秘技、十数億を殺すキック!!
一回戦で破壊された舞台の修復も終わり、次いで第二試合。
中二力全開の問題児、イオ・クザミに対するのは、十二優傑の一人であるスレイン・ゾヌーフだった。
ゾヌーフは年若い青年で、見てくれはアールスと同じかそれ以上の歳の頃。錆が交じった赤い髪を撫でつけ、端正な顔立ちをしているが、表情に浮かんだ薄ら笑いのせいで爽やかさが減じており、軽薄そうな印象がある。
どうやら前回のアールスに引き続き彼も魔法使いらしく、片手に短めの魔杖を携えていた。
二人は舞台に上がると、特に礼もなく歩み寄る。
しかして試合前の舌戦で先手を取ったのは、イオ・クザミの方だった。
彼女はスレインに後れを取らないほどの薄ら笑いを浮かべ、訊ねる。
「さて、貴様が我の相手か? これはまた随分と貧相な相手ではないか? これが我の相手だとは、舐めてくれたものよ」
「勇者の連れだか何だか知らねぇけどよ、お前調子に乗り過ぎなんじゃないのか? あんまりデカいこと言ってると、負けたときに恥ずかしいぜ?」
イオ・クザミの見下すような物言いに、スレインは嘲笑で返答する。さすがに軽口を叩かれたくらいでは、怒らない程度の分別がある手合いらしい。
挑発を返されたイオ・クザミは、しかし気にした様子もなく。
「我が負けるだと? いや、それはない。この舞台で敗北の土の味を口いっぱいに味わうのは、貴様の方なのだからな」
「随分な自信じゃねぇか……」
「自信? これは自信ではない。すでに決定されたことだ。偶然ではなく運命というやつなのだ」
「よくもまあそこまで思い上がったことが言えるもんだ。お前、俺を誰だと思ってやがる? 十二優傑のスレイン様だぞ?」
イオ・クザミの発言をただの増長としか受け取れないスレインは、徐々に苛立ちを高めているのか、軽口の中に険が混じり始める。そして自らの地位を笠に着て威張り始めるのだが、
「そんなもの知るか。貴様など頭皮後退男で十分だ」
「こっ、このクソアマが! おかしな襟巻付けてるくせに俺の自慢の髪型を馬鹿にしやがって……」
「おい、貴様いまこの愛のヒーローマフラーを侮辱したな? ――いいだろう。貴様には特別に地獄を見せてやろうではないか」
どちらも自らを象徴するものを馬鹿にされ、両者とも火がついたのか。怒りの炎を燃やし始める。何とも低レベルな争いのように見えるが。だが一方で周囲の観客たちはわかりやすい諍いが興奮を煽ったのか大盛り上がりで、ざわめきの他に不穏当な声援を投げていた。
十二優傑を貶めているため、イオ・クザミに対しブーイングが飛ぶのは当然だろう。だが、ここが帝国の陣地にもかかわらず自国の味方に「死ね」だの「くたばれ」だの言われているスレインは、その人徳がゆえのものか。
「ぶっ殺してやるよ」
「貴様の罪はその無知と、我のお気に入りを侮辱したことだ。死を以て償うがいい」
そんな幼稚で物騒なやり取りのあと、二人の試合は開始された。
……されたのだが、すぐさま距離を開けたスレインとは違い、イオ・クザミはまず距離を取ると余裕を見せたいのか、腕を組んで顔に不気味な笑みを見せた。動かない。詠唱も始めない。それゆえ、この戦いでも先手を取ったのは十二優傑側だった。
「――地よ! 其が隆起の連なりによって、我が敵の足もとを脅かせ! ランズグランド!」
スレインの放った鍵言と共に地面が隆起し、それが舞台を破壊しながらイオ・クザミの方に延びて行く。しかしイオ・クザミは回避をしようとはせず、まるで衝突するのを待っているかのように佇んだまま。そして、あわや巻き込まれてしまうかというそのみぎりに、
「……ふん。我に地術を使うとは愚かしいことこの上ないな」
