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アメイズ  作者: D-magician
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第37話 レベルアップ!

「よし。戻るぞ。」


「うん。いこう。」


 僕たちは階段を上る。コウちゃんはムーブの結果に上機嫌。僕とメイちゃんは無事にクリアできたことにホッとひと安心。


「なあ、キュウ。さっきの攻略法とかその前の計算問題とかは頑張って覚えればできるようになるのか?」


 ふいにコウちゃんが僕に聞いた。僕は答える。


「うん。僕だって最初からできたわけじゃないから。手品とかクイズの本や推理小説をいろいろ読んでタネとかトリックが頭に入ってるだけ。だから僕が読んだのと同じ本を読めば、僕ができたことはできるはずだよ。」


「そっか。じゃあ、ケンにでも貸してやってほしいな。じゃないとまたキュウがいなかったら先に進めなくなるから。」


 僕の中に『キュウがいなかったら』という言葉が響く。『いないと困る』と言ってもらえたうれしさと、『向こうに戻らないといけない』という現実…。僕はその感情を全部まとめて心の奥に押し込んで、コウちゃんとの会話にもどった。


「おばあちゃんの家にいろいろ持ってきてるから貸せるよ。マジックの本とか推理小説、謎解きマンガもあるから。ケンちゃんに貸して、コウちゃんにも貸せるくらいあるよ。」


「そうか。じゃあこのメンバーで根こそぎ借りてみんなでまわしながら読むか。」


「うん。最悪返すのはおばあちゃんにでいいから。僕は全部読んだし。」


 僕の肩にトントンという感触が。横を見るとメイちゃんが口を動かす。


「私も貸してね。」


「うん。もちろんいいよ。メイちゃんはおばあちゃんに覚えられてるから貸しやすいし。」


 僕を見てメイちゃんがうなずいた。


「まあ、なんにしろまずはケンに貸してやってくれ。ケンが一番勉強ができるし向いてるから。」


「ケンちゃんにパズルや手品の知識がついたら完璧だよね。」


 コウちゃんはうなずく。


「ああ。ケンにはそっちの知識も入れてほしいんだよ。」


「セイちゃんとケンちゃんがコウちゃんの右腕と左腕って感じだよね。見てるとよくわかるよ。」


「だろ?ただ俺の腕でいいのかってときどき思うよ。セイの身体能力は俺より上だし、ケンの知識は俺とは比べ物にならないからなー。」


 コウちゃんのその言葉を聞いて、僕は素直に尊敬できた。確かにコウちゃんの言ってることはそのとおりなのかもしれない。ただ運動も勉強も含めて全てを合計した数値はコウちゃんがトップだと思う。セイちゃんもケンちゃんも弱点があるけど、コウちゃんにはないから。それなのにコウちゃんは二人の弱点を見ないで自分よりできることの方を評価する。そんなコウちゃんだからこそケンちゃんもセイちゃんもついていくんだと思う。もちろん僕やメイちゃんやユウちゃんも。コウちゃんは僕の中にあるもっとも理想的なリーダーだと思う。


「キュウ。そんなわけだからケンにいろいろ教えてやってくれ。で、その間はセイに右腕、キュウには左腕をやってもらうかな。」


 コウちゃんがムーヴのドアを開けた。


「おう。ケン。どうだ?他の部屋は。」


 僕たちが部屋を出るとケンちゃんがいた。


「他の二つの部屋が今終わったところだよ。」


「さすがだな。こっちもクリアしたからこれで次のフロアに行けるな。」


 階段を見ると上からユウちゃんが下りてきた。


「みんな、お疲れさま~。ムーヴのクリアお見事で~す。」


「お見事はユウちゃんだよ。ほとんど一人でテクニックの部屋をクリアしたんだから。」


 ケンちゃんがユウちゃんを見て笑った。ただ笑顔がさっきより暗い気がする。


「『ほとんど一人でクリアした』ってどういう意味なんだ?」


「そのままの意味だよ。犬のエサと最後はユウちゃん、ボール運びも両手を使って一度に10個運んだんだから。僕はボールを5個運んで終わりだったよ。」


「ユウ!やるな!」


「いや~、昨日キュウちゃんが最後に見せた技があまりにすごかったからさ~。家で練習したんだよね~。で、やってみたんだ~。」


 ユウちゃんが照れたように言った。


「じゃあ、あの二つの技法できたの?昨日の今日で?すごいよ。ユウちゃん。僕は一つの技だけでも三日くらいかかったのに。」


 僕が驚いているとユウちゃんが僕の肩に手を置いた。


「ふっふっふ~。これでもテクニックの部屋担当なんだよ~。キュウちゃんに遅れをとるわけにはいかないのだよ~。」


「失礼しました~。」


 僕はユウちゃんにそう言って笑った。


「ちなみにパズルの部屋はケンちゃんが一人で解いたんだよ~。『僕一人でいいよ。』ってかっこよく入っていったんだから~。」


 ユウちゃんはケンちゃんの真似をして言った。ケンちゃんは恥ずかしそうだ。


「まあね。キュウが解いたのを横で見てたから。一人で十分だと思ったんだ。」


「ケンもさすがだな。」


 コウちゃんがケンちゃんの肩をたたく。ケンちゃんにいつもの笑顔が戻った気がした。


「よし、じゃあ次のフロアにいこう!」


 コウちゃんが次のフロアへの廊下に進む。みんながついていく。この廊下がムーヴクリアの証明。あとから来るセイちゃんも部屋の入り口のライトとこの廊下を見ればわかるはず。


