第15話 ドアとパズル
目の前の台にはパズルが入るくぼみと、箱の中にパズルがたくさん。くぼみは縦に3つ×横に4つで合計は12。くぼみは縦に仕切りで4つに分けられているからたぶんそれが4つのドアを開ける組み合わせになっているんだと思う。これを解くが僕の仕事。僕に適した仕事。
「メイちゃん。まずはくぼみとパズルを合わせよう。」
僕がそう言うとメイちゃんはうなずいた。そして二人で箱からパズルを取り出し並べていく。
形で簡単にわかる物がほとんどだったけど、そうじゃない物も何個かある。同じようなカケラが3個あり組み立てて1個にする物。三角の枠がが3つ繋がっていて、たぶん1つの形に組み合わせる物。パズルが解けた状態で入っていて、たぶん繋げてくぼみにいれないといけない物もあった。そして何よりルービックキューブ。これは入れる向きが決まっているらしくくぼみに色が塗られている。
メイちゃんと二人で何となくパズルとくぼみを一致させた。
「メイちゃん。次は端から一組ずつ僕に渡して。で、僕が返すときに○か×か言うからそれを分かるようにして元に戻して。大丈夫?」
メイちゃんはうなずいてリュックから鉛筆を取り出した。ボールペンでは書けないかもしれないしマジックで書いたら消せないから鉛筆を選んだんだと思う。メイちゃんに助手を頼んでよかった。
「じゃあ、メイちゃんお願い。」
メイちゃんはうなずいてパズルを僕に渡す。僕は受け取り回しながら見る。はずす場所はどこか、簡単にはずれるかどうか。そして簡単に解けそうなら○、時間がかかりそうなら×とメイちゃんに伝え渡す。メイちゃんはそれに印をつけて元の位置に戻し次のパズルを僕に渡す。それを繰り返した。
「メイちゃん、これ○で。」
僕とメイちゃんのリズムが合ってきた気がする。右手のパズルを渡すと同時に左手には次のパズルが渡されている。そのおかげで全部のパズルを確認するのにそんなに時間がかからなかった。
「コウちゃん。キュウはパズルの部屋でもやってたの?あれ。」
「ああ、やってたぞ。あれをやってどれが簡単かとか、似たような物をやったことがあるかとかを判断するらしい。」
「そうなんだ。結構時間かかってるから…。」
「俺も昨日はそう思ったし言ったよ。ただその後がすごかったから。」
コウちゃんとケンちゃんが話しているのが聞こえた。
時間かかった?けっこうスムーズだったのに。急がなくちゃ。
僕は大きく深呼吸してからパズルを見た。メイちゃんの書いてくれたマークが見える。おかげでどれが解きやすいかが一目でわかった。
「メイちゃん!左から2列目を上から順に1個ずつちょうだい。」
メイちゃんが僕にパズルを渡す。
細い金属が真ん中に一本あり、もう一本が螺旋状にその棒のまわりを囲っている形。鍵みたいな形の金具が真ん中の金属に通る形で繋がっている。二本の金属は上でくっついているので鍵は上からははずせない。下からはずそうとすると鍵の差し込む側が螺旋に引っ掛かって進まないようになっている。
「鍵の形と棒と螺旋の金属…。形は違うけどたぶん音符のパズルと同じ解き方…。」
僕は鍵の向きを変える。金具に通っている部分、鍵でいえば手に持つ部分を上にする。そして差し込む部分を先に螺旋の中心をくぐらせるように通す。すると、
チャリーン。
鍵の金具がはずれた。
「メイちゃん。これ、はめて。あと次のお願い。」
僕はメイちゃんに解けたパズルを渡しながら次のパズルを受けとる。
五円玉を5倍くらいに した金属にもう一つの金属が通っている。五円玉みたいな金属には何か文字が彫られている。五円玉みたいな金属には切れ目がないけど、もう一つの金属は輪の一部が切れていてCみたいな形。でも五円玉みたいな金属の方が厚いためそのすき間からははずせない。
「これも確か似たようなやつを持ってる。どこかにある薄い部分を探して…。」
五円玉みたいな金属に暑さが少しだけ薄い部分が一ヶ所だけあった。そこにCの形の金属を当てる。あとは掘られた文字の部分を滑らせるようにずらして…、
チャリーン。
「クリア。メイちゃん、次お願い。」
僕が手を伸ばすとメイちゃんが手を伸ばすのが同じタイミングだった。メイちゃんが僕のリズムに完璧に合わせてくれている。
「す、すごいな。さすがに…。」
ケンちゃんの驚く声が聞こえた。
次のパズルは三角形の枠が3つ繋がっている。枠の表裏にはそれぞれくぼみがある。くぼみの位置は全部違う。
「それはどうなるんだ?見ててさっぱりだ。」
セイちゃんだ。確かにパッと見たらさっぱりだと思う。
「これは完成形がわかってないとね。僕は似たやつをやったことあるから。」
僕は3つの三角を絡ませるようにして組み合わせる。それぞれが上にくるように、下にくるように。
「組み合わせてこうなるんだよ。」
「あっ、六芒星だね~。これ~。」
「うん。きれいに組み合わさると平らになるんだよ。僕のは違うちょっと違う形で、確かコースターってタイトルのパズルだったから。」
僕は完成したパズルをメイちゃんに渡した。メイちゃんは笑顔で受けとるとくぼみにはめた。
ガチャン!
