リリアナ危機一髪
連合北での魔族との戦いは結局、魔族の撤退という形でいまひとまずの終わりを迎えた。
この戦いでは連合諸国も少なからぬ損害を受け、各国の軍隊も再編のため一時撤退。両者痛み分けという形で決着と相成った。
その一方、今回の戦いの最中に、魔族以外の者から初美が狙われるという事件が起こり、それを伝え聞いたミアーゼン国王は初美たちに帰還の要請を出し、引き続き首都の警備体制を強化した。
水明や勇者である初美を圧倒する相手に対し、どれほど兵を増しても焼け石に水だろうが、彼らに出来る防衛策と言えばそれしかない。ミアーゼン領内の各地から兵を集め、やりすぎだと言うほどの警邏が毎日街の中を巡回している。
それとは別に宮廷は水明に対しても警戒していたようだが、いまはそれどころではないと、半ば無視を決め込む形で放置しているという次第であった。
先に戦場を離れた水明たちに遅れること数日。魔族との戦いに一区切りつき、戦場から戻ってきた朽葉初美はこの日、一人でとある場所を訪れていた。
その場所とは、宵闇亭連合支部の宿舎。水明たちが間借りしている建物の中だった。
初美は玄関広間に設えられた両階段を昇り、革の張られた手すりに沿ってゲストルームへと向かう。
やがて目的の部屋の前に到着すると、木製のドアを叩いた。
「あの、ごめんください」
玄関前でもないのにごめんくださいも変な話だが、人を訊ねるゆえなんとなく口にした初美。やがてして、静かな足音と共にドアの向こうから女性の声が通ってきた。
それと同時にドアが開く。
「はい。どちらさまでしょう?」
「初美です、ええと、その声は確か、スティングレイさん……でしたよね?」
「勇者殿でしたか。ご無沙汰……というほどでもないですね」
扉を開け、初美の前に現れたのは、フェルメニア・スティングレイ。彼女は記憶を手繰るような調子で訊ねた初美に、穏やかな笑顔を見せる。
一転、フェルメニアはその表情をさらに凛と引き締める。この世界の立場有る人間のそれと同じような態度を以て、胸に手を当てて礼を取った。
「ようこそ勇者殿。歓迎いたします」
「え、あ、はい。よろしくお願いします……」
改まった対応に、わずかばかり戸惑った初美だが、すぐにフェルメニアの相好が崩れたのを見て、表情を和らげる。
「それはそうと、もしやお一人なのですか? 護衛もつけずに?」
「はい。一人で抜け出してきました。誰か付いて来たら、それはそれで大変そうですし」
そう言って初美が浮かべたのは苦笑だった。失礼な話かもしれないが、それに尽きるだろう。
宮殿の人間からは、初美が水明のところに行くのをあまり良く思われていない。街に着いてから何度か訊ねようとしたのだが、国王や大臣たちから、先日狙われた件のせいで警備兵に勇者を宮殿に留めるよう通達がなされているらしく、隙を見て抜け出すほかなかったのだ。
皮肉な話だが、現在どこよりも安全なのはここと思っているのだが――それはともかくとして。
「立ち話もなんですし、どうぞ」
フェルメニアはそう言ってドアを開き、自らの身体を押さえにして初美に道を明け渡す。
「やっと気を抜けるみたい。宮殿も外もどこもかしこも警備警備警備でどこからあんなに出て来たのやら……」
「それは心中お察しします。それで勇者殿、今日はどうされましたか?」
「この前助けに来てくれたお礼をと思って。ギルドマスターから、いまならゲストルームにいるだろうって聞いて来たんです」
「そうでしたか。スイメイ殿ならいまは部屋で資料の整理をしています。待っていれば、間もなくいらっしゃると思いますよ?」
「じゃあ少し待たせてもらいます」
初美はフェルメニアに案内され、ゲストルームの椅子に腰かける。どうやら集まる予定でもあったようで、すぐに彼女から異世界のお茶が用意された。
