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銃口

 思考が、止まる。

 ”ぜんいん、うちゅうに放りだした?”


 公私にわたって家族にも似た存在だった、アイリス・カーゴ号の船員(クルー)たちの死刑宣告。


 ”身代金ビジネスすら理解出来ない。人質を()かす知恵もない素人なのか?”


 冷静でいようとする頭と、追いつかない感情が(きし)みを上げる。


「お前ら、なんて事を……」

 喉から絞り出した声が、他人のようだ。

 怒りで視界が(にじ)む。


「おい、ダンマリなら、そろそろ撃つぞ……」

 

 確かにアマチュア犯罪者のコイツらなら、癇癪(かんしゃく)一つで質量砲を撃ち込むだろう。それでも、どうしても許せなかった。


「撃っ……」


 後先考えず啖呵(たんか)を切ろうとした喉に、何かが巻きついた。と同時に、膝裏を崩され投げ飛ばされた。

 そのまま結構な勢いで、壁面に叩きつけられる。


 なんとか、ハンドレールを掴んで体勢を立て直せば、無反動拳銃を僕に突きつけるアシュリーがいた。


「撃つわよ! 私はまだ死にたくないの!」


 ヒステリックな口調。僕の聞いたことのない声だ。

 腰に毛布だけを巻きつけた姿だが、茶化せるような雰囲気は微塵(みじん)もない。

  

「こんにちは、スペースジャック犯の皆さん」


 上半身から乳房を(さら)したアシュリーが、レーザー通信のカメラに向かって手を振る。


「ほう、女もいたか……何歳だ?」


「28歳、正真正銘の女性。ベッドでの抱き心地は保証するわ」


 銃口だけを向け、僕に一瞥をくれないまま、カメラレンズに笑顔と媚びを振りまいている。

 知らない利己的な一面を隠そうともしない彼女は、まるで別人のようだった。


 どう考えても、スペースジャック犯に貞操を捧げるなんて馬鹿げてる。だが、保安員として戦闘訓練を受けている彼女を出し抜く手管が思いつかない。

 一か八か拳銃を奪おうにも個人認証必須のIDガン。僕じゃ撃てない。銃弾をかわそうにも、この船室(キャビン)は狭すぎる。


「最重要貨物区画の解錠コードが知りたいのよね?」

「解錠コードは――

 Alpha - India - Yankee - Whiskey - Uniform - Sierra - Whiskey - November - Romeo!

 ブリッジのメインコンソールからじゃないと入力は受け付けない。貨物ブロックにあるコンソールはダミーよ」


「どうやら嘘は言ってなさそうだな。復唱する、AIYWUSWNRの9桁だな?」


「間違いないわ! だからお願い、殺さないで!!」


「暫し待て、今確認する」


 怒りと混乱で、命乞いの金切り声も、スピーカーを通したスペースジャック犯の高笑いも、上手く頭に入ってこない。

  

 ”アシュリー。こんな結末、あんまりじゃないか……僕が好きだった君は……”

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