イオ・クザミはひどくつまらなさそうな呟きを口にしたあと、灰色の舞台を足で踏み鳴らす。水分の抜けた小気味良い音が鼓膜を叩くと、地面の隆起は爆裂と共に収まった。
足踏みだけで魔法を破られたスレインは一瞬驚いたような表情を見せるが、すぐさま表情を引き締め、
「一応は口だけじゃねぇってことかよ」
「当然だ。我の名前はイオ・クザミ。世界の全てを掌握する絶対なる存在、九天聖王なるぞ」
やはりそれは言わなければならないことらしい。一方観衆の前で高らかに宣言するイオ・クザミを見て、水明と黎二は頭を抱える。救いなのは、ここがファンタジーな世界ゆえ、多少ぶっとんだことを言っても白い目で見られるようなことがないということだが。
「で? その絶対なる存在とやらは、腕を組んでボケっと突っ立てるのが仕事なのか?」
「言ったな。いいだろう。貴様にはいまから特別に変わった技を使ってやろうではないか」
動かないことを揶揄されたイオ・クザミは、興が乗ったのか、また不気味に笑い始める。しかし、彼女はそう言ったにもかかわらず、腕を組んだまま動かない。ばかりか、魔力さえ動かさない。
これでは何かを起こせるはずもないだろうと誰もが思ったその瞬間、石の舞台の表面が、何の予兆もなく弾けた。それはまるで、見えない何かが強い力を以て舞台を激しく叩いているかのように。
その様子を見たスレインは、失望の表情を浮かべる。
「あぁ? もしかしてこれがお前の技かよ? 単に音を鳴らしてるだけじゃねぇか。こんなハッタリのどこが技なんだよ?」
「ハッタリか。ふ――これがハッタリかどうかは己が身で試してみるがいい。それ」
「あ――?」
音が鳴り始めたのと同じく、やはり前触れなくことは起こった。イオ・クザミが口にした瞬間、スレインはその横っ面を見えない何かに激しく打ち据えられる。
「ぐはっ――」
舞台上に響く、パンッという乾いた音。頬への殴打は知覚できない一撃だったためか、スレインはその勢いで軽く吹き飛んでしまった。
スレインはすぐに起き上って、混乱と衝撃を逃がすかのように頭を振る。
「て、てんめぇ、いま一体何を……」
「いまのか? いまのは目に見えぬ我の僕たちの打擲よ」
「見えぬ僕たち……だと?」
「そうよ。いまこの舞台の上にいるのは我が使役する忠実なる不可視の僕。我が意志に応じ、いついかなる場所でも我が命に応え戦うものだ。ほれ、一撃だけでは終わらんぞ?」
「ごっ――!」
イオ・クザミの言葉と共に、スレインに向かって見えない打擲が続けて繰り出される。今度は後頭部を強かに打たれ、仰け反った。感知することができないため、一方的に殴られている始末。いまは頭を守るためか腕で顔を覆ってガードを作り、身体を縮こめている。
スレインもそうだが、観客たちも当然困惑の表情を浮かべている。魔法ではなく、さりとて魔力を動かすことなく現象が起こっているのだ。わからないのも無理はない。そしてそれは、水明の隣にいるフェルメニアにもそうで。
「目に見えない僕? いえ、でもそんなものはどこにも……」
見つけられない。霊的な透視しても、僕なる存在はおろかその痕跡すらも視認できないためだろう。結局自分では答えを出せないため、隣にいる水明に訊ねる。
「あの、スイメイ殿? イオ・クザミ殿が使っている技は一体なんなのでしょうか……」
フェルメニアが横を向くと、水明はイオ・クザミに対しまるで何者かを見定めんとするかのような、細めた目を向けていた。
そして、
「……制御型自発念力」
「サイコハラジック・コントロール……ですか?」
「そうだ。あれは心霊主義系の術で、識閾下――つまり人間の無意識によって周囲に影響を及ぼす現象を術として再構築したものだ」