「キュウちゃ~ん。さっきのと攻略法の説明お願いしま~す。」


 ユウちゃんが歩く僕の目の前に立ちふさがった。


「あ、うん。いいよ。ただムーヴは見た方が早いと思うから、次のフロアで待ち時間ができたときにするよ。」


「そうだな。その方がいいな。で?さっきの計算問題は?」


 コウちゃんが先を進みながら聞いた。


「問2の問題は全く同じ手品があるんだ。カード当ての手品が。」


 僕はそう言ってみんなを見回す。


「ケンちゃん。一枚トランプのマークと数字を思い浮かべて。」


「ああ。えーと。うん。思い浮かべた。」


「さっきの問題と同じだけど、その数字に2をかけて3を足して5をかけて。」


「うん。その出た答えにスペードなら1、ハートなら2、クラブなら3、ダイヤなら4を足すんだろ?やったよ。」


「さすがだね。やっぱり覚えてたんだ。問題。」


「ケンちゃ~ん。さすがだね~。」


 ユウちゃんが拍手する。


「話が進まないからいいって。キュウ。僕の答えは『48』だよ。僕の選んだトランプは?」


「クラブの3だね。」


「正解!で?それを答えられた方法は?なんかさっきは『15』をどうとか言ってたけど。」


 ケンちゃんはすごい。公式だけじゃなく、僕が呟いた単語も全て頭に入れてる…。


「さすが!じゃあ、ケンちゃん。それを答えから引いてみて。」


「は~い。『33』で~す。」


「ユウちゃんので合ってるよ。この『33』が一体…。え…?そうなのか?そうなるのか?」


「すごいね。ケンちゃん。『33』からでも思い付かないよ。普通の人は。そう。ケンちゃんの『そうなる』で正解だよ。他ので試してみればわかるよ。」


 ケンちゃんは頭の中でいろいろと計算している。そのケンちゃんの背中をいきなりバーン!とユウちゃんがたたいた。


「いったいなー!何するんだよ!いきなり」


「一人で悩んではいけませ~ん。わかったことはみんなに説明しましょ~う。」


「それはたたかなくてもよかったでしょ…。わかったよ。ユウちゃん、何かカードを思い浮かべてみて。」


「は~い。ハートの7がいいで~す。」


「…。答え言ってどうするの…。聞く相手間違えた…。メイ。一枚思い浮かべてノートに書いて。」


 メイちゃんはうなずくとノートに書いた。


「その数字に2をかけて3を足して5をかけて。その答えに…、覚えてるよね?メイも。」


 メイちゃんはうなずき計算をノートに書いた。でも僕はメイちゃんなら暗算で解けると思う。たぶんそれをしないのは数式をみんなに見せればみんながすぐわかるからだと思う。メイちゃんは計算を終わらせて次のページに大きく『27』と書いた。


「『27』だね。じゃあ、答えはハートのエース。できれば僕はクイーンとかで試したかったよ。」


 メイちゃんは前のページをみんなに見せる。そこには確かにハートのエースが書いてある。


「答えの数字から『15』を引いた答えの一桁目がマーク、二桁目が数字を表してるんだよ。さっきのは『27』だから『15』を引いて答えは『12』。だからマークは一桁目が『2』だからハート、数字は『1』だからエースになるというわけ。こんな数式もあるんだね。」


 ケンちゃんはそう言って腕を組んだ。そのケンちゃんをコウちゃんがグイっと引っ張った。


「考えるのはいいけど変なところに進むのはやめてくれ。まあセイと違って壁は突き破らないと思うけどな。」


 ケンちゃんは考えながら歩いたせいで階段を通りすぎて壁に向かっていた。


「あ、ごめん。コウちゃん。」


 ケンちゃんは恥ずかしそうにそう言った。


「ほ~。そんな式になるんだ~。じゃあ試しに他のもやらせて~。ハートのクイーンだったらどうなるの~?」


 ユウちゃんがメイちゃんのノートに計算式を書き始めた。すると、


「137になるよ~。」


 ケンちゃんがユウちゃんの真似をしてそう言った。みんな一瞬固まったけどコウちゃんが笑い始めるとみんな笑った。


「あ~、ホントだ~。ケンちゃん計算速いね~。すご~い。」


 そう言ったユウちゃんを見てコウちゃんはさらに笑いながら言った。


「ユウ。ケンは逆算したんだよ。答えがハートのクイーンなら最後の数字は『122』。それに引くはずの『15』を足すと『137』になるだろ?」


「そっか~。なんだ~。何かくやしいな~。」


 ユウちゃんが笑った。


「さて、キュウの数式はまた次に時間を用意するとして…。」


 コウちゃんがそう言って前を見た。螺旋階段が終わり次のフロアに着いた。


「頼むぞ!キュウ。」


「うん。」


 僕は先頭でパズルに向かった。


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