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車内アナウンスによると、目的地はすぐそこらしい。網棚の上に置いたカバンに手を掛けた。社内冷房に冷やされたリュックはひんやりとしている。
電車にゆすられて1時間。列車は少し寂れた町に滑り込んでいた。とはいえ、田舎というわけでもない。小さな雑居ビルと、ローカルなスーパーが並んでいる程度である。言ってしまえば、地方の都市であった。
『―――――次はー、鹿野ー、鹿野ー。お降りの方は―――』
駅は見えてきた。
2年ぶりに立った町は少しだけ風貌を変えていた。それでもその景色の中で懐かしいものも見つける。
「おーい!コウタかーーー?」
駅の改札を抜けると、誰かが威勢のいい声で呼びかけてきた。
「榊?榊か?」
あまり混雑していない改札で、榊ユウマは簡単に見つけられた。派手な黄色のTシャツで、気持ち悪い蛇イラストが描かれている。
「お?オマエもこのイラストが気になるのか?」
様子をうかがったのか、榊が話題を振ってきた。いや、別にほとんど興味はないのだが。
「このイラストはなー、………」
長ったらしい説明を始めやがったので、適当に無視をしておく。語りだすと止まらない、これが榊の唯一の欠点である。
「ところでコウタ、他の人はどこにいるか知ってるか?」
ふと気づいたように榊が尋ねてくる。そうだ、僕はそのために来たんだ。
周りを見渡しても、それらしき姿は見えない。
「どこ集合って言ってたっけ?コウタ覚えてない?」
「さぁな。とりあえずどこかその辺を探してみるか?」
止まっていた足をだそうとしたとき、ポケットの中の携帯端末が着信音を鳴らす。
「メールか?」
「メールだな」