「え、ええと……」
「ポルタ―ガイスト。この世界にも、突然家が軋み出したり、家の中の物が勝手に動いたりとかいう現象は起こるよな?」
「古い館――幽霊屋敷や放棄された城で起こるようなものですか? それでしたら、時折耳にします」
この世界でも、騒霊現象はあるらしい。現代社会のように情報網が発達していないため、さほど知られているものではないようだが。
……他方、水明とフェルメニアが話し始めたのを見てレフィールが近づいてきていたが、幽霊屋敷という言葉を聞いたせいか肩を一度だけびくりと震わせ、回れ右して引き返していったのは、とにもかくにも。
「通常、RSPK、サイコハラジックおよびサイコハラジック特殊体質と呼ばれるものには、ラップ音やポルターガイストの一部が挙げられる。精霊等の干渉が働いた事例を除き、それらは霊的な感受性の強い人間が、周囲にある残留思念やエーテルに影響されたうえで、術者本人の霊的な力の暴走によって引き起こすものとされ、いまイオ・クザミのヤツが扱っているこれは無意識に引き起こしてしまうそれらの現象を、意識的に操っているものであると定義づけられる」
――LFPK、制御型自発念力。簡潔に述べると、ポルターガイスト等々の現象を、念じることで指令を与え、操る術である。通常の念動力との違いは、ポルターガイストのように周囲の残留思念やエーテルの影響を受けているため、念動力とは異なる現象が伴うという点が挙げられる。動きは独立しているが念動力の一種であるため、単なる霊視ではとらえられず、さりとて周囲の残留思念やエネルギーの影響があるため、形状という型枠であるしがらみが発生し、形があるという矛盾が発生している。
それゆえ、イオ・クザミは不可視の僕だと言っているのだろう。
これはフレデリック・マイヤーズが提唱したもので、当時のオカルティストたちにはないものとして扱われたという。だが、これを神智学の重鎮、ヘレナ・ブラヴァッキーがすでに術として完成させていたというのは、皮肉な話なのかもしれない。彼女はこれを自在に操り、人々を驚かせ、そして霊魂を操り、幽霊を使役するこれこそが心霊主義の体現だと称したのだといわれている。実際には、幽霊を操る術などではではないのだが。
水明の説明を聞いたフェルメニアが、怪訝な表情を浮かべ、
「効果のほどは疑いようもありませんが、回りくどい術に思えますね。これなら自分の念のみで起こした方が術として洗練されているのでは?」
「確かに念動力でも同じことができる。だが念動力とは違い、本人が形状を捉えているため、術の強度が少しばかり高い――ハッ、なるほどそういうことか! それでわびさびなのかよ!」
水明は何事かに気が付いたのか、己の推測が当たりであると確信しているかのように、興奮した様子で叫ぶ。
「スイメイ殿?」
「さっきあいつは、イオ・クザミのヤツはリリアナの戦いを意識しているような発言をしていたな? わびさび――質素で地味なものの味わいと奥行きを、見せてやるんだって。あの術は普通の念動力と違い、形を持っている。そして術者から独立して動いているため、使い魔と言えなくもない。要はあいつは、使い魔の使い方を対比して見せてるのさ」
「あ――」
そのときはただの妄言にしか聞こえなかったが、意外に味な真似をしている。
そしてそんな水明の気付きに呼応するように、イオ・クザミは見返って薄ら笑いを浮かべた。してやったりというような斜に構えた笑みは癇に障るが、確かに言った通りであるため、一本取られたと言うほかない。
すると、フェルメニアが、むむむ……と唸り出す。
「対抗しにくい攻撃ですね。魔力の動きがなく、見えないとなると対策が取りにくい」
