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世界に英雄はいらない  作者: 春賀彼方
プロローグ
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プロローグ

 私が書いてみたかったファンタジーを詰め込んでみました。

 文章を書くのは不慣れですががんばっていきたいと思います

 仕事終わりの夜、不意に空を見上げた。

 それは別にコンビニで買った新製品が不味かったからや、友人に恋人とのイチャイチャメールを貰って気疲れしたからでもない。

 ただ何となく見上げた。

 そして友人に適当に返事を返すと、変わりない空を見上げて意味のないことを考えた。


 十年後には車が空を飛ぶなんて与太話が囁かれた時代から実際に十年経ったが、自分のような一般市民にはそんな未来の技術なんて見たことないし、話も聞いたことがないなと。

 なにより子供の頃や中学生位の頃に憧れたヒーローに、なんかにはなれるとは思ってなかったがこうも違うと嫌な虚しさに包まれた。

 それを飲み込む為か定かではないが近くのコンビニを探し、ビールを数本買い飲んだ。


 家に帰ったのは日付が変わってから直ぐのことで、私は既に泥酔していた。

 たどたどしい足取りで家の中を歩く、その途中で溜まっている洗い物を見たが、軽く自棄になっている今の酔い方ではそれはどうでもいいことだった。

 着の身着のままでベットに乗り横になる。

 酔いが回ったからか疲労からか、おそらく両方が合わさった眠気に打ち勝てる訳もなく、直ぐに意識はなくなった。


 意識がなくなるその瞬間に誰かの声が聞こえたような気がした。


 目に射す強烈な光を感じ少し目を開ける。じわりじわりと意識が回復していくなか、寝る前には感じなかった寝心地の悪さを感じた。

 そして意識がほとんど覚醒すると驚愕した。見渡す限り森しかない場所に居たからである。

 所々に光が差し込んでいる光景は美しく、どこか神聖さを感じさせるものであった。

 しかし、こんな森のなかで寝た覚えはない、とりあえず助けを呼ぼうと後ろポケットに入れていた携帯電話へ手を伸ばそうとする。

 だがその途中で場所などとは比べようのない大きな違いを発見した。


 なんと指や腕が細くなり体つきも変わっている、それに身に鎧のような物を装備していた。

 慣れ親しんだ自らの体ではなく、私はまったく別の誰かになっていた。

 心が起こってる現状を否定し。手は震え動悸が激しくなっていく。

 今、私は何も考えられないほど混乱していた。


 そして、それからどれくらいの時間が経っただろうか、昇りたての太陽が真上に差し掛かる頃、私はなんとか少しの自分を取り戻した。

 その時、私は自分を慰めるように数多の仮説を考えては否定していた。


 それからしばらくして、私は結論を出した。

 これは憑依もしくは何らかに乗り移っている状態なのではないか? という仮説を採用したのだ。

 採用した理由は早く「こうだろう」という物を正直決めたかったのである。

 その効果もあってか多くの理性を取り戻した私は、本来現実では体験できないことを体験しているという事実に小さな高揚感を得ることができた。

 私は起こったことがあまりにも非常識すぎて、とてもじゃないが現実に思えず投げやりになっていたのである。


 そして荷物を整理するなかで私はまた新たな発見をした。

 使ったことがない筈の道具でさえ名前や使用方法、メンテナンスの仕方まで記憶していることだ。

 まるで信号の渡り方を答えるように当たり前の知識として私は覚えている。

 これは本来この体の持ち主だった者の記憶なのだろうかと考えたが、多分そうだろうと考えるのを止めた。


 不思議な感覚を味わいつつ、妙に手馴れた動きで荷物を片付ける最中にあるものを見つけた。

 それは寝る前の記憶が正しいなら、おそらくハルバートと呼ばれる物であろう。

 誘われるようにそれを手に持ってみると、何か満たされるような感覚が走る。まるで魂の欠片がはまったような、そんな感覚だった。


 試しに軽く振る。すると手足を動かすように使いこなせた。

 大気を巻き込み流麗とした流れるような動きは、おそらく熟練の戦士そのものだろう。

 この事もいまさらだと体の記憶として納得する。

 一刻もしないうちに荷物の片付けも終わり、背にハルバートを背負うと私は森の外に出ようと歩き出した。


 そこからしばらく歩き続けたときだった。

 遠くから物が砕けるような音と、人らしき悲鳴が聞こえてくる。

 私は人が居たことに安堵するが、すぐにそれどころではないと声のする方向へ駆けた。

 やはりこの体は凄まじいようで、荷物一式で数十キロはありそうな物を背負ってるのに、まるで風のように森の中を走ることが出来る。

 そのおかげで悲鳴が聞こえたであろう場所にすぐたどり着くことが出来た。



 そこでは熊のような生き物に(知識で名前はバグベアーというらしいが)人が襲われていた。

 「こんなところにエルフが!? すいませんどうか助けていただけないでしょうか」

 こちらを見て驚いた様子を見せながら、バグベアーの攻撃から彼は必死で逃げ回っていた。

 バグベアーの攻撃こそ当たってないが、彼の攻撃も効いているようには見えない。

 私は返事をすることなく野営用の荷物を木の根元に置くと、ハルバートを握り構えた。


 「たっ、助けていただけるんですか? あ……」

 彼が目を此方に向けたからだろうか、木の根に足を捕られ転んでしまった。

 その隙は見逃さぬと、バグベアーはその豪腕を振り下ろす。

 

 「体を丸めよ!!」

 私は急いで地を蹴り、数歩の距離を詰める。

 空を切った音が耳を襲い視界が高速で変化していく最中、私はハルバートを振るう。

 その半月の動きを描いた一撃はバグベアーの片腕を容赦なく奪った。


 バグベアーの痛みによる咆哮が響く。

 しかし切断面から赤い血を流し続けるバグベアーだが、戦闘意欲が萎えた訳ではないらしく、脅威とみなしたであろう此方へ残る片腕を振り下ろしてくる。


 「んっ?……はぁっ!!」

 ハルバートを横に構え、振り下ろしをうけとめる。

 その衝撃によって足が少し地に沈むが、ハルバートは変形することもなく、身体はダメージを負ってないようだ。


 「これで」

 私は力任せにバグベアーの腕を跳ね飛ばすことに成功した。

 熊の豪腕を跳ね飛ばせる腕力に少し驚くが、すでに軽く吹っ切れていた私は体制を崩したバグベアーへ切り返した。


 

 私は最後の腕も切り落とした後、まるで呼吸するように無意識に体を動かしていた。

 最初に全力で振り下ろし、次に瞬時に持ちを緩め今度は振り上げる。

 フェイントの振り下ろしに意識を取られたバグベアーは、次の瞬間に振り上げに両断された。

 しかしそこで動きは止まらず、繋ぐように繰り出される横薙ぎはバグベアーに十字の斬線を刻む。


 「騙し十文字……」

 四分割されたバグベアーが地にばら撒かれる最中、技名であろう言葉を呟いた。

 そして私は体が勝手に動いた事や命を奪う事による恐怖と、まるでゲームやアニメの世界でした経験できない戦闘による、言葉にできない興奮も感じたのである。


 かくして混ざり物の私は異世界で初めて命を殺めたのだった。






  

 

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