大きな音がして台から見て右側の3つのドア、その中の左のドアに電気がついた。
「開いたみたいだな。あの部屋。」
「じゃあ僕たちも行こう。コウちゃん。」
コウちゃんとケンちゃんがそう言った。そして4人がドアに向かって歩き出した。
「待って!」
僕のその声にみんなが驚いて振り返った。
「ケンちゃん。さっき今日は下見だって言ってたよね?」
「うん。中を見て時間とか仕掛けを確認する予定だよ。まあ少しはやってみるけど、5分くらいで戻るつもりだよ。」
「たぶんあと2分くらいで次のドアが開くよ。そのときは?」
「マジか?さっき、このドアが開いたばっかりだぞ?」
僕の言葉にセイちゃんが驚いて言った。みんなも驚いているみたいだ。みんなが電気のついたドアを確認している間も僕とメイちゃんはパズルを続けていた。すでに2つのパズルを解いてくぼみにはめ、次のドアを開けるための最後のパズルに取りかかっている。
「どうする。ケン?予想以上だぞ?キュウのパズルの実力は。」
「うん。想定外だね。良い方にだけど…。」
ケンちゃんは一瞬下を向いた。そして、
「うん。じゃあコウちゃんとユウちゃん。あの部屋を調べてきて。僕とセイで次の部屋を調べるから。」
「了解。じゃあ、ユウ。行こう!」
「は~い。いってきま~す。」
ケンちゃんの指示を聞いて、コウちゃんとユウちゃんが出発した。
「キュウ。僕たちは次に開いた部屋を調べる。もしその次のドアを開けられそうになって誰も戻ってきてなかったら、そのドアは開けずに次のパズルを解いてて。」
「うん。ドアを開けるパズルをはめずに、別のドアのパズルをやってればいいんだね?そして、誰かが戻ってきたらそのドアを開けて入ってもらう。」
「うん。そうして。」
ガチャン。
ケンちゃんと話ながらも僕はパズルを解いてメイちゃんに渡した。そしてメイちゃんがパズルをはめたことで台の正面、2つのドアの右側が開いた。
「よし!あたしたちも行くぞ!ケン!」
「うん。じゃあ行ってくるよ。」
「ケンちゃん。」
行こうとするケンちゃんを僕が呼んだ。
「もしパズルが全部解けて残りのドアが2つとも開けられる状態になったら、僕とメイちゃんで片方の部屋は入っていいよね?」
「うん。入って調べて。ただ5分くらいで戻ってくるように。」
「了解しました。いってらっしゃい。」
ケンちゃんとセイちゃんがドアに入っていった。
「メイちゃんもやってみたいでしょ?新しい部屋。」
僕が聞くとメイちゃんはうなずいた。僕は手を動かし続ける。次のドアを開けるパズルのうち2つはすでに解けている。あとはルービックキューブを解ければ次のドアが開く。
「上面を右、右面を下、上面を左、最後に右面を下にして…、クリア!これでこのドアは開けられる。メイちゃん最後のドアのパズルちょうだい。」
僕はルービックキューブをメイちゃんに渡そうとした…。あれ?メイちゃんに渡せない。
「メイちゃん?どうしたの?」
僕はメイちゃんの方を見た。メイちゃんはボーッと僕を見てたみたい。そしてハッとして慌てて僕にパズルを渡しルービックキューブを受け取った。
「メイちゃん。大丈夫?」
僕が聞くとメイちゃんはうなずき「だいじょうぶ」と口を動かした。
「うん。何かあったら言ってね。僕も聞いてあげるくらいならできるから。メイちゃんには助けられっぱなしだし。」
僕はそう言いながらパズルを続けた。そして、
「クリア。メイちゃん、次のちょうだい。」
僕がパズルを渡すとメイちゃんがすぐに次のパズルを渡してくれた。どうやらいつものリズムに戻ったみたいだ。
「お~い。ただいま~。戻ったよ~。」
声が聞こえたから顔を上げるとコウちゃんとユウちゃんが歩いてきた。部屋に入ってからちょうど5分くらいだ。
「いや~、あれは厳しいよ~。中をチェックしてすぐに戻ってきちゃった~。」
ユウちゃんが笑いながら答えた。
「そんなにひどい仕掛けなの?」
僕が聞くとすかさずコウちゃんが答えた。
「大迷路だよ。見るだけで頭痛くなった。」
「大迷路か。それは大変そうだね…。あっ、もう次の部屋入れるよ。」
僕がそう言うとコウちゃんは僕の顔を見た。そして笑って言った。
