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眩き背中、なによりも輝いて



 駆け抜ける、一陣の風。それはいま自身の横に静かに佇む少年の声が呼んだのか、それともその声こそが一陣の風だったのか。熱を孕む空気の中、冴えた風と共に駆け抜けた一声は、(たが)わずラジャスの鼓膜を震わせた。



「まじゅつし……だと」



 表情を剣呑にひそめて、スイメイの言い放った言葉を繰り返すラジャス。以前見た時とは出で立ちが違うせいですぐには思い出すことができなかったようだが、やがて彼の顔に見覚えがあったことに気付いたらしく、納得の面持ちを作る。



「そうか、貴様は……あの時邪魔に入った魔法使いの小僧か」



「…………」



 対するスイメイは黙したまま半身に立ち、厳しい瞳を向けるのみ。

 そんな彼に、ラジャスは感心したように嘲笑う。



「魔法使い風情がよくもまあここまでたどり着いたものだ。俺の部下は随分といただろう? ん?」



「ああ、無駄にな。よくもまああそこまで汚物ばかり集めたもんだ。何度反吐が出そうになったかわからんよ」



「その汚物共にたかられてみすぼらしくなった者が言うと、真実味が湧くというものだな! ハハハハハハッ!」



 ラジャスはそう嗤い声と共に皮肉を返す。確かにスイメイは満身創痍だった。怪我らしい怪我は見えないものの、丈の長い黒衣は酷使したのかくたびれほつれており、立つ姿や微細な挙動には精彩がない。荒い呼吸からも、体力の消耗を感じさせるし、顔には浅い切り傷もある。やはり、ここまでに至るための道程は相当に困難を極めた道だったのか。

 そんな姿になりながらも馳せ参じた水明に、高笑いを上げていたラジャスはその喜色を残したまま、変わらぬ口調で問いかける。



「――で? 貴様、どうやってここまで来た? あの数だ。追い立てられながらにでも来たのか?」



 ほうほうの体だとでも言いたげな、侮るようなその物言いに、しかしスイメイは素っ気なく返答する。



「なに、立ちはだかったものは振り払って来ただけのこと」



「ほう、そのみすぼらしい姿で良くほざく」



 呵々と嗤うラジャス。スイメイが言い放った言葉は、怪我人の強がりにしか見えないか。確かに自身にも、この窮地でうそぶくその姿は負けず嫌いの精一杯の虚勢にしか見えなかった。

 そんな彼に、さらに訊ねがかかる。



「訊くが、そんな姿になってまで、貴様はどうしてここに来たのだ?」



「そんなこと今更問うまでもないことだと思うが?」



「……まさか、そこの女を助けに来たとはいうまいな?」



「それが、そのまさかだとしたら?」



 スイメイは、ラジャスの問いにそう返した。ここまで助けに来てくれたのだと。自身の力になりに来てくれたのだと。伸ばされた手を振り払ったのに。そんなことなどしなくてよかったのに。もう、どうしようもないのに。だが――


 凛とした表情を向けるスイメイに、一拍遅れてラジャスが一際大きな哄笑を上げる。



「はっ!? クハハハハハ!! まさか本気でそのようなことを口にするとはな! この状況で、こんな女を助けに来たのだと!? 貴様正気とは思えんぞ!?」



 そうだ。ラジャスの言う通り、正気ではない。あの魔族の軍勢を越えてきたにもかかわらず、こんな死地にまで来るなど、まず正気の沙汰ではない。こんな場所に来て何を得ると言うのだ。ここは人が欲するものはもう何も残されてはいない場所。乗り込んできても、持ちうるもの全て失うだけのそんな場所。なのに。



「なんだお前は。このような女が救うに値すると言うのか? 命を惜しんで戦いから逃げ出し、何も守れないような女が? 助ける価値さえない女が?」



「ああ」



 目をつむって頷く彼は、何を思うか。愚行だと、そう放たれた言葉を肯定し、(スイメイ)を愚者と認めたその心。そんな彼に、ラジャスはまた、



「ふ――何が貴様をそこまでさせる? 自らの命を惜しんで、この女など見捨ててしまえば良かっただけではないのか? いなかった者と割り切って、忘れてしまえば良かっただけなのではないか?」



 そう、来る必要などなかったのだ。吐かれた言葉の内容通り、魔族という嵐がどこか彼方に過ぎ去るまで、森の中で大人しくしていれば良かったのだ。そうすれば、命が助かる希望はあった。勝手に飛び出した自分など愚かと見捨て、最初からいなかったのだと見て見ぬふりをしていれば、ただそれだけで良かったはずなのに。



