0-1
本編No.1~
その他No.0,x
スッと消えていく音が聞こえてきそうなほど、その瞬間だけがやけに強調されている。時間がたち、周りの景色が霞んできても、彼女とあの高くて蒼い空を忘れることはないのか。やがて小さく消えていく彼女の姿はとても非日常的で、魔法でもかけられたような錯覚に陥る。
気付くと僕はあの日、あの場所に立っていた。
切り取られたはずの風景が再構成され、古びたコンクリートタイルを描き出す。そして錆びたフェンスの向こう、彼女――――立原ユイはいた。無邪気に笑っていたはずの彼女が立っていた。
『なにをしてるの?』
僕の問いはとても間抜けで、それでいて少しばかり的を射ていたかもしれない。
『――――――――――――――』
彼女は確かに微笑んだ。だけどその笑いは少し儚くて、寂しげだった。
『――――だ…―――――に、そ…――。』
彼女は口を動かして何かを伝えようとしている。
でも、僕は、僕は、僕は………っ!!
『バイバイ?』
幻覚なのだろうか?いや、これは現実………?ちがう。ちがうだろ?待って、待ってくれ!
何処へ行くんだ、え、え………
ズシャッと気味の悪い音がして、僕の思考はスパイラルから抜け出して。
―――――あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!
何もできなくて、ただ叫んだ。