初美が一口すすると、不意にドアの開く音が聞こえた。
「おっと、ハツミ嬢。いらしていたのか」
現れたのは、レフィールだった。思わぬ来客に、意外そうな表情を見せている。
そんな彼女に、初美は席から立って挨拶をした。
「こんにちは。確かレフィールさんでしたね」
レフィールが「ええ」と朗らかな表情で頷くと、フェルメニアが言う。
「今日はこの前のお礼を述べにいらしたそうですよ」
「それはご丁寧に。わざわざのお越し痛み入る」
「いえ。この前も言いましたが、あらためて救援ありがとうございます。おかげで無事に帰ってくることができました」
日本人の気風よろしく、頭を下げて謝意を示すと、それを過分な謝罪と受け取ってしまったらしいフェルメニアがとんでもないと言うように手を振った。
「いいのです。我らはスイメイ殿にお力添えをしたまでのこと。お礼を申されるならスイメイ殿にお願いします」
「ああ。スイメイくんが行くと言わなければ、あの救援はなかっただろうからな。その礼はスイメイくんに言うのが筋だろう。我らのことは気にしないで欲しい」
二人共に遠慮の言葉。そんな彼女たちの態度から、初美はなんとなくだが、壁があるように感じられた。ほとんど初対面ゆえしょうがないことだが。
初美がお茶をすすりつつそんな感想を抱いていると、レフィールが訊ねてくる。
「その……ハツミ嬢、少しよろしか?」
「はい? なんですか?」
「スイメイくんとは、その……どういった間柄なんだ?」
「あいつとは従妹らしいんです。八鍵から聞いていませんか?」
「それは、確かに訊いているんだがね……」
「どうかされました?」
「あ、うむ……」
レフィールは目を気まずそうに逸らし、どこか訊ねにくそうにしている。回りくどい訊ねで何かを気付かせようとしたのか言わせようとしたのかはわからないが、初美が察せず不思議そうな顔をしていると、今度は意を決したというように表情を引き締めた。
「……うん、まどろっこしいのはダメだな。ハツミ嬢、率直にお伺いしたい。君はスイメイくんのことをどう思っているのだろうか?」
「ど、どうって」
その問いに、胸を突かれたようにどきりとする初美。どう思っていると訊ねられたため、そういうことを思い浮かべてしまった。
そしてそれは当たりだったらしく、レフィールの方も訊くのが恥ずかしそうに顔を赤くさせる。
「そ、そのだな……いわゆる男女として好きか嫌いかだが……」
そう言ってレフィールがもじもじしていると、隣にいたフェルメニアが少しばかり呆れの滲んだため息を吐く。
「レフィールは勇者殿がスイメイ殿のことをどう思っているのか知りたいのですよ。察して上げてください」
「フェルメニア殿!!」
しれっと言って退けるフェルメニアに対し、レフィールはが叫ぶ。
しかし、初美の鈍感も極まったもので、
「ちょっと待って下さい! なんで私にそんなことを訊くんですか!?」
「だから私にとって、重要なことだからだ!」
その逼迫した叫びでようやく初美は勘付いた。これがどういった意図の問いなのかに。
彼女の気付きと同時に、レフィールも初美が水明のことをどう思っているのか、なんとなく察する。
――しかして、初美とレフィールは、
「ふーん」
「ほう」
険しい表情で見詰め合う。まるでライバルを見るような表情だった。
しかして水明が資料の整理を終え、部屋に入ってきたのはそのときだった。
やることに区切りがつき、いい気分で鼻歌を歌いながら部屋に入ると、美人二人が何故か火花を散らし合っているのを目の当たりにする。
「え……なにこれ? 何が起こってるの?」
目をパチクリさせる水明に、フェルメニアが一言。
「ご愁傷さまです」
★
――リリアナ・ザンダイクには最近『抱き付き癖』というおかしな習慣がついてしまった。
