第34話 新たな旅路
いよいよ第2章最終話です!!
最後まで楽しんでいってください!
数日後、式典が催された。
新国王の着任と新四天王の拝命――それは、この国にとって新たな時代の始まりを示すものだった。
かつてのガルドリア王国を象徴していたのは、力と熱狂に満ちた荒々しい歓声だった。
だが今、王都を満たしているのはそれとはまるで違うものだった。
笑顔。
安堵。
そして、これからへの期待。
式典という名の祭りは二日間にわたって続き、街には人々の笑い声が絶えなかった。
そしてその翌日。
レイ、エリシア、ヤコウ、そして護衛の三名は、次の目的地であるドワーフの国へと向かうため、王都の門前に立っていた。
その場には、サーニャを筆頭に多くの国民たちが集まっている。
まるで、国を挙げての見送りだった。
「……本当に、行っちゃうんだね」
サーニャが、どこか寂しげに笑う。
その言葉に、エリシアは堪えきれずに一歩踏み出した。
「……はい」
そしてそのまま、サーニャへと抱きつく。
「本当に……ありがとうございました……!」
声が震えていた。
サーニャは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに優しくその背を抱き返す。
「こっちこそだよ。あなたたちがいなかったら、私は――」
言葉の続きを飲み込み、代わりに少しだけ強く抱きしめた。
その隣では、ミレアが静かに微笑みながら二人を見守っている。
エリシアはミレアにも抱きつき、別れを惜しむように言葉を交わした。
涙を流しながら、それでも前を向こうとする姿は、どこか成長を感じさせるものだった。
一方で、レイはサーニャと向かい合っていた。
「……世話になったな」
短く、それだけを言う。
サーニャは苦笑する。
「それだけ?」
「十分だろ」
「まあ……レイらしいけどさ」
軽く肩をすくめたあと、サーニャは真っ直ぐにレイを見る。
「ありがとう。楽しかった」
「……ああ」
レイもまた、小さく頷いた。
そして二人は手を差し出し、固く握手を交わす。
ミレアもまた、レイと静かに手を交わした。
「また会えますか」
「必要なら呼べ」
レイはわずかに口元を上げる。
「投資してやる」
ミレアはくすりと笑った。
そして、その空気を壊すようにヤコウが割って入る。
「いやぁ~、姐さん方と別れるのは寂しいのぉ~」
相変わらずの軽い調子。
サーニャとミレアは顔を見合わせ、そして同時に笑った。
「……ほんと、変わらないね」
「そこがええんやろ?」
「まあね」
そんなやり取りに、周囲の空気も自然と柔らぐ。
やがて、別れの時が来た。
「……行こう」
レイが一歩踏み出す。
それに続いて、エリシア、ヤコウ、そして護衛たちも歩き出した。
背後から、声が上がる。
「いってらっしゃい!」
「また来てくれよ!」
「ありがとう、サーニャ様たちを助けてくれて!」
無数の声が重なり、空へと広がっていく。
レイは振り返らなかった。
ただ、わずかに手を上げ、それに応える。
こうして彼らは、ガルドリア王国を後にした。
◇
レイたちが旅立ってから数日後。
ガルドリア王国は、確かに変わり始めていた。
新国王サーニャは、国民との対話を何よりも重視し、その声に耳を傾けながら制度の整備を進めている。
力による支配ではなく、信頼による統治。
それはまだ始まったばかりだが、確実に根を張り始めていた。
ミレアは四天王として、国内の安全を担い、各地の巡回と監視を続けている。
その存在は静かだが、確かな安心を人々にもたらしていた。
ルミナは妹と共に孤児たちの保護に尽力し、新たな居場所を作り上げている。
そして――
「も、もう無理ですってぇぇぇ!!」
「甘えるな!! 立て!!」
王城の庭から響く声。
ルーカスとゼルドだ。
日々の鍛錬は過酷を極めているが、それでもルーカスは逃げずに立ち上がり続けていた。
その姿は、かつて“弱き者”と呼ばれた存在が、変わろうとしている証でもあった。
この国は、ゆっくりと、しかし確実に変わっている。
サーニャと新たな四天王たちを中心に。
そして、レイたちはというと――
ガルドリア王国を離れて数日。
街道は徐々に様相を変え、踏み固められた土の道は、やがて岩肌がむき出しになった荒れた道へと変わっていった。
周囲に広がるのは、木々の少ない乾いた大地。
遠くには、巨大な山脈が連なっている。
「……随分と雰囲気が変わってきたな」
レイが視線を上げる。
「この先がドワーフの領域や。あいつら、基本的に山ん中に籠もっとるからな」
ヤコウがいつも通りの口調で言った。
だが――ほんのわずかに、その視線だけが鋭くなっている。
レイはそれを見逃さなかった。
「……何かあるのか?」
「……別に。ちょっと面倒な連中が多いだけや」
軽く肩をすくめるヤコウ。
だがその一瞬、言葉とは裏腹に浮かんだ表情は、軽口とは思えないものだった。
「……そうか」
レイはそれ以上は追及しなかった。
視線を前へと戻す。
巨大な山脈。
その奥にある未知の国。
武器も防具もそして――新たな投資先も。
すべてが、次の一手に繋がる。
レイはわずかに口元を緩めた。
「……さて、次はどんな“投資先”と出会えるかだな」
その言葉に、エリシアが小さく微笑む。
「楽しみですね」
風が吹き抜ける。
新たな地へ向かう足取りは、止まらない。
次なる舞台――ドワーフの国。
そこで待つのは、新たな出会いか、それとも――。
物語は、再び動き出す。
第2章「ガルドリア王国編」これにて完結です!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
もしよろしければ、評価やブックマークで応援していただけると、これからの執筆の励みになります!
さて、次の第3章ドワーフの王国編ですが、このまま引き続き書いていこうと思っています。
ただ、一日2話更新のところ1話にしようと思っています。
調子よければ2話頑張りますのでブックマークしてお待ちいただければ嬉しいです!
それでは第3章でまたお会いしましょう!