 なのにスイメイは、「いや」と一言口にして、頭を振った。



「それじゃあダメだ。それじゃあ俺は彼女の助けになれない」



「ぬ――?」



 予想だにしていなかった彼の言葉に、ラジャスが眉をひそめた直後、スイメイは何かに挑むようにして、



「それに不幸に嘆く者を、救われぬ者を救うのが、俺の信じる道だ。その道から俺は逃げるわけにはいかない。だから――」



 ――だから俺は、こうしてここまで来たんだ。



 そう、スイメイは厳然と言い放った。助けるためにと。お前と戦うためにと。

 その内なる決意を紡いだ言葉に、ラジャスはしばらくの間呆気にとられていたようだが、やがてその呆然から回帰したか、思い出したように口を開けて、一呼吸放ち、



「は――」



 彼の宣したその決意を、声も大きく嘲笑った。



「ははははは! バカな! そんな理由で! そんな理由でここまで来ただと!? 俺の部下共を掻き分けて、こんな死地に! それになんだ、救われぬ者を救うだと!? そんな無駄なことを胸に抱いてこの場に馳せたなど、愚かにもほどがある!? ふははははっ!! こんな滑稽な話が――」


 ・ ・ ・

「だから?」



「――――!?」



 ラジャスの哄笑を止めたのは、スイメイの放ったそんな冷たい一声だった。北限の国に吹きすさぶ風よりもなお冷たいならいの風が、誰も彼もの心を凍てつかせ、哄笑の余韻も、やおら息を呑む音も全て、ここにはいらぬと奪っていく。

 そして場に満ちたのは、おそろしいほどの寒気(かんき)。物理的な寒さではない。しかしそれよりもはるかに強い寒気(さむけ)を催す身を切るような凛冽さ、精神を縮み上がらせるような冷気がそこにあった。ラジャスの持つ力に熱せられていた辺りが、まるで凍土の真上にでも変わったかのよう。


 そしてその状況を作り上げた鬼気放つスイメイはと言えば、決意を嘲笑う魔性を、鋼のように揺るがない瞳で見据えていた。



「……小僧。即刻その目をやめろ。気に食わん」



「言って、やめるとでも?」



 静かな苛立ちを払い退けんとしたスイメイの問いに、ラジャスの力が急激に高まった。



「なら、力づくでやめさせるのみよっ!!」



 ラジャスの口から放たれたのは、周囲にあるあらゆるものを揺動させるような巨大な叫び声。巻き起こった衝撃波に塵や砂、小石が吹き飛んだのもつかの間、襲い来るのは巨体から突き出されたる樫の根のような手と(かいな)

 そして、立ちはだかるものを肉塊に変えんとするそれを迎え撃ったのは、他では決して聞くことのない彼特有の詠唱だった。



「Primum ex Quintum excipio!!」

(城壁、五重展開!!)



 金色に輝く魔法陣が五つ、スイメイが盾を構えるように突き出した手を起点に構成されていく。あるいは描かれ、あるいは浮かび上がり、あるいは割れた破片が元の形に戻るように合致して。

 果たして金色の防御は間に合った。衝突する、おどみをまとった拳とスイメイの魔法。

 黄金の火花が激しく散り、やがて耐え切れなかったのか、それとも元々役割が違うのか、魔法陣の二枚目が弾け飛び、次いで三枚目も弾け飛んだ。



「お、おおおおおおおおお!!」



「ぁああああああああああっ!!」



 魔法陣を掘削しスイメイを倒さんとする豪拳と、金色の輝きの粒子を舞い上げて高まる魔力。耐えられず砕ける地面と、発散される衝撃の風。それらがやがて竜巻めいた気流を生んで、激突の凄まじさを綾なしていく。

 両者の雄叫びが交錯する最中、四枚目の魔法陣が輪転した。その直後――



「ぬう――!?」



 スイメイに向かっていたはずの強大な力が一瞬にして裏返る。直後、轟音の津波と共に、ラジャスの巨体が大地を抉って、斜面の向こうまで吹き飛んでいった。



「ちっ――、減衰城壁(だいごじょうへき)を干渉させてもこの威力で吹っ飛ぶのかよ……。こんの、馬鹿力め……」



 肩を上下に揺らしながら、視界の先に消えたラジャスに向かって悪態をつくスイメイ。やはり彼は消耗していた。これまでの道のりといま相対している敵とを合わせれば、無理もない話だろう。

 そんな中、彼は急にこちらへ振り返った。そして、



「立つんだレフィール。これからアイツを倒そう」



 と、彼は自身に向かって口にする。一緒に戦おう。二人で抗おうと。協力を請うように――いや、立てぬ自身を励ますように。ひたすらに真摯に。

 向けられるのは、妖しく輝く緋色の内にありながら、なによりも真っ直ぐで眩しい瞳。その目に映る情熱は確かに、真っ赤に焼けた鉄のよう。熱い目だ。自身の奉じた信念を決して忘れぬ、理想に殉じる男の目。

