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異世界転生した俺は資産50億円を使い切りたいのに、リターンのせいで全然0にならない  作者: 鏡まやたか
第2章 ガルドリア王国編

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第23話 勝利の先へ

時は、少し遡る。


レイたちは、ミレアとともに脱出してきた第一陣と合流していた。


周囲には、疲労の色を隠しきれない人々の姿が広がっているものの、その表情には確かな安堵が浮かんでおり、命からがら逃れてきた現実が、ようやく実感として染み込み始めているようだった。


「……報告します。第一陣、予定通りの経路で脱出完了。敵の追撃も現時点では確認されていません」

 

ミレアの報告を受け、レイは息をゆっくりと吐き出した。


「そうか……どうやら、うまくいったみたいだな」

「はい。このまま順調に進めば……」


ミレアの言葉にレイは