水明たちと行動するようになってから、どうにも寂しさに堪えられないようになってしまったらしく、三人の誰かに引っ付くようになったのだ。
おそらくは、人に甘えることを知ってしまったせいだろう。いままではあまり感じなかったのだが、夜一人になったときや、ふとローグに拾われる前のことを思い出すと、またそうなってしまったらどうしようと考えてしまい、ひどく辛くなってしまう。
そうなったとき、水明たちに抱き付いて、落ち込んだ心を静めるのである。
もうそのようなことをする歳ではなく、このままではいけないとも思うのだが、レフィールからいまの内しかできないから遠慮はするなと教えられ、生まれてこの方できなかった分を取り返すためここぞとばかりに抱き付いていた。
寂しさとは、ゆえないときも訪れるもの。この日も、例に漏れずそうなった。
「今日は、誰に、しましょう」
ゲストルームに向かって歩きながら、リリアナは甘える相手を考える。今日もいつも通りなら、それぞれのやるべきことが終わりゲストルームに集まって、お茶をしながらのんべんだらりとしているはずだ。
これはリリアナの中での取り決めだが、抱き付く相手はローテーションを組んでいる。誰か一人に集中してくっ付くのも迷惑だと思うので、レフィールに甘えたら次はフェルメニアに、その次はスイメイにとそれぞれの状況を見計らいつつ時間を取ってもらうというところだ。
ここ数日ほどはスイメイが黒鋼木の森から持ち帰った英傑召喚の術の情報を整理で忙しく、レフィールたちに偏っていたため、この日は彼に甘えようと思ったのだが――
「すいめー、抱っこして下さ……い?」
――ゲストルームのドアを開けて部屋に入った折、ドアの奥に見えたのは、目から火花を発して睨み合う少女二人と、それを見てやたら慄いているスイメイの姿だった。
利発なリリアナは、その状況を見て、この部屋で起こったことの全てを悟ることができた。
なれば発した声がドアの開く音にかき消されたのは、望外の幸運だったと言えよう。ただ元気よく入ってきたと勘違いしたらしい女性たちは、自分の方を向くだけで何も言わず再びにらみ合いを始め、一方針の筵とも言える剣呑な空気の中に立たされた水明はと言えば、天から助けが現れたかの如く安堵の交じった表情を向けてきた。
聞こえてくる、水明のぎこちなくも情けない声。
「り、リリアナか。どうした?」
その問いに、リリアナはそっとドアを閉め、
「何でも、ありません。戻り、ます。さよなら、です……」
「いや、待て。戻るな。さよならじゃない。ここにいてくれ。頼む」
「おかまいなく。フェルメニアと頑張ってください」
「無理だ! フェルメニアは俺側じゃないんだ! というか何か用事があったんじゃないか? なんか言ってただろ、『だ』がどうしたとか。なんて言いかけたんだ?」
水明がリリアナに食い付いているのに気付いたらしく、二人の視線が集中する。何かに勘付かれてしまったか、レフィールはともかく、いつの間にか訪れていた勇者ハツミの目がやたら怖い。
すると、
「あの子、リリアナちゃん、だっけ? いま彼女、抱っこって言ったような気がしたんだけど……」
聞こえていたのか。半眼を水明に向ける初美。勇者の耳、恐るべしである。
一方水明は抱っこに心当たりがあるため、裏返った声を上げる。
「あ! ああそれは! それは、だな……」
「ねぇあんた、まさかこんな小さな子にいかがわしいことさせてるんじゃない?」
「俺がリリアナにいかがわしことなんてさせるわけないだろうが!」
「じゃあさっきの何よ?」
「え゛? いやあの、それは……」
口ごもった水明を見る初美の目が、ギンと鋭くなる。まるで蟲でも見るような目だ。これにはリリアナも戦慄を抱かざるを得ない。だが抱っこを許してくれる水明に、決して邪な心はないのだ。彼は家族を失っているからこそ、その寂しさがどういうものかわかるのだ。それを和らげるために、くっ付いても受け入れてくれる。