「いや、おおもとのポルターガイストが自然と起こりやすいものである以上、それを術化しただけのこの技の位格はさほど高くはない。防御さえしっかりすれば、恐れるようなものじゃないんだ」
「では攻撃性は、それほどでもないと?」
「もともとが騒々しくするだけのモンだからな」
ゆえに、スレインがこれに対しハッタリと言ったのは、ある意味絶妙だった。この術には確かに意外性はあるが、さほど手をかけずとも防御が可能であるため、いわゆる不意打ち系の、二度目は対策の利く技となる。
「――スレイン! 何をしておるか!」
さすがのゴーガンも第一試合でアールスが敗れているためか、一方的に打ち据えられるだけ展開には焦りを抱かざるを得なかったようで、顔を真っ赤にさせて怒鳴り声を飛ばす。
しかしてゴーガンの怒号は効果的だった。
スレインは身体を強張らせたかと思うと、詠唱を開始。
「――風よ! 汝は我が障壁となりて守りとならん! ウォールエアード!」
鍵言が放たれるとすぐさまスレインの周りに風の防壁が築かれる。
さすがにサイコハラジックも魔法の障壁は突破できず、打擲音がなくなった。
イオ・クザミはサイコハラジック・コントロールが防がれたのを見て、念を散らす。
「さすがにこれくらいは止めるか」
「やってくれたじゃねぇかこのクソアマ……」
「まあ最低でもこうでなくては我も困るさ。戦う相手が第三艦橋のように脆くては面白みにも盛り上がりにも欠けるからな」
「この、さっきからわけのわからねぇことをほざきやがって! てめぇ頭おかしいんじゃねぇのか!?」
スレインは一方的に殴られ続けたせいか、かなり苛立っているらしい。イオ・クザミに怒鳴り散らすが、しかし彼女は気にした風もなく。
「我の高尚な言葉が理解出来んとは、頭皮だけでなく中身まで後退していると見える」
イオ・クザミの絶妙な切り返しで、会場は爆笑の渦に包まれた。
そんなやり取りを見守っていると、ふいに黎二が近づいてくる。
「イオ・クザミさん。ここまでは大丈夫そうだね」
「ああ。ここまではな」
水明の含みのある言い方に、黎二も同意するように困った顔を見せる。まだ終わっていないため、何が起こるかわからないのだ。油断はできない。おかしな行為に及べば、自分たちが止めなければならないのだから。
一方、舞台の反対側ではゴーガンがスレインに向かって叫んでいた。
「よいかスレイン! 負けてはならんぞ! これ以上の敗北は十二優傑の名誉にかかわる!」
「わかっております!」
筆頭の叱咤は効果覿面だったか、スレインの表情にわずか焦りが浮かぶ。
ゴーガンはイオ・クザミとは大天幕での衝突があるため、余計に意識しているのだろう。ゴーガンはスレインを怒鳴りつけたあと、じっとりと粘り気のある睨み目をイオ・クザミへと送った。
スレインは叱咤によって冷静さが深まったか、軽口も苛立ちも胸の内にしまい込み、イオ・クザミの様子を窺っている。
そんな中、イオ・クザミも今度は魔法行使に及ぶのか、先んじて詠唱を始め、
「――炎よ風よ。その慈悲なき炎熱によって空を冒し、息を燃やせ。我が前に立ちはだかる者を苦しみの喘ぎに沈めよ。灼け落ちよ吐息!」
イオ・クザミの鍵言と共に、舞台の上の空気が熱を上げ、渦を巻き始める。空気を高温にする魔法なのか。吸い込めば、ひとたまりもない。
「――風よ! 汝は我が意に従いて吹きすさび、我を脅かす氷雨炎熱を彼方へと退けよ! コンティニュアムウィンド!」
しかしてスレインはイオ・クザミの対し、風の魔法で抵抗する。自分の周囲から高温の空気を排除して身を守ろうと言うのだろう。その思惑は功を奏し、舞台の上は二種の空気が拮抗する状態となった。