 その眼差しの向かう先が果てが、きっと幾多の人間を魅せてきたのだろう。それをしかと感じさせる、そんな目だ。



 だが、その意思に応じるための答えを、自身はもう持ち合わせてはいなかった。それもそのはず。先ほど全てラジャスによって砕かれてしまったのだから。



 だから自身は、



「無理だ」



 俯き、諦めることしかできなかった。



「え――?」



「無理だ。奴には勝てない。君も、私も。ここで奴に殺されるのが定めなんだ」



「おい……どうしたんだ?」



 自身の諦めを聞いても、スイメイはそう困惑に問うてくる。きっと彼はここで、力を合わせて戦えることを信じて疑わなかったのだろう。二人で確かに奴を打破せんと。

 しかし、もうどうしたも何もない。だって、



「ラジャスには勝てない。あの魔族は強すぎるんだ。君といまの私の力を合わせても、勝つことはできないよ」



「そんなもの、やってみなけりゃわからないだろ?」



「いいやわかるさ。奴は強い。精強で知られたノーシアスの兵の数々が、奴の力の前に倒れたんだ。それを、君と私とたった二人だけでなんて覆せない。覆せるわけがない。こうなってしまった以上、君も私もここで奴の手にかかって死ぬ運命なんだよ」



 それが定めなのだと、変えられない運命なのだと。悄然と判ずる言葉は、まだ戦う芯の折れていない彼にすれば、ただの弱気にしか聞こえないだろう。だが、これが真理なのだ。いくら想い強くても、いくら勇気を奮おうとも、強大な力の前にはいずれも、春夜(しゅんや)の夢と同じくある。

 そんな自分の弱さを見て、スイメイは肩を落として目を伏せた。落胆したか、俯いた姿からの表情は窺えないが、おそらくきっとそうなのだろう。



「……それで良いのかレフィール? そんな結末で君は本当に良いのか?」



「ああ。もういいんだ。何もかも。もう諦めた。私は疲れてしまったんだ」



「……そうか」



 (うべな)う声が聞こえる。わかったか。わかってくれたか。もう、何もかもが窮まってしまっていることに。これ以上抵抗して、無為に傷つくことはない。少し痛みに耐えていれば、楽になるのだ。



 気付けば振り向いた姿は翻っていた。

 しかし、それは自身の望んだ姿ではなかった。見れば背と黒衣が目の前にあり、迫りくるラジャスの脅威から守るような立ち姿。



「スイメイくん?」



「なら、俺は俺のやりたいようにするだけさ。レフィールがここから離れないって言うのなら、俺がここであの外道を叩き潰すだけだ」




 スイメイの発した言葉は、希望を信じて疑わない、そんな声音から紡がれたもの。そんな言葉が無知すぎて、否定に声が荒らいだ。



「君はラジャスの本当の力を知らないだろう! 奴は先ほど君が倒した魔族とは訳が違うんだぞ!?」



「だろうな。だが、ここで俺が諦めたら、レフィールも助けられないし、俺は俺が目指したものにたどり着くことができない」



 彼が目指したもの。それは先ほどラジャスに向かって言い放った、あの想いか。



「救われない者を救うためだと? 馬鹿な! この世界中、不幸になるものは必ずいる! いつだって、どこにだって、例外なんていやしない!」



「だとしても」




「そんなものは幻想だ! まやかしだ! 子供の見る夢物語だ!」



「だとしても」



「そうだとしてもなんだと言うんだ! そんな綺麗事だけで飾られた言葉が、ここで二人助かる保障になるというのか!」



「だとしても」



「そんなの、決して叶うわけがない。不可能だ。絶対に」



 そう絶対に。この世には、そうどこにだって、飢える者がいる。悲しみに膝をつく者がいる。怒りの内に果てる者がどこかにいる。そして、決して助からない者がいま確かにここにいるのだ。例外などない。救われない者は絶対に存在する。必ずだ。

 分かるはずだ。分別の付く者ならば。現実を見ればもうそんな希望などとうの昔に捨て去っていておかしくない幻想なのだ。



 しかしそれでも、彼は聞き分けのない子供を優しく諭すように首を振って――



「レフィール。それは君が決めることじゃない。誰かを救えるか救えないかは、いままで進んできたこの夢路の果てに、俺が必ず見付けるものだ」



「そんなもの目指して何になるというのだ。そんな不確かで曖昧なもの。そんなもの追いかけても見つからないだけじゃない。その果てにあるのは、希望を裏切られたものだけにもたらされる絶望だけだ」



「かもしれない」



「なら――」



「だけど、俺は顧みるつもりはない。だってそうだろ? 振り返ったその先に、俺の目指した夢はない。夢を諦めたその先に、あの日誓った俺はいない。だから――」



 ――だから見ていろ。俺の目指すこの希望を。その、希望を求めるこの在り方を。



「あ――」



 見ていろと。果敢に言って退けたその姿はどうして、眩いほどの輝きに満ちていた。きっとそれは、いままでこの世界にいる誰もが見たことのない、不可能に挑む者のみが持つ魂の輝きだったのだろう。



