紅蓮
風に色をつけるとしたら何色になるのだろう。
夕景を背に、黒い液体を喉に流し込みながら考えてみた。
頬を撫でるその風が、静かに透明に染まっていく。
冷たかったはずのそれが僕を通り過ぎると少し、暖かくなった。
何かに触れて、また色が変わる。
トクントクンと、音が鳴って、僕は過ぎ去りそうな風を左手で掴んだ。
逃げ出されそうな音を追って、駆ける。
届ける?手が、その、それに。
透明に触れて、僕は少しの赤を零した。
眩しく僕を照らす丸い灯りが雲を押して、辺りの空気を殺してしまった。
押しつぶされた僕の中のイメージと、現実が仲良く手を繋いで、風が笑う。
「私は一人でこんなにも翔んでいけるよ。笑えるよ」
向かう先は、きっと谷で。
どんなものでも、受け入れようとしていた。
紫色に染まる夜の風が、僕の背中を押してくれた。
谷の前に立つ僕は、誰かに突かれて、飛び立つ。
どこへ、どこかへ、ここへ、向こうへ。
届かない底へ手を伸ばして、僕は羽を拾った。
自由の翼を手に入れて、僕は風に色をつけに空へと旅立つ。
僕はこんなにも笑えてる。素敵に見える?
五色の爪を持って、僕だけに見える世界を――取って。
まだ見れない奴らを、笑いにいこう。
大丈夫。僕は飛べるよ。
Twitter@dakusanno