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アメイズ  作者: D-magician
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第11話 次への課題

「お疲れさま~。」


 僕たちがムーヴの部屋から出るとユウちゃんの明るい声が響いた。階段の上で手を振っているのが見える。


「おつかれ~。大丈夫…じゃなさそうだな。キュウは。」


 ユウちゃんの声に反応したケンちゃんはパソコンをしながらチラッとこっちを見てそう言った。そして、またパソコンを再開したみたいだ。


「お疲れさま。大丈夫だった?」


 そう書いたノートを開きながら、メイちゃんが僕を見た。メイちゃんは階段を下りてドアの前で僕たちを待っていたみたいだ。


「セイちゃんがいなかったら二回くらい死んでたかも…。」


「キュウだけは大冒険から帰ってきたからな。あたしたちは普通にこなせたけど。」


 まだフラフラしている僕を見てセイちゃんは笑った。


「うん…。下手な冒険マンガよりスリルのある冒険したよ…。まさか現実世界でやることになるとは思わなかった。」


 僕もそう言って力なく笑った。


 コウちゃんとセイちゃんが階段を上がっていく。僕はその後ろをゆっくりついていく。隣を見るとメイちゃんがいた。僕の顔を見ると、口の動きで「おつかれさま」と言って笑った。たぶん僕が倒れないか心配して隣を歩いてくれてるんだと思う。


「メイちゃん。いつもありがとう。」


 僕が小さくそう伝えると、メイちゃんは「どういたしまして。」と口の動きで返してくれた。メイちゃんはいつも僕が倒れそうなとき支えてくれてる。おとなしそうに見えるけど、実は僕よりたくましいと思う…。

 そんなことを考えていたら階段を上がりきっていた。みんながケンちゃんのまわりに集まった。


「キュウはやっぱり向いてなかったみたいだね。ムーヴの部屋。」


 ケンちゃんが画面を見ながら言った。


「ああ。苦手だって言ってただけのことはあるよ。最初にやったときのあんたと同じレベルだよ。ケン。」


 セイちゃんが思い出すように遠くを見ながら言った。


「そっか。僕レベルか。じゃあやっぱり向いてないね。」


「ケンちゃんも最初はできなかったの?」


 僕が聞くとケンちゃんは画面を見ながら答えた。


「僕は今でもアスレチックは一人では厳しいよ。うんていが特にね。」


「そうなんだ…。あっ、だから…。」


「そう。ケンが先にやったおかげで対策を考えられた。だからキュウがやるときには準備OKだったってわけ。」


 コウちゃんが笑いながら話に入ってきた。


「実験台の僕はキュウの役に立ったかな?コウちゃん。」


「ああ。ロープもうんていもほとんど同じだったから。」


「そうそう。でもケンよりキュウの方が粘ったぞ。ケンは落ちたけどキュウはあたしが間に合ったんだから。」


 セイちゃんも話に加わった。ケンちゃんはセイちゃんを横目で見て言った。


「そっか。キュウは落ちないですんだんだ。」


「そうだよ。あんたはギリギリで落ちたんだから。間に合わずに。」


「でも、キュウの場合はケンのことがあったから急げたんだろ?セイ。」


「そうだな。あのときがなかったら、たぶんキュウは落ちてたな。」


 セイちゃんは腕を組んでうなずいた。


「僕は役に立ったなら何でもいいよ。」


「十分役に立ったよ。ケン。」


 コウちゃんがケンちゃんの肩をたたいて言った。ケンちゃんは笑顔でうなずいた。この二人の関係はうらやましいと思う。


 ん?ということは…


「ねえ。みんながあれをやったんだよね?今の話ならケンちゃんと僕以外はスムーズにクリアできたってこと?」


 僕がそう聞くとみんながこっちを見た。そしてコウちゃんが答えた。


「そうだな。ケンとキュウ以外はスムーズだったはずだよ。クリアできたかどうかは別だけど。」


「クリアできたのは誰がやったときなの?」


「は~い。それはコウちゃんとセイちゃんが一緒のときだよ~。いろんな組み合わせであの部屋やったけどクリアできたときはコウちゃんとセイちゃんが一緒のときだけだよ~。どちらか一人のときはアスレチックに時間がかかったりストラックアウトをクリアできなかったりだから~。」


 ユウちゃんが笑って言った。


「じゃあストラックアウトをクリアできるのって。」


「そう。あたしとコウの二人だけ。だからあたしかコウが来れない日は休みになっちゃうんだよな~。」


「そうなんだ…。」


「何か誰でもできる方法があればいいんだけどな~。」


 セイちゃんが困ったような声で言った。


「そんな方法ないよ。あったら僕とかキュウみたいな人間ががこんなに困ってないんだから。」


 そう言ってケンちゃんがキーボードをパシッとたたいた。向かって右の部屋の電気がついた。


「さあ、あれをクリアしたら新しいフロアに行けるよ。ユウちゃん、誰を連れていく?」


 ケンちゃんが立ち上がってユウちゃんを見た。どうやらあの部屋はユウちゃんの得意な分野らしい。


「じゃあ~、私とメイちゃんでしょ~。あとは~、キュウちゃん行けそう?全部の部屋を一回は経験した方がいいってみんな言ってたし~。」


 ユウちゃんとメイちゃんが僕を見た。


「あの部屋って走ったり上ったりしない?」


「うん。大丈夫だよ~。むしろこの中ではキュウちゃんに一番向いてる部屋かも~。」


 ユウちゃんが答えた。


「そうだね。たぶんキュウならすぐにできるはずだよ。」


「ああ、必要な技術はすでに習得済みっぽいしな。疲れててもたぶん大丈夫だ。」


 ケンちゃんとコウちゃんが口々にそう言った。他のみんなもうなずいている。


「え、必要な技術?しかも習得済み?」


「まあ、やってみればわかるよ。行ってこい!キュウ。」


 セイちゃんに背中を押された。


「うん。わかった。よくわからないけど行ってみる。」


 僕はうなずいてそう言った。


「よ~し。じゃあ、キュウちゃんとメイちゃん。レッツゴ~!」


 ユウちゃんが元気よく階段を下りる。僕とメイちゃんが続く。


「頑張ってこいよ!」


 セイちゃんの声が響く。


「は~い。行ってきま~す~。」


 ユウちゃんが大きな声で答えた。僕とメイちゃんも手を振った。


 そして僕たちはドアの前に着いた。僕は少し震えた。それは新しい部屋に挑戦する緊張感からか、さっきのムーヴでかいた汗で体が冷えたからかはわからないけど。


「よ~し。じゃあビシッと一発で終わらせるよ~。二人とも~。」


「うん。頑張るよ。」


 僕が答えた。


「頑張ります。」


 メイちゃんがノートの文字で答えた。


 ユウちゃんがニコッと笑ってからドアを開けて中に入る。僕とメイちゃんもついていく。メイちゃんが僕の肩をトントンとたたき、「がんばろうね。」と口を動かした。


「うん。頑張ろうね。」


 僕も答えた。


 新しい部屋。何があるかわからない。だけど僕はこの部屋は絶対クリアできると信じている。自信を持ってもいいような気がする。


「キュウなら大丈夫。」


 みんなが言ってくれたその言葉を信じて。


 みんなを信じて。

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