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赤ずきん。


 ズダーン! ズドーン!

森の奥から大きな音が聞こえます。


「なんですか!耳が痛いです!」


 トヨが形に良い三角の耳を手で押さえて、銀色オオカミさんに

尋ねます。


「あれは、銃声です。

トヨは猟銃(りょうじゅう)を知りませんか?」


「しりません。なんですか、それは。」


 銀色オオカミさんは、猟銃は人間の持っている武器であること、

飛び出して来る鉛玉に当たると、痛くて死ぬかもしれないこと

を話してあげました。


「怖いんですね!」


「はい、怖いですよ。注意して下さい。

恐らく今、猟銃をやたらめったら撃っているのは、私が

知っている人間です。


声をかけてみましょう。」


 銀色オオカミさんが、ワオーンと一声吠えると、ワオオーンと返事が

返って来ます。銀色オオカミさんは『ん?』と不審そうな顔になりました。



 しばらく待っていると、茶色いボサボサ毛並みのオオカミさんと、

赤い頭巾の子どもがやって来ました。


「おー!銀色のじゃねぇか!わんころ連れてどうしたんでぇ?

まだ『良いオオカミ探し』でもしてんのか?」


「『良いオオカミ探し』?」


 トヨは不思議な顔をしました。

銀色オオカミさんは、気まずそうに話題を変えようと尋ね返します。


「そちらこそ、赤い頭巾を被ったヘンゼルくんを連れて何をして

いるのですか?」


「あれ、俺のこと知ってるんだ?」


 赤い頭巾の下から顔を出したのは、確かにグレーテルのお兄さんの

ヘンゼルです。


「私も、旅を始めて長いので。貴方たち兄妹の話は聞いたことがあります。」


ヘンゼルは納得したように、「そっか」と、うなずいて、


「この辺りで、猟師を見なかった?」


と、真剣な顔で聞きました。


「いいえ。見ていませんよ。猟師が何かしたのですか?」


銀色オオカミさんが答えます。


「あの野郎!うちのグレーテルと、この頭巾の持ち主の女の子に

イタズラしようとしたんだよ!許せねぇ!


二度とそんなことを出来ねぇ体にしてやる!」


ヘンゼルは怒りで震えて、猟銃をカタカタ鳴らして言いました。


「すいません!イタズラとはなんですか!?」


銀色オオカミさんは、とても困った顔をして(うな)った後、


「あなたは、まだ知らなくて良いことです。」


と、トヨに言いました。


 茶色いオオカミさんは、やり取りを見てクックックと、笑いながら

オオカミの自分がヘンゼルと居る理由を話しました。


「俺はよぅ、この坊ちゃんが猟師を捕まえるまで、飯おごってくれるって

言うから雇われてんだ。まっ、もしかしたら、飯をもっとずっと食いたくて

捕まえるのを長引かせてるかもしれねぇがなぁ?」


銀色オオカミさんは、呆れた声で、


「オオカミですから、そうかもしれませんね。

あまり信用してはいけませんよ、ヘンゼルくん。」


と言い、その直後。耳をピン!と立てて音を聞き、トヨの首根っこを掴んで、

自分の方へ引き寄せます。



 数秒後。トヨが居た場所に、男が滑り込んできました。


「あ!テメェ、猟師じゃねぇか!ここで会ったが百年目!

覚悟しろぉ、このロリコン変質者が!!」


「ゲェッ!!逃げろーー!!」


猟師とヘンゼルは、騒ぎながら森の中へ消えました。


「あの様子じゃぁ、まだ俺はお役御免じゃねぇな。

もうちょい、坊ちゃんに付き合ってやるか。


じゃあなぁ?銀色の。そのわんころと旅して、今度こそオメェの目当ての

物に辿り着けるといーな。」


茶色いオオカミさんは、後ろ手に手を振ってヘンゼルくんたちを追いかけて

森の中へ入っていきました。




 森の入口には、銀色オオカミさんとトヨが残されました。


「トヨ。オオカミについては、分かりましたか?」


銀色オオカミさんは、トヨに尋ねます。


「すいません。まだ、よくわかりません!」


トヨは申し訳なさそうに、答えました。


 銀色オオカミさんは、仕方ないと思いトヨを連れて、

次の知り合いの居る村へと向かうことにしました。


 すると、トヨが立ち止まってモジモジしています。


「どうかしましたか?」


「えっと、えっと。」



 トヨは泣きそうな顔をして、モジモジするばかりです。

銀色オオカミさんは、トヨと目線が合うように屈んで言います。


「あなたを、置き去りにしたりしません。

だから、ゆっくりで良いので言ってご覧なさい。」


少し安心した顔になったトヨは、怖々と尋ねます。


「銀色オオカミさんには、お名前はないのですか?」


「…あったはずですが、忘れてしまいました。

今は名無しのオオカミです。」


少し寂しそうに、銀色オオカミさんは答えました。

じゃあ!と、トヨは いくらか明るい顔をして、


「今だけ。私がいる間だけで、かまいません。

”ナナさん”と、お呼びしてもいいですか!」


と、言います。



『それは”ななし”から取った”ナナ”なのか?』と色々問いたいことが

ありましたが、早く先に進みたかったので、許可することにしました。



「では、次の場所に行きましょう。 トヨ。」


「はい!ナナさん!!」




二匹の旅は、まだまだ続きます。





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