 吹き飛ばされたラジャスが戻ってくる。地面を足で踏み割りながら。激突に敗れたのを不様と思うか、その形相は憤怒に満ちており、視線で射殺さんとばかりに目の焦点は違わずスイメイへと合わせられている。



「小僧、貴様……」



「ぶっ飛んでろよ外道が」



「黙れぇえええええ!!」



 その咆哮に合わせ、ラジャスの手のひらの中にあったおどみが急速に膨張していく。黒が黒を飲み込んで、周囲に滅紫(けしむらさき)色の影を落としながら。ノーシアスの砦を吹き飛ばし、先ほどこの周囲までも更地にしたあの、ラジャスの技だ。



「これで消え去るがいい!」



 もう終わりだ。これで終わり。自身にはもう精霊の力は残っておらず、あの力を凌ぐことはできなくて、この力に対抗できる魔法もこの地上には存在しない。だから、これでもう終わりなのだ。



「スイメイくん……もう……」



 そのはずなのに、スイメイは、聞こえたはずの弱音も意に介することはなく、



「――ふん」


     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 まるでそれらをつまらないものだと断じるように、その呪文を口にした。



「Non amo munus scutum. Omnes impetum invictus」

(我が盾は盾にあらず。いかなる攻め手の前にあってもなお堅固なもの。いかなる砲火の前にあってもなお揺るがなきもの)



 呪文の詠唱に合わせ高まる魔力。金色の魔力光が辺りの闇に抗うように満ち溢れ、光がつむじ風のように旋転していく。



「Invincibility immobilitas immortalis.Cumque mane surrexissent castle」

(決して潰えず、不動にて盤石。其は星の息吹を集めたる黄金の輝きに虚飾されし堅城。その名は)



 やがて金色の光は各々がその役割を果たさんとするように割り当てられた場所へと向かい、荒れ狂う金色の稲妻に励起されてその形を成していく。かちり、かちりと何かと何かがはまる音が周囲から断続的に聞こえ始め――



 そして、



「Firmus! Congrega aurum magnalea!」

(我が堅牢! 絢爛なる金色要塞!)



 スイメイが発した最後の言葉と共に、魔法陣が折り重なる。

 その構築に一拍遅れて、闇が全てを奪おうと、辺りの景色を飲み込んだ。



「――――っ!!」



 ……これで終わりだった。なにもかも。あの攻撃の前に、肉体も魂も闇に奪われて消えていくそのはずだった。


 だが、終わりではなかった。逃れえぬ死の予感に閉じた目蓋。その闇を開くと、何事もない自分とスイメイがここに。ここで確かに命をつないでいた。



 砂塵の晴れた目の前、それに驚愕の相を呈していたのは、守られた自身だけではなかった。



「ばっ、バカな……!? 砦すら消し飛ばす我が力が効かぬだと!?」



 ラジャスの驚愕に満ちた声が響く中、周囲を見回すとそこには息を呑むような光景が広がっていた。

 周りには領域を形作る幾何学模様と文字数字。それを囲う金色の魔力光。地面に描かれた魔法陣には時計の長針と短針めいた物があり、他の魔法陣は周囲の空間を守るように展開されている。大きな魔法陣、小さな魔法陣、先ほど見た魔法陣も確かにここに。気が付けば、自分たちは幾多の金色の魔法陣に囲まれていた。



 そう、それはまるで魔法陣の城壁に囲まれた砦のようで――



「は――俺の金色要塞を石や木なんぞで出来たちゃっちいモンと一緒にするなよ。こいつが象っているのは向こうの世界の軍事基地だ。貫きたかったら、赤竜哮の倍の威力は持ってくるんだな」



「向こうの世界、だと……?」



「そんなことテメェには関係ねえよ!」



 水明が右手を払うとその中から一瞬で銀色の剣が構築され、ラジャスの困惑の声音ごと土煙も余燼も全て消し飛ばした。



「貴様ァアアアアアアア!」



 そしてラジャスもついに、スイメイをこのままにしてはおけぬ敵と定めたか、彼に猛然と襲い掛かる。迎え撃つはスイメイ。防御の城砦を魔力に戻して、剣の切っ先をさきがけと決め込んで駆けていく。

 一方ラジャスの戦い方は単純だ。しかし速く強力でもある。

 相対する者はあんなに大きいのに、人間など触れただけで挽き肉になってしまうと言うのに。しかしスイメイは駆けて、立ち向かって、そして接近戦へと持ち込んだ。



 死の肉薄。その所懐に間違いはない。しかしそれでもスイメイの勢いは衰えない。

 ラジャスの無骨な攻撃をかわし、魔力を込めた銀の剣で応戦しながら、言葉を紡ぎ、魔術を確かに当てていく。拳の一発でも貰えば致命傷。そんな、ぎりぎりの戦いの中、それでも彼に悲壮はない。心に秘めた熱い思いそれだけが原動力とそう背中で語るように、鉄芯の入ったように堅固なまま。折れず、曲がらず、その姿はこの場にいる誰よりも強くある。