……どちらの魔法も魔力を込めれば込めるだけ続くものなのか、両者とも魔力を注ぎ込み続けており、持久力対決になっている。だが当然、人間が霊的な存在である精霊に魔力量で敵うはずもない。
先に音を上げ、息を乱したのはスレインだった。
「バカな……お前、どんだけ魔力を」
「なんだ。本当に口ほどでもないではないか。こんな程度で音を上げてしまうとは。ふむ、今世の人の子はこれほどまでに衰えているというのか……」
イオ・クザミは何故か落胆した様子で何やらを呟く。そして、炎と風の魔法を解いた。
「てめぇ……」
スレインの眼差しがひどく険しくなる。魔法を解いたことを情けと思ったか。しかしイオ・クザミはそんな彼のことを斟酌するわけでもなく、
「――さて、そろそろ決めてやろうではないか。どうやら貴様も魔力の使い過ぎがたたって、もう動くのも辛いようだしな」
「くっ……」
イオ・クザミは不気味な笑いを響かせながら、スレインに対しとどめを宣告する。
「そう、今宵我がお前を因果の地平に還す技それは……十数億を殺すキックだ」
「じゅ、十数億を殺す蹴り、だと……」
「そうだ。我は九天聖王イオ・クザミ。瞬きの合間に十数億程度の数を殺害するなど、造作もないことだ」
舞台上で、そんな過激で過大なことを口にしたイオ・クザミ。一方それを聞いていた水明は、隣にいる黎二に、
「だそうですよ、黎二さん」
「……うーん、どういうことなんだろうね。足がすごく増えるとかは……ないよねぇ」
イオ・クザミの言葉から、なげやりな推測をする黎二。まさか足を増やして蹴るなどあり得ないだろうが、そのあり得ないがあり得るかもしれないのがイオ・クザミの怖いところである。
「我が不可視の僕たちよ! いまここに盛大なる宴を催すがよい!」
しかしてイオ・クザミは、サイコハラジック・コントロールを用いて、舞台の上を賑やかす。そしてその上で、魔力の使い過ぎで動けなくなったスレインに近付き――
「頭皮も中身も後退男よ! 我が蹴撃でシュバルツシルト面を垣間見るがいい! くらえ! 十数億を殺すキィイイイイック!」
持ち上げた足を屈伸させ、ひゅんひゅんとフェイントが入り交じるそれに、スレインは体裁きを以てかわそうとするが、しかしイオ・クザミの蹴撃はかわせない。
その蹴りの向かう先、狙いはそう――スレインの股間だった。
「そこはらめぇえええええええええええええ!」
スレインの悲痛な絶叫が響く。イオ・クザミのヒールが男性の象徴部分にクリーンヒットし、彼は悶絶。泡を噴いてその場に倒れ込んだ。
試合ではあるまじき攻撃だが、観客は大いに盛り上がっている。股間を手で押さえる者もいるが「ざまぁ見ろ」だの「よくやった」だの言葉が飛び交い、一部に「うらやましい……」「俺もされたい」などの倒錯的な発言を口にする連中もいる始末。
そんな中、黎二が不思議そうに小首を傾げる。
「でも、なんでそれで十数億?」
「あれだ黎二、きっと精子の数だ」
「あっ……なんてしょうもない技なんだ……」
十数億の意味するところを聞かされた黎二は、微妙そうな息を吐く。一方、答えにいち早く気付いた水明は不意に疑問を抱き、眉をひそめた。
「いや、って言うかタマの部分には十数億もないはずだろ? 正確には別のところじゃなかったか?」
「あれだよ。きっと気分なんだよ。堪えきれないパッションが暴走して、口から迸ったんだよ、たぶん」
「あー、さすがよくわかってらっしゃる」
「やめて同類みたいに聞こえるから」
「……なあ、俺たちも今更じゃね」
「言わないで。わかってるから」
そう言って、顔を両手で覆う黎二。
結局第二回戦は、イオ・クザミの勝利と高笑いで終息したのだった。