だが、レフィールとの恋のさや当てを経て剣呑さが倍加してしまったこの空気では、説明し切る前にハツミが暴発して、水明が斬られてしまうだろう。
説明に窮する水明に対して、初美の手が腰の刀に伸びる。かちゃ、と金属が外れるような音が響くと、水明が「ひぃっ」とこれまで聞いたことのないような情けない声を上げた。
「ええと……」
「うむ、それはだな……」
一方、フェルメニアとレフィールの二人も助け舟を出しにくい。実際問題、そうなのだから。誤魔化しが咄嗟に出てこないらしい。
ゆえに、この現状を打破するのはリリアナしかいなかった。
いまもってスイメイに迫り、魔族にも向けたことのないような恐ろしい剣幕で圧力をかける初美。まるで魔王。そう思ったのは、リリアナだけではないだろう。魔王など見たことはないのだが、他の形容は能わないだろう。
しかしてリリアナは、そんな二人の間に割って入った。
「――勇者ハツミ、だっこではなく、脱魂です。すいめーにこの前教えてもらった脱魂魔術について詳しい補足をしてもらいにきたので、『だっこんを教えてください』と言ったのです。あなたはそれを聞き間違えたのです」
つい相対する緊張から、報告時の機械的な口調になってしまう。だが、少し苦しい言い訳だったか。初美の表情から険しさが取れない。
「ふぅん。それならなんで三人共言いにくそうにしてるの?」
「魔術は秘伝です。誰に彼においそれとは口にできないので、お三方ともついどうしたものかと躊躇ってしまったのでしょう」
「でも」
「勇者ハツミ。まず第一、私が抱っこをせがむような歳に見えますか?」
初美に向かって、片目を向ける。ここが、大一番の賭けである。報酬は少しばかりの安心で、チップは水明の命。
それで初美は「うっ」と言葉に詰まった。体格は幼い方だが、成熟した言葉遣いから、そのような歳ではないと判断したのだろう。すぐに彼女は失礼なことを言ってしまったというように、気まずそうな表情を見せた。
「そうね。そうよね。ごめんなさい」
「私も誤解されるようなことを言って申し訳ありません」
とどめとばかりに、ぺこりと頭を下げる。これでもう、初美は水明を責められない。賭けには勝った。
だが、ここではたと思いつく。こうなってしまっては、初美が帰るまでフェルメニアたちにも抱っこをせがめないということに。
「あ……」
今日はもう、抱っこは我慢するよりほかはなかった。
心の中で「すいめーのすけこまし……」と愚痴を呟いて、少しだけ頬を膨らませる。
それはそうと、
「それで、二人共、一体どうしたのですか? ……訊ねなくても、なんとなく察することは、できますが……」
「そうなんだよ! さっきからこいつらなんかおかしくて……」
「すいめーは黙っててください」
「ぐふっ」
水明をしゅんとさせて、再度初美に視線を向けると、彼女は子供っぽくぷいと視線を逸らした。
「別に、私は何でもないんだけど」
そこに、我が意を得たりと目を光らせたのは、レフィール。
「ほう? そうなのか」
「え!? それは、その……」
戸惑う初美に、レフィールが視線を向ける。すると彼女は前言を撤回するかのように手のひらを返した。
「何でもなくはない……かな?」
視線をあちらこちらに行ったり来たりさせ、落ち着かない様子の初美。そんな彼女から視線を外し、複雑な表情を作っているフェルメニアに近付く。
(どうしたのですか?)
(リリィならほとんど察しているとは思いますが、まあ、修羅場というやつですね。この前のお礼をしにきた勇者殿に、レフィールがスイメイ殿のことをどう思っているか尋ねたのです)
ことのあらましを話してくれるフェルメニア。そんな彼女に、リリアナは、
(フェルメニアは助けに入らないのですか?)