 肌を、衣服をかすっていくおどみに、スイメイの顔や体に小さな傷が増えていく。それでも止まることはない。少年の猛々しい叫び声が、迫る恐怖を、心を萎えさせる気迫を、何もかもを弾き返してまかり通っていく。




 ……彼がそんな風に傷だらけになって戦っている最中、情熱に魅せられるそんな折、何故かふと我に返った。




 ――――自分は一体、何をしているのだろうかと。



「あ……」



 彼があんな戦いをしているそんな中で、そんな後ろで、なにもかも諦めて、全て投げ出して、彼の言葉をも否定して、いま膝をついている。ただ見ているだけ。何もできぬと決め込んで眺めているだけ。気が付けば自分はそんなことしかしていない。



「…………」



 見えるのはあの背中。ひた向きな背中。そして理不尽なこの世で涙に暮れる誰しもの、その幸せを願う少年の熱く篤いその想い、その目眩く輝きだ。


 救われない者を、救ってみせる。そんな言葉を口にできる、その決意。それを見せられて、それに魅せられて、己は黙ったままでいいのか。何もできないこのままで、本当にそれでいいのか。



「いや――――」



 その自問に否と、明確に答えが出た時、身体に圧し掛かっていた何かが、するりするりと消えていった。まるで、自分の発した諦めの言葉が全ての戒めの元凶だったかのように。彼の発した言葉の全てがその元凶を解く鍵だったかのように。



 これで良いのか。いや、良くはない。自分はそんな結末など望まない。本当は望んでいない。また、再び自分の夢へと駆けていきたい。決して止まることのない、彼のように。



 だから、もう一度、と。もう一度、自身に戦う力を、と。痛みに耐え、血だらけの姿のまま、この不様なままで、いまここに願い奉る。



「我らが奉じる女神、アルシュナよ。何も変えることのできなかったこの私に、一人では変われないこの私に、今一度だけ変わる勇気をお与え下さい。願わくはもう一度、もう一度だけこの私に――」



 それは、願いであり希求の言葉。自分を奮い立て、再び剣を取らせるための再誕の祝詞。だが、女神は決して助けてはくれないだろう。分かっている。彼女はこの世にはいないから。いまはもう、ただ見守っているだけの存在だから。だからこれは、自分が変わるための、自分のためにかけた言葉に過ぎないのだ。



 そして、目を開いたとき、自身の身体はいつにない力で満たされていた。膝をつき、諦めていたのが嘘だったと思えるくらいに、先ほどまで身体や心を占めていた弱気は、もうどこにもない。

 そんな力を、乗り越える勇気をくれたのはそう、目の前の少年にほかならない。信じ抜くことを教えてくれたからこそ、示してくれたからこそ、再び自身に思い出させてくれたからこそ、自身はいま、立ち上がった。



 取り落とした剣を再び掴み、諸手で思い切り振る。

 巻き起こった太刀風が赤い風となって、スイメイとラジャスの間を駆け抜けた。



「な――貴様!? 一体どこにそんな力が!?」



「レフィール……」



 再び立ち上がった自身を迎えたのは驚きの顔と、喜ぶ顔。それがどちらの物かということは今更言うまでもないだろう。

 精霊の力を、いま持ちうる全ての力を解放する。赤い風、戦いと緋色の精霊イシャクトニーその赤迅(せきじん)に応ずるように、全ての風が緋色の煌めきに染まっていく。巻き起こした突風に、ラジャスが堪らず後退した。



「ぬ、うう……これは」



 風を厭って顔を腕で守るように覆うラジャス。そんな魔族に剣を向け、そして心奮い立たせんと言い放つ。



「ラジャス。貴様もその眼でよく見るがいい。これが貴様ら魔族を滅する力。女神の臣子たる精霊の力だ」



「何が滅する力だ! 己が身の滅びをを恐れ、逃げ出した小娘がぁあああ!」



「――黙れ……。私はもう逃げない。私が私のままであるために! 何からも、誰からも、この運命からも!」



「小娘が! ほざけぇええええええ!」



 絶叫と共に向かってくるラジャスに大剣と赤迅を向ける。強壮に張り詰めたおどみまとう腕と拳を突き出てくるが、今度ばかりは弾かれはしない。斬撃に赤い豪風をまとわせて、斜め一閃に斬撃を放ち、いまこそはこちらがとばかりにラジャスの豪拳を弾き返す。



