表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ふぁみりーチキン  作者: 魔桜
~flied chicken~
16/53

第15羽 豹変されて、

「え? もしかして…………ススキ?」

「ピンポンピンポ~ン! 大・正・解ぃ! そんな君にはこれをあげるッスよっ!」

 ぴょんと元気よく跳ねてしゃがみ込む。

 ススキは自身の身体の影に隠れていた、二つの紙袋をなにやら漁り始める。

「んーっ、と、えーっと、ちょっと待っててね」

 そんなことを言いながらつま先立ちしている彼女は、まるで別人のように女っぽかった。いや、性別は間違いなく女なのだが、まともに美貌を見たのが初めてだったからだろうか。今までのマイナスのイメージが全て好転してプラスに変換された。

「はいっ! これが優ちゃんの分っ!」

 高級そうな和菓子の箱を取り出されて、勢いのまま受け取ってしまう。

「いや、そんないいよ、こんな――」

「いいんスよっ、そんなに遠慮しなくてっ! あたし達ボランティア団体のみんなに配るものっスから」

「……あっ、ほんとにいいです」

 ボランティア団体の件については保留。というか,目を逸らしたい案件事項だったのに,また思い出してしまった。

 あっ,と突然ススキが小さな声を上げる。

 いつも元気溌剌なススキの表情が,さっと豹変する。申し訳なさそうな,どこか負い目があるような悲愴な面持ちなのが意外だった。そんな感情を持ち合わせているとは思えない彼女の顔が翳ると,こっちが見ていて傷つきそうになる。

 慌てたように廊下を通りかかった女子生徒に声をかけた。

「あっ、さくのん。ねぇ、さくのんにも――」

 ススキが和菓子を手渡そうとしたけれど、こちらを一瞬見やっただけですぐに歩いて行った。早歩きで歩く彼女に大幅に道を開ける生徒たち。そんなに強ばった顔をしているのだろうかと思うぐらい、みんなの退きかたに迷いはなかった。

「柳生と知り合いなのか?」

「え? そっちこそ、さくのんと知り合いなの?」

「まあ、ちょっとな……」

 柳生咲乃。

 少しからかっただけで本気で殴る,それから冗談が全く通じない女。……というぐらいしか柳生のことは知らない。が、知り合いといえば知り合いの範疇に入るだろう。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