「マジか?すごいな。キュウ。そっか。じゃあ、もう一仕事するか。」
「うん。行こ~う。コウちゃ~ん。」
「じゃあ、ドアを開けるね。メイちゃん、お願い。」
メイちゃんがルービックキューブをくぼみにはめた。
ガチャン。
台から見て右側、3つのドアの真ん中の部屋が開いたみたいだ。
「よし。じゃあ行ってくる。」
コウちゃんとユウちゃんが部屋に入った。入ってない部屋は、あと1つ。今、コウちゃんたちが入った隣の部屋だけ。
「メイちゃん、最後のパズルちょうだい。」
メイちゃんからパズルを受けとる。僕も新しい部屋に入ってみたい。自然と急ぎ気味になった。でも最後に残したこのパズルは難しい…。
3つに分かれたパーツを1つにくっつけるパズル。完成形が頭に入ってないとさっぱりわからない。たぶんダイヤの形になる気がするけど…。上下を逆にしてみたけどやっぱりわからない…。
「あ~。くやしい。」
僕が悩んでいるとメイちゃんが僕の肩をトントンとたたいた。メイちゃんを見ると手に水筒のフタを持っている。中身はここに来る途中でも飲んでいたジャスミンティーだ。
「これ飲んで少し落ち着こう。」
メイちゃんと一緒にいることが多いせいか、口の動きで何を言ってるかがわかるようになってきた。
「うん。ありがとう。いただきます。」
メイちゃんからジャスミンティーを受け取った。一口飲んだらと落ち着いた…。
「ありがとう。美味しい。落ち着いたよ。」
僕がそう言うとメイちゃんは笑顔でうなずいた。
「ごめんね。迷惑かけてばっかりで。」
メイちゃんが首を振る。そして台の上からパズルのパーツを取り、動かしてみせた。そしてゆっくり口を動かす。
「私には全然わからないパズルをスラスラ解けるのはすごいことだよ。かっこいいことだよ。」
メイちゃんの言葉は僕の心に響いた。いつも励まされるし背中を押してもらえる。
「ありがとう。」
僕はメイちゃんを見た。笑顔で僕の方を見るメイちゃんが見える。そして手にはパズルのパーツが…、
「あっ!メイちゃん、ちょっとそのままストップしてて。」
メイちゃんは驚きながら動きを止めた。僕はメイちゃんの正面に立つ。メイちゃんの左手のパーツを受け取る。そしてメイちゃんの右手のパーツに下からゆっくり合わせてみると…、
カチャッ。
2つのパーツが繋がった。
僕は台の上にあるもう1つのパーツを右手で取る。そしてメイちゃんの右手のパーツにゆっくり近づけると…、
カチャッ。
パーツが繋がり1つのダイヤの形になった。
「クリア!メイちゃんのおかげだよ。ありがとう。」
メイちゃんが首を振る。そして口をゆっくり動かす。メイちゃんが口をゆっくり動かすときは、「大丈夫?」みたいに一言で終わらないとき。だいぶわかるようになってきた。
「私のおかげなんかじゃないよ。キュウちゃんの力だよ。でも何で急に解けたの?」
「さっきまでは僕が持ってたから、見る角度とかが限られてたんだと思う。メイちゃんが持ってくれたから、いろんな角度で見れた。だから解けたんだよ。」
僕はメイちゃんの質問に笑顔で答えた。そして、不安定にくっついているパズルを押さえるようにしながらメイちゃんの手をギュッと握り、
「やっぱりメイちゃんのおかげだよ!ありがとう。」
と、伝えた。メイちゃんは恥ずかしそうに少し下を向き、「どういたしまして。」と口を動かした。そんなメイちゃんの姿を見て、僕も恥ずかしくなった。なのでそっと手をはなした。
「メイちゃん、パズルはめて。」
メイちゃんはうなずいてパズルをはめた。
ガチャン。
僕たちの右側、3つのドアの一番右端のドアが開いたみたいだ。
「メイちゃん。せっかくだから二人で入ってみる?新しい部屋。」
メイちゃんは笑顔で大きくうなずいた。
「じゃあ行こうか。」
とメイちゃんは歩きだし、次の新しい部屋のドアの前に立つ。足が震える。ドキドキする。期待と不安で…。
「大丈夫だよ。入ってみようよ。」
隣をちらっと見ると、メイちゃんはそう言って…、そう口を動かしてから微笑んだ。僕の肩から力が抜けた。
「うん。行こう。」
僕はドアを開け中に入る。メイちゃんが僕に続く。
この部屋の中にはどんな仕掛けが待ち構えているんだろうか。