「ぐうぁ、な、なんだ!? 先ほどとはまるで……」



 違うのは当たり前だ。弱い自分は先ほど死んだ。いまここにいるのは力を得た、新しい自分にほかならない。ゆえに先ほどまで自分を圧倒していた攻撃は効かないし、貴様にそんなことを言っている暇はない――



「はぁあああ!!」



 困惑を聞く耳はないと、更に剣撃を叩き込む。もう先ほどとは逆だった。速さを上回られることはないし、手数だってこちらが多い。一撃一撃に込められた威力も推して知るべし。



 苦し紛れか。裏拳がもがくように払われる。それはなおざりに出されたぞんざいな拳だったがしかし、ラジャスには幸運なことに絶好の合間でこちらの急所を捉えていた。喰らえば無論ただでは済まない。しかしそれは、喰らえばの話。



 ――だから自身は、周囲に満ちる輝きの色と同じ、赤迅となった。



 果たして、その動きは誰にも見切れなかっただろう。影さえ引かぬ赤い風があらゆる速度を凌駕する。その速さ、まさに絶塵。あたかも瞬間移動と見まがうばかりの速度で、ラジャスの背後に直角に滑り込んだ。



「貴様、いつのまに――」



 気が付いて振り返った時にはすでに遅し。実体化し終えると共に繰り出した振り下ろしの斬撃が、ラジャスの胸を正しく捉えた。



「ぐう、うがぁああああああ!」



 切り裂かれるラジャスの岩盤の如き胸板。致命傷にはならぬ深さであったが、その傷口からは自身を苦しめた魔族の力の源たるおどみが、蒸気のように噴き出していった。



 これが、好機――



「波山ッ!!」

(ガラ・ヴァルナ―ッ!!)



 大剣を頭上で旋回させ、通常の踏み込みを大幅に超える一足を出し、その勢いと共にありったけの力を込めて、雲耀さながらの一撃を放つ。己の体勢が地を伏すかと見まごうばかりに低くなったと同時に、周辺一帯に満ちた赤迅がその斬撃に倣うように巨大な斬撃と変わり、大地を、そして天を引き裂いていった。



 そして、おどみに包まれたラジャスに当たった――が。



「しぶとい……」



 波山を受けても、ラジャスはまだ健在だった。身体中を斬り裂かれ、至る所から闇色の蒸気を噴き出してはいるが、四肢を繋ぎ止め、覚束なくはあるが確かに立っている。スイメイの攻撃に加えさらに自分の攻めに晒されたのに、この魔族はどれほど頑健なのか。



「くっ……!!」



 討ちあぐね、顔を焦りに歪める中、突然ラジャスが大きく後退する。

 何を講じるつもりかと身体を強張らせていると、その大きな身体が翻った。

 まさか、この後に及んで撤退するというのか。



「な――ま、待て!!」



「……勝負は預けたぞ。ノーシアスの剣士」



 このままでは不利と判断したのだろう。忌々しそうにそう吐き捨てて、ラジャスは離脱を試みる。まだ余力を残していたか、夜空に向かって飛び上がった姿はみるみる内に遠ざかっていった。



「はぁああああああ!」



 その背ごと叩き斬らんと、もう一度ラジャスに向かって波山を撃つ。しかし赤い風は届かない。赤迅の及ばぬ場所では距離を稼ぐ毎に減衰して、終ぞただの風へと変わり消えた。


 ――討ち漏らした。あの距離ではもうどんな手を講じようと届かない。ラジャスのように空を駆けることでもできれば話は別だが、自身にそんな力はない。



 ゆえに、ここまでだった。彼にここまでしてもらったのに、助けてもらったのに、倒すべき敵を倒さねばならない場所で、不様に取り逃がしてしまうとは。



「くそ……」



 決着は持越しか。納得がいかない。ここに来てこんな後味の悪い終わり方とは。あと一歩、あと一歩だったのに。もう少しだけ、あとほんの少しだけ自分が奴を上回れていたら。もしかしたら。



 ――だが、それが起こったのは、失意に唇を噛み締めるそんな時だった。



 不意に後ろから、魔力が高まる気配。いや、高まるなどという生温い表現では能わない。これは魔力が爆発的に増大する時の強烈な波動。それを起こしているのは無論――



「す、スイメイくん……?」



 この少年の魔力には底がないのか。魔族の大軍の中を駆け抜け、ラジャスの力を防いで、奴と戦って、その上まだその身に宿した力が尽きぬのか。


 彼はそのまま、力を漲らせたまま歩いてくる。ゆっくりと、鷹揚に。悠然と闊歩するように。やがて、自身の横に並び立った。



 そして響き渡る、魔術師の声。



「Abreq ad habra……」

(死よ、汝は我が雷が前に滅びん……)