(これは私が助けに入ってどうなるものでもなさそうなので。というよりも、こういうのは離れた場所から眺めるのがおもしろいと言いますか……)
と言いながら、忍び笑いを漏らしている。フェルメニアも、中々ひどいことである。
「……ときにだがハツミ嬢。君にはヴァイツァー王子という方がいるではないか?」
レフィールの訊ねに、初美は顔を真っ赤にさせたかと思おうと即座に否定する。
「ヴァイツァーとはそんな関係じゃありません! ……というかそんな言い方したら私が
こっ、こここここコイツのこと好きみたいに聞こえるじゃないですか!」
「違うのか?」
「違います! ヴァイツァーのこともコイツのことも両方違います!」
初美は違う違うと喚いたあと、ぷんと起こったような表情になり、そっぽを向く。意地を張ったのがどこからどう見ても丸わかりだが、水明だけはよくわかっていないらしい。
一方、レフィールも少し恥ずかしいことを口にしようとしているのか、ぎこちない様子になる。
「で、では私がスイメイくんと仲良くしていても問題あるまい?」
「そ、それは……」
仲良くする。その言葉は解釈の範囲が広いため、否定しにくいらしい。そんな中、まだよく呑み込めていない水明が、よせばいいのに話しに加わろうとする。
「あのさ初美、よくわかんないんだけど、そんな怒らなくてもいいだろ? みんなで普通に仲良くしてて悪いことなんてないぞ?」
「……仲良くするって、あんたにとってはどうゆう意味なのよ?」
「え、だからさ……」
水明が答えに困っていると、ふいに初美がぷくっと、膨れた。そして激昂と共に叫びを上げる。
「何よ! 助けに行くのは俺の役目って言ったクセに! セルフィから聞いたのよ!」
「へ? え? なに? いや確かにそんなこと言った覚えあるけど」
「守ってくれるんじゃないの!?」
「確かにそうだけどさ。普通だろ? 家族ならさ」
「普通じゃない!」
「え? え?」
思っていたことと違う答えが返ってきたため、戸惑う水明。彼にとってはあのとき、大事な家族を守るために立ち上がったという認識で、それ以外の理由など考え付かなかったのだろう。だが、それを思い切り否定されたため、わけがわからなくなったわけだ。
すると、初美の言ったことが聞き捨てならなかっレフィールが、水明に迫る。
「スイメイくん。そこは気になるな。ああ、大いに気になるぞ」
「はっきりして!」
二人にずい、ずいと迫られる水明。その様子を傍から見せられれば、気の毒な気もするが、さりとて自業自得というほかなかった。
「あ、あの、あの、あの……なあ二人共、あんまり大きな声で騒ぐと他の人にも迷惑だしさ、もう少し静かに穏便にしないか……」
水明は話を逸らそうと試みたのだろう。だが、
「大丈夫ですよすいめー。いましがた、音を遮断する結界を、ゲストルーム全体に張っておきました」
「おお! ありがと……って、おいそれ違うぞ! 俺の意図したものと違う!」
「ダメでしたか?」
「いやダメじゃないけどそうじゃないっていうか……お、お前リリアナ! 確信犯だな!」
リリアナは水明に対し、以前教えてもらったサムズアップのジェスチャーを向け、すぐにぐりんと下に反転させる。ここで水明が逃げることは許されない。こっちだって抱っこを諦めたのだ。相応の目に遭ってもらわなければ割りに合わなかった。
「み、味方が……」
「いないのは『誰かを斬れば、その血で濡れる』から、です」
リリアナの言葉を聞き、がっくりと肩を落とす水明。だが、二人の追及は終わらない。
「ねぇ八鍵……さっきの話だけど、どういうことなのよ?」
「いや、なんか勘違いしてるっていうか! 俺は単に家族を守るってことで、特に何かあるわけではなくて……」
「そんなんじゃ誤解を生むでしょ!」
「うむ。君のそういった曖昧な表現をしてしまうところには説教をしなければならないな」
さっきまでは火花を散らしていたはずなのに、初美とレフィールは揃って水明を睨みつける。
「お前ら何で急に結託するの……」
しばらくの間、水明は二人からガミガミと説教を喰らう羽目になったのであった。




