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アメイズ  作者: D-magician
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第13話 次のフロアへ

「お疲れ!すごかったらしいな!キュウ!」


 僕とメイちゃんが部屋を出たとき、いきなりセイちゃんの大きな声が響いた。階段の上を見るとセイちゃんが手を振っているのが見える。


「そ、そうなのかな?僕は助けられっぱなしで何とか戻ってこれたって感じなんだけど…。今もフラフラだし…。」


 僕がそう言うと、今度はユウちゃんの声が響いた。


「すごかったんだよ~!キュウちゃんは~!特に最後のトランプは一人で全部やっちゃったんだから~。」


 ユウちゃんの声がやけに大きく聞こえると思ったら、ユウちゃんも他のみんなも僕たちのすぐ右側の通路に揃っていた。セイちゃんだけ階段の上にいたみたいで、笑顔でかけ降りてきた。


「それはすごいな!」


「セイにすごさはわからないだろ?やってないんだから。」


 セイちゃんの言葉にケンちゃんがつっこんだ。僕にはその意味がわからなかった。だから聞いてみた。


「テクニックはみんなができたんじゃないの?」


「ん~。セイちゃん以外は全員クリア~。セイちゃんは不戦敗?になるのかな~?」


 ユウちゃんが答えてくれたが余計にわからなくなった。不戦敗…?僕の顔を見たコウちゃんが笑った。


「不戦敗で正しいよ。最初の課題あっただろ?犬のエサのやつ。」


「うん。あった。犬にエサを与えないやつでしょ?」


「そう。あれって犬があの台の前に来ないと始まらないんだよ。だからセイはできなかったんだよ。」


 そこまで言った後、セイちゃん以外は全員笑い始めた。


「え?犬がいなかったの?五匹もいたのに?」


「犬はいたよ。ただセイがドアを通っていきなり、やるぞ~!って叫んだらみんな逃げちゃって。その後はいくらエサを見せてもセイには近づかなかったんだ。」


「ったく、あの犬ども。あたしを見て逃げるなんて。失礼だ!」


 みんなが笑う中、セイちゃんが腕を組んでそう言った。


「ライオンに見えたんだろ?」


 ケンちゃんがボソッとつぶやき、それが余計にみんなの笑いを誘った。


「なんだと!あたしのどこがライオンだ!」


「強いて言うなら自覚がないところだな。」


「ケンちゃ~ん。失礼だよ~。」


 セイちゃんとケンちゃんの口喧嘩をユウちゃんが止めに入った…、と思ったら…。


「ライオンはエサを捕まえるとき以外は静かだよ~。」


「おい!ユウ!あれか?失礼ってライオンにって意味か?」


 ユウちゃんは見事に火に油を注いだ…。


「おーい。そろそろ行くぞ!せっかく次のフロアに行けるんだから。」


「うん。行こう。」


「そうだよ~。セイちゃんもいつまでも怒ってないで~。」

「誰のせいだ!…、まあいいか…。行くか!」


 コウちゃんの一言でみんながひとつになったみたいだ。


「あっ、そうだ。メイ。これ。」


 セイちゃんがメイちゃんにノートとリュックを渡した。セイちゃんに預けてたから、さっきのテクニックの部屋は手ぶらだったんだ。


「よし!行こう!」


 コウちゃんが歩き出した。見るとテクニックの部屋のすぐ横に階段がありその奥に廊下がある。


「あれ?ここに階段なんてあったけ?」


 僕が聞くとセイちゃんが答えてくれた。


「ああ。テクニックの部屋をクリアしたら壁がなくなったんだよ。それでこの階段が現れたってわけ。」


「そうだったんだ。」


「まあ、キュウがいなかったら…。あたしたちだけだったら一生進めなかったかもしれないから。自信持て!」


「かっこいいね。セイちゃんは…。うん。ありがとう。」


 そう伝えるとセイちゃんは僕を見て笑い、勢いよく階段をかけ上がっていった。僕にはそんな体力はもう残ってないのでゆっくり階段を上る。となりのメイちゃんも、たぶん僕に合わせてゆっくり上っている。階段を上りきると細い廊下が続く。みんなが少し先を歩いている感じになった。


「メイちゃん。少し急ごうか。」


 そう言った僕を見て、メイちゃんは笑顔でうなずいた。


「お~い。キュウ!遅いぞ。お前がいないと始まらないだろ。」


 廊下の先でコウちゃんが僕を呼んだ。ケンちゃん、ユウちゃん、セイちゃんもこっちを見ている。みんな笑っている。


「うん。」


 僕も答えた。


 最悪な気分で迎えた夏休み。何もかもが嫌でおばあちゃんの家に逃げてきた。


 まさか冒険をするとは思わなかった。まさか僕が誰かの役に立つとは思ってなかった。まして友達ができるなんて思いもしなかった…。


 もし、祭りに行かなかったら?もし、祭りであのテントに行かなかったら?もし、テントであのパズルを解けなかったら?


 もし、メイちゃんが僕の袖をつかんでくれなかったら…?


 もし、メイちゃんが僕の名前を聞いてくれなかったら…?


 いくつもの「もし」が頭の中をよぎる。僕はメイちゃんを見た。メイちゃんもそれに気づいて僕を見た。


「メイちゃん。本当にありがとう。」


 メイちゃんは、もしかしたら何のお礼かわからないかもしれない。でも、僕はそれを言葉にして伝えたかったから。


 それを聞いたメイちゃんはニコッと笑って口を動かした。


「どういたしまして。あと、こちらこそどうもありがとう。」


 僕は笑顔でうなずく。メイちゃんも笑顔でうなずく。そしてみんなの背中を追いかけて歩いた。

 次のフロアには何があるかわからない。でも僕はみんなとならクリアできる気がした。

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