       ☆



 ……赤い煌めきを帯びた巨大な太刀風が、背後でただの風へと成り果てる。危ないところであった。まさかノーシアスの剣士が、あの合間で立ち直ってしまうとは。いや、そればかりか、以前をはるかに超える力を得てしまうとは。何があったのかは知れぬが、全てあの魔法使いのせいにほかならない。


 ゆえに、撤退の憂き目を見せられたことに歯噛みする。



「この屈辱忘れぬぞ。覚えておけ人間共。この傷が癒えた時には必ず借りを返しにいくからな……」



 そんな熱を上げる怒りにとらわれながら、ラジャスはいまいる場所よりもさらに高い場所を見上げる。



「……この傷で雷雲に突っ込むのは、危険だが、やむなしか」



 見据えたのは、これから自身が行くべき退路。

 このまま低空を飛んでいれば、もしかすれば追撃があるやもしれぬ。相対的な距離を鑑みればありえないことだろうとは思うが、いまはあの逆転劇のあと。慎重になるに越したことはないし、雲の中を通れば確実に行方を眩ませられる。


 忌々しいことだが、あの女の抵抗に遭いかなりの傷を負ってしまった。この身体で雷雲に飛び込めばただでは済まないだろう。だが、背に腹は変えられない。このまま無事に戻るには、この方法しか残されていない。



 ――そう、それはそんな風に、雷に憂いを見出したそんな時だった。



「な……?」



 それに気付いたのは、ちょうど天を見上げたその時。

 全く予想だにしていない事態に、頭の中が困惑で満たされる。そう――



 雷雲がない。空のどこにも。



「――――!?」



 不意に舞い降りた驚愕に混乱し、辺りを見回す。

 あるべきはずのものがそこにない。雷を孕む黒雲が。けたたましかった雷が。先ほどまで、あったはずなのに。見間違いかと目を凝らして見ても、中天に雷雲はなく、ただ雲に星明かりを遮られただけの闇空があるのみだった。


 先ほどから、確かに辺りに雷鳴が鳴り響いていたはずだ。戦いの最中も、うるさいほどにけたたましく。

 ならば、一体これはどういうことなのか。何故、雷雲もないのに雷音が鳴り響いていたのか。



 そこで、ふと何気なく下を見た。



「なっ…………!?」



 そして、眼下に広がったその惨状に、声も言葉も絶えて消え果てた。

 視線の先。そこに呼吸も忘れてしまうような光景があったがゆえに。


 平原があったろう山裾と森の間。そこに集めておいたはずの軍勢はなく、代わりにそこにあったのは消えることなく燃え続ける炎と、隆起、陥没したいびつな大地。永久に溶けない氷の中に閉じ込められたもの、酸と毒で敷かれたおぞましき腐敗の海にいつまでも煮溶かされるもの、果ては、地面に残る眷属らしきものの影。何よりも驚くべきは、その残骸でさえ部下の総数と釣り合っていないこと。

 引き連れてきた軍勢の大半が、その場から嘘のように消え去ってしまっている。



「な、何が起こったというのだ……」



 こんなこと起こり得るはずがない。たとえ人間が軍隊を差し向けたのだとしても、こんな惨状は絶対に作り出せないはずだ。それはノーシアスでの戦いで良く知っている。だが、いまこうしてこの惨状がここにあるということは、間違いなくこの惨状を作り出した張本人がいるはずで――。


 あるとすれば、そう。



 ――立ちはだかったものは振り払って来ただけのこと。



 耳元でささやかれたように、いま確かに回帰する男の言葉。その言葉が、眼下の惨状に繋がっていく。

 そう、あの男があの場に来た時、その前には必ず部下がその行く手を阻んだはずだ。ならばあの男が言った「立ちはだかったもの」とは、あの男の前にいてあの男の進みを阻んだもの、部下ということになる。

 となれば、どういうことか。打ち破るごとに突き進んでいくあの男に、部下たちが次々と押し寄せていった場景がありありと目に浮かぶ。



 ならばあの男は、立ちはだかった全てのものを、勇者を倒すために引き連れてきた軍勢を、ただ一人きりで振り払ってきたというのか――



「バカな、たった一人で一万を超える軍勢を滅ぼしてきただと……」



 その答えにたどり着いて、背筋を戦慄にうそ寒くする最中、耳をつんざく轟音が背後から鳴り響いた。



 ありえない。雷雲はここにはないはずなのに。ならば何故、そんな音が後ろから響いて来るのか。



「まさか……」



 そう、よくよく考えれば、己はここに来てから雷雲を一度も見ていなかった。雷の音が鳴っていたからあると思っていただけ。ゆえに、そもそも雷雲などどこにもなかったのだとすれば。



