「うん。わかった。」
コウちゃんと僕が歩き出す。すると僕の横にはメイちゃんがいた。
「私も行く!」
ノートに書いた大きな文字を僕たちに見せた。
「よし。一緒に行こう。みんなはどうする?」
コウちゃんが歩きながら振り返り他の三人に言った。
「今日はいいや。もし解けたら呼んで。」
ケンちゃんが答える。
「私も今日はいいや~。」
「あたしも疲れたから。任したー。」
ユウちゃんとセイちゃんも答える。
「了解。じゃあ行くか。時間ないし。」
コウちゃんはそう答えてから階段を下り始めた。僕とメイちゃんも続く。
「結果だしてこいよー!え、え~っと名前わからない少年!」
セイちゃんが叫んだ。
「いい結果期待してますよ~。」 ユウちゃんの声も響く。
期待してもらえていることがいれしい。頑張ってみよう。何ができるかわからないけど…。頑張ろう。
階段を降りながらそんなことを考えていると、一番下にたどり着いた。階段はあまり長くなかったみたいだ。
そして電気の付いている扉の前に立った。
僕の緊張が最大になる。手が震えている。心臓がかなりはやくなった。
何があるんだろう?僕は役に立てるのだろうか?失敗したら…。
ガチャッ。ギィ―。
僕の不安をよそにコウちゃんは扉を開ける。そして僕を見て言った。
「緊張するな。今まで5人でやって解けなかったんだから。」
「うん。」 僕は答えた。
すると僕の袖が引っ張られた。左手で袖を引っ張りながらメイちゃんは右手のノートを僕に見せた。
「大丈夫!頑張って!」
「うん。ありがとう。」
勇気をもらった気がした。
コウちゃんが部屋に入る。僕とメイちゃんもあとに続く。
薄暗い廊下から明るい部屋に入るせいか、違う世界へ続いているような感じさえした。
大丈夫…。自分に言い聞かせる。メイちゃんのノートの文字が不安な僕の心を支えている気がした。
「大丈夫!頑張って!」
見送ったあとの3人が話した。
「行っちゃったね。解けるかな~?あの子。」
「さあ、どうかな?あたしはできれば解けてほしいけど。」「5分じゃ厳しいと思うよ。最初の鍵でいつも3分くらいかかってるし。」
「まあ、お手並み拝見ってとこか!」
「そうだね~。」