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アメイズ  作者: D-magician
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第24話 ケンの発想

「ふぅー。疲れた。」


「そうだね~。でも進んだよね~。二階もチャレンジできたしさ~。」


「うん。今日は大きく前進できたね。」


「そうだよ。二階に上がれたし、全部の部屋の中も見れたし。あたしは上出来だと思うぞ。」


 アメイズを出たところでみんなが話している。もちろん僕とメイちゃんもその輪に加わっていた。夏だから5時でも明るい。


「まあ、とりあえず今日のMVPはキュウだな。今日のキュウの活躍は大きかった。」


 突然のコウちゃんの言葉に僕は驚いて言葉が出なかった。でも僕以外のみんなはうなずいている。


「そりゃそうだ。キュウがいなかったら二階に上がれなかったし、二階の部屋だって入れたかどうか。」


「そうだね~。特に二階のパズルを一人で片付けちゃったのは大きかったね~。お手柄、お手柄~!」


 セイちゃんとユウちゃんからも高評価をいただいた。


「そうだね。二階のパズルは圧巻だったね。僕が挑戦する暇さえなかったから。できれば一つはやってみたかった。」


「そうだったの?ごめんね。ケンちゃん。」


 ケンちゃんに僕は素直に謝った。確かに自分勝手だった気もする…。


「なに謝ってんだよ。あんたが解いたから全部の部屋に入れたんだから。今日はあんたが全部解いて正解だった。そうだろ?ケン。」


「うん。そうだね。謝らせて悪かったよ。キュウ。ごめん。」


「え、そんな。」


 ケンちゃんに謝られて僕は戸惑っていた。


「そういえば、さっきの続きだよ。攻略法ダメだった理由と次の作戦会議だ。なんかやってただろ?ケンもキュウも。あとメイも。」


 セイちゃんがいきなりメイズの話に戻した。


「お?なんだ。ケンだけじゃなくキュウもメイもなんかやってたのか。すごいなお前ら。」


「へ~。すご~い。じゃあ発表して~。」


 コウちゃんとユウちゃんが目を輝かせて僕たち三人を見ている。


「じゃあ、やろうか。誰からやる?」


「その前に左手法でダメだった理由を話し合った方がいいよ。」


 それを聞いてケンちゃんがうなずいた。


「そうだね。じゃあまず左手法がダメだった理由を考えよう。」


 ケンちゃんが説明を始めた。


「左手法を使ったコウちゃんと右手法を使ったセイがゴールにたどり着かずに合流した。それが意味するものは?ユウちゃんどうぞ!」


 ケンちゃんはいきなりユウちゃんに解答を求めた。学校の先生がいきなり生徒に答えさせる感じに似ている。


「え~?急に聞かれてもわかんないよ~。コウちゃんにパ~ス。」


「あ、え?つまりゴールがなかったんだろ?待てよ?ゴールはあったな。でも、えーと…、」


「時間がかかりそうだから、キュウ。正解をどうぞ!」


「つまりゴールがある迷路と僕たちが歩いた迷路は壁で仕切られた別の迷路だったってこと。だからちゃんと壁に沿って歩いたのに一周しちゃったんだよ。」


「正解!さすがだ。」


 ケンちゃんがパチパチと拍手をした。みんなもつられて拍手した。


「これって拍手必要?」


 僕は照れながらそう言った。


「じゃあ話を戻そう。壁で仕切られていて隣の部屋に行けない。僕はたぶん隣に進むための道があると思う。」


「それはいったいなんだ?」


 セイちゃんがケンちゃんに聞いた。


「セイ。目の前に壁がある。隣の部屋にいきたい。上はネットで仕切られていて壁を越えられない。さて、セイはどうやって隣にいく?」


「壁をぶっ壊す。」


 それを聞いた瞬間、大爆笑が起こった。僕もセイちゃんならそう答える気がしてたけど、さすがに即答だとは思わなかった。おなかが痛い…。


「なんでだよ。正しいだろ?」


「…。セイ、聞いた僕が悪かった…。でもせめて他の道を探してから壊す選択をとってくれ。」


 ケンちゃんは苦笑いでそう言って、その後大きく深呼吸して話を続けた。


「たぶん壁の向こうへ行ける隠し通路みたいなものがあると思う。」


「隠し通路?そんなのがあるのか?」


 セイちゃんが興奮した様子でケンちゃんに聞いた。


「隠し通路って言ったけど、そんなすごいものじゃないかもしれない。左手法で攻略できない迷路。そこに必要な仕掛けはー。」


「なんなんだ?仕掛けって!」


「興味ある~!」


 セイちゃんとユウちゃんの興奮はもはや襲いかかりそうなほどだ。


「回転ドア!僕はそれかあると思う。」


「お~。回転ドアか~。なるほど~。」


「そっか。その手があったか!」


 ユウちゃんとコウちゃんがイメージができたらしく納得してうなずいていた。それに対してセイちゃんは…、


「回転ドア?ぐるっとまわってみたけどドアもドアノブも見なかったぞ?」


「セイ…。隠し通路にドアノブつけてどうするんだよ。隠せてないだろ…。はぁ~。」