「まさか……」



 あの雷や轟音が全て、他の要因で発せられたものだとすれば。



「まさか……!」



 そう、後ろから響くその音は、先ほどからうるさくて敵わなかった雷鳴と、まったく同じ音。だから――


 振り向くとそこには、先ほどからの疑問の答えがあった。


 大地を揺さぶる轟音と共に、青白い真冬の雷が空へ逆さに落ちるように、闇空の黒を脅かしながら円と図形と文字を描いていく。

 やがて出来上がる巨大な――いや、遠大な魔法陣。円の途中途中に中規模の魔法陣を配して描かれるそれは、まさに強大な魔術を撃ち出すに相応しい規模のもの。



 そして、その中心に立つのはあの男。自身に魔法使いと名乗ったあの人間だった。



 ……雷が大地を砕き、風に甲走った絶叫を上げさせて、全てのものを無作為に破壊していく。男を中心に巻き起こる力が砂も礫も吹き飛ばして、炭に変えて消し去った。



 余波だ。あれは余波。魔法を構成する力、事象現象を無理矢理に引き起こす力が強すぎて、あんな余剰や反発力が周囲の物を際限なく蹂躙しているのだ。雷が周辺を蹂躙しているのも、嵐の中心さながらの突風が局地的に巻き起こっているのも、全てはこのあとに引き起こされるだろう現象の、ほんのささやかな前触れにすぎないのだ。



「あ、あれで前兆だと……? そんな、バカな――」



 ――――そう、魔将ラジャスは知るよしもないだろう。これが、アブラ=メリン・アブラハムの魔術系統。俗に、聖なる魔術、神聖魔術と呼ばれる、聖守護天使の力を借りて悪魔を撃退、退散、使役するために作られたものの中で最も有名で最も強い力を持つ魔術――汝の雷を死に浴びせよ(アブラク・アド・ハブラ)。アブラカダブラと、世界で最も広く知られた呪文これはその原形を現代魔術理論によって攻性魔術へと転化した。八鍵水明が対悪魔、対邪霊用魔術の最強魔術。



 陽炎の中から顕現するかのように、男の背後から女の像が現れる。人間の女をかたどったはずのそれには生命的な根源は一切なく、白と灰の中間にあるその無機質すぎる色に染まった彫刻さながら。神々しさもない。禍々しさもない。しかし、どうしておぞましいほどの力がある。



「ァアアアアアアアアアアアアアア……」



 その女の彫像がばきりばきりと口を開き、いま一際甲高い叫びを放って、雷の柱を天から呼んだ。



 ……あんなのは聞いていない。あんな人間など。こんなのは知らない力。未知の力。あんな力この世界の人間が持ちうるものではないし、たとえあの男が異世界から呼び出された召喚の勇者だったとしても、それはない。勇者とは女神の力を与って召喚される存在だ。決してあんな力は備えない。

 そう、勇者とは常人をはるかに上回る力と、エレメントの絶大な加護を受けて召喚されるもの。しかしあの男にはそれがない。だからありえない。あれはエレメントの加護を持たない魔法。操れぬはずの事象を操り、現象を束ね、女神の作り出した世界を意のままに改竄している。いま目の前にあるあの雷も、何よりも神聖で、どこまでもおぞましい。そんな力、そんな技の存在など聞いていない。そんなありえない力を操る人間はこの世には存在しない。絶対に。では、あの男は、一体。



 ――魔術師(・・・)、八鍵水明。


                        

「魔術師……だと? なんだそれは!? あの男は、魔法使いではないのか!?」



 周囲に幾千と分かれ散った雷が、けたたましい音と残響の尾を引いて、集積された魔法陣の中心点へ集って行く。やまぬ彫像の絶叫。地平の彼方から空の涯まであまねく世界を埋め尽くす青ざめた明滅。視線の先には同じように驚愕に心とらわれた女の顔と、鋼の意思を映す憎き男の真紅の瞳。そして、逃れられない死の気配――



「くそぉおおおおおおおおおお!!」



 ――さあ、人の嘆きを蜜と啜る悪意よ。我ら結社の魔術師が目指すいと高き望みの前に、朽ちて消えゆけ。



 そんな言葉が紡がれるのが、男の口元に確かに見えた。

 直後、魔法陣の中心に指先が触れる。



 耳を聾する雷鳴が、(はや)く走ったその刹那、同心円を描く魔法陣の光芒にたがねられた雷の光条その数千が、ただ一つの巨大な御柱となって視界の全てを埋め尽くす。



 そこに、自身たちが奉じる邪神の闇は欠片さえ存在しない。決して、どこにも。



 やがて魔将ラジャスは己が発した怨嗟の絶叫と共に、聖なる雷の作り出す輝きの奔流の前に、なすすべなく飲み込まれていったのだった。





近日中と書きましたが、遅くなって申し訳ございません。


あとはエピローグを残すのみなので、感想欄、ここで解放いたします。


あと、書き忘れていましたが、異世界魔法は遅れてる!第一巻は店舗特典があります。SSです。

アニメイト様、とらのあな様、ゲーマーズ様、書泉様、メロンブックス様です。

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