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プロローグ
ミーンミーン。
かすかにセミの鳴き声が聞こえる。それよりもコツコツという僕らの足音の方が大きく聞こえる。
外はまだ夏の日差しが照りつけているはずなのに僕らの場所には届かない。クモの巣のせいか汚れのせいかわからないが、本来の半分くらいの明るさに感じる光の下を僕たちは進む。
「さあ、行くぞ!」
コウちゃんの声が薄暗い廊下に響く。
「次は必ず僕が解いてみせる。」
ケンちゃんは自信に満ちた顔でコウちゃんの後に続く。
二人の後ろを微笑みながらユウちゃんとセイちゃんが続く。
ふと、コウちゃんが振り返り言った。
「キュウ!遅いぞ。お前がいないと始まらないだろ。」
他の三人もこっちを見て笑っている。
「うん。」
僕も笑って答える。
最悪の気分で夏を過ごしていたはずの僕は、今なぜか仲間に囲まれ考えたこともなかった冒険をしている。
僕の隣にいる女の子。
その子の手には一冊のノート握られている。
そしてその最初に書かれている言葉こそ、僕をここへ導いた言葉。
「お願い。私たちを助けて。」