 ケンちゃんは呆れ過ぎて声が小さくなっていた。


「じゃあどこにあったんだよ?そのドア!」


 セイちゃんはわからないからか、余計に興奮して聞いた。


「いくつか候補はあるけど、一番有力なのは行き止まりだな。」


「行き止まりのどこにドアがあったんだよ!」


「だから行き止まりの壁自体がドアだったかもしれないって言ってるんだよ!」


「え?壁がドア?」


 セイちゃんの声が少し小さくなった。


「壁を押すと壁がどこかを支点にして回転する。そんな回転ドアみたいな壁があればわざわざ壊さなくても反対側にいけるだろ?」


 セイちゃんの頭の中にもイメージができたらしい。


「あれか?忍者屋敷にあるやつか?壁がくるってまわるやつ。裏側に隠れたりするやつ。」


「なんでそこまで詳しいやつがすぐに気づけないんだよ。」


「実物見たことないからな。イメージが浮かばなかったんだよ。あたしは。」


 ケンちゃんが腕を組んで言った。


「まあ、たぶんそんな仕掛けがどこかにあるはず。だから次回は行き止まりの壁を調べてみればいいとー、」


「いや、ちょっと待ってくれ。」


 ケンちゃんの話の途中でセイちゃんが割り込んだ。


「あたしとコウが、少なくともあたしは壁をけっこう押しながら歩いたぞ。そんなドアがあるなら気づいたと思うぞ?」


 そう言われたケンちゃんが反論した。


「全部の壁を念入りに押したわけじゃないだろ?それに回転の向きでたまたまセイが押した側に回らないってことも考えられるし。」


「じゃあ、俺が押したか?セイと逆回りだから。あったのかな?気づかなかったぞ。」


「ほら。アタシとコウが二人ともそれなりの力で壁をさわりながら移動したんだから、もしそんなのがあったならどちらかが気づくんじゃないのか?」


 コウちゃんが話に入ってきてセイちゃんに加勢した。ケンちゃんは少し焦りながら言った。


「でも、とりあえずそれ以外に方法がないんだから。きっとどこかにあったんだって。」


「そうなのかー?」


 何か雰囲気が悪くなり、。みんな一瞬静まり返った。しかしそれをこの人は当然のようにぶち壊した。


「は~い。みんな~。いったん落ち着きましょ~。ケンちゃんの発想も二人の意見もどちらも正しいかどうかわからないんだから~。」


「じゃあ、アンタの意見はどうなんだよ?ユウ。ケンが正しいのか、あたしたちが正しいのか?どっちだと思う?」


 セイちゃんに言われてユウちゃんは腕を組んで考えているようなそぶりを見せ、そして答えた。


「それは、私にはわからな~い。」


「なんだ?それ。」


 コウちゃんがそう言って吹き出した。みんなもつられて笑った。場の空気を一瞬で変えるのはある意味でユウちゃんの能力だと思う。そしてみんなの笑いが収まったころに言った。


「ところで珍しく話に参加しないキュウちゃんの考えを聞きたいな~。何考えてるの~?」


 ユウちゃんがそう言って僕を見た。


「あっ、ほんとだ。いつもならケンの説明をアタシがわかるように何か付け足すのに。どうした?キュウ。」


 みんなが僕に注目した。


「うん。ケンちゃんの回転ドアの発想はすごいと思う。ただ、たぶんその仕掛けは最後の迷路にある気がする。」


「え?じゃあ、キュウ。君の意見は回転ドアじゃなかったのか?」


「うん。違った。だからケンちゃんの考えを聞いてその可能性を考えてたんだ。で、僕の考えではたぶん回転ドアはまだ出てきてないと思う。」


 ケンちゃんは驚いた声で僕に聞いた?


「じゃあ、壁の向こうへの移動方法は?まさか、ぶっ壊すわけじゃないだろ?」


「うん。それはないと思う。もっと簡単な方法でわかりやすい通路があると思う。」


 ケンちゃんはさらに興奮して言った。


「通路?なかっただろ?どこにも。キュウは理解してるだろうけど左手法と右手法が迷路の先で遭遇したってことは迷路の中を全部通ったってことだ。つまり通路なんてあるはずない。違うか?」


 僕はケンちゃんのあまりの興奮した姿に言葉を出せずに後ずさった。するとコウちゃんが僕とケンちゃんの間に割って入った。


「ケン。少し落ち着けよ。お前らしくないぞ。まずはキュウの意見を全部聞いてから。だろ?」


「わ、わかったよ。」


 ケンちゃんが大きく息をはいた。少し落ち着いたみたいだ。


「さて、キュウ。説明してくれ。移動方法、隠し通路について。」


 コウちゃんが僕を見て言った。そして僕が怯えたような目をしているのを見てさらに続けた。


「大丈夫だ。とりあえず説明してくれ。あと自分の意見があるんだから自信を持て。間違ってても誰も、少なくともケン以外は文句を言えない。自分の意見がないやつには文句を言う資格はないんだから。」


「うん。じゃあ。」


 僕はうなずいた。そして思った。


 ここのみんなは優しい。強者が弱者の意見を聞いてくれるし弱者の意見を拾い上げてくれる。こんな人たちもいるんだ。

 もっと、もっと早く出会いたかった。

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