めでたし めでたし。
ーー昔々、あるところに銀色の狼と柴犬がいました。
二匹は、旅をしていました。
光る海辺を、砂をきゅっきゅっと鳴らして歩き、青々と木々が茂る山を越え、
雅な都をそぞろ歩き、気の向くまま 風の吹くまま、旅を続けました。
ある時、銀色の狼が言いました。
「家族に、なりませんか。私と貴女で。」
柴犬は静かにうなずいて、微笑みました。
二匹は、お互い天涯孤独の身であることを知っていました。
長い旅を続ける中で、柴犬は思っていたのです。
『ずっと、一緒に生きていきたい。寄り添っていたい。』
二匹は、夫婦になり家族になりました。
***
「トヨ、何を書いているにですか?」
彼が、座っている私の腰に手を回して肩越しに手元の紙を見つめます。
「ナナさん。旅の記録を書いていました。
…色々なことがありましたね。
思い出しながら書いていたら、筆が止まらなくなってしまいました。」
ナナさんは、可笑しそうにフフ、と笑って頭を撫でてくれます。
彼は、本当は”ヴァルト”という かっこいいお名前なのですが、
『トヨには”ナナ”と呼ばれたいです』
とお願いされてしまって、”ナナさん”とお呼びしています。
「あまり、根を詰めてはいけませんよ。…貴女の体とお腹の子に障ります。」
愛おしそうに、優しく。
私のお腹にそっと触れる彼の手に微笑んで、私は答えます。
「心配性のお父さんですねぇ。」
私たちの物語は、この先も きっと途切れること無く 続いていくことでしょう。
いつか、私たちの歩んだ旅の記録を物語にして、子や孫へ話しましょう。
そして、最後にこう結ぶのです。
ーー二匹は いつまでも 幸せに暮らしました。めでたし めでたし。 …と。
ここまで読んで頂き、誠に有り難うございました!
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