三匹の子ぶた。
「やーい!泣き虫トヨ!お前なんか怖くないぞー!」
銀色オオカミさんが、ワラの家の前を通りかかると、
赤い服の子ぶたに、誰かがいじめられています。
銀色オオカミさんは、先を急いでいたので、
『きっと、次にココを通る誰かが助けてくれるでしょう。』
と、そこを無視して行こうとしました。
しかし、その時急に鼻がむずむずして、
「はっはっ、はくしゅんっ!!」
大きなくしゃみをしました。
すると、どうでしょう。
くしゃみは大風となって、ワラの家を吹き飛ばして
しまいました。
赤い服の子ぶたは、銀色オオカミさんを見て、
驚いてどこかへ逃げて行きました。
いじめられていたものが、スクッと立ち上がって、
銀色オオカミさんにお礼を言います。
「助けていただいて、ありがとうございます!
私はオオカミのトヨと申します!」
「別に、助けようと思ってくしゃみをした訳では
ありません。
私はあなたを見ないふりして先へ行こうとしていたんです。
お礼なんて言わないで下さい。」
「でも!私は助かりました!
なにか、恩返しをさせて下さい!!」
銀色オオカミさんは、困ってしまって、
トヨをじっと見つめました。
三角の形の良い耳。
丸形の短い眉。
くるん、と丸まった可愛らしい尻尾。
明らかに、トヨはオオカミではありません。
何故、嘘をついているのでしょうか。
「嘘つきトヨ!お前、オオカミじゃないだろ!」
「嘘つき!嘘つき!」
振り返ると、木陰から木のすのこを盾にしている、
赤い服の子ぶたと青い服の子ぶたが囃し立てます。
うるさいので、銀色オオカミさんは足元にあった小石を蹴って
すのこに当ててやると、怯えた二匹は走り去って行きました。
「トヨは、オオカミではなくて柴犬ではないのですか?」
トヨは、首を傾げて悲しそうに言います。
「しばいぬ?私はオオカミではないのですか?
母は、ずっと私に『お前はオオカミなのよ』と言っていました。
私の母は、ウソを言っていたのですか?」
銀色オオカミさんは、答えに困ってしまいました。
それに、早く先に行きたいのに、このままでは進めそうにありません。
その時、前から手押し車に煉瓦を積んだ、
黄色い服の子ぶたがやって来ました。
どうしたんです?と聞かれたので、ここまでにあったことを
話して聞かせてあげました。
「そうだったんですか。
すいませんが、銀色のオオカミさん。
トヨちゃんを連れて行ってあげてくれませんか?
旅をしていらっしゃるなら、オオカミのお仲間に出会うことも
おありでしょう?トヨちゃんも見れば、納得すると思います。」
銀色オオカミさんは、もっと厄介なことになった!と、かなり後悔しました。
トヨも今にも『お供させてください!』と、大声で叫び出しそうです。
それは、もっともっと厄介です。
仕方なく、
「知り合いのオオカミのいる村までなら。」
と、了承しました。
トヨは嬉しそうに、
「ありがとうございます!」
と、言って銀色オオカミさんの後を小走りで付いて来ます。
銀色オオカミさんは走って来るトヨを見て、一度立ち止まってから
再び歩き出します。
最初に一匹で歩いていた速さより、だいぶゆっくりした速度になっていました。
一匹は二匹になって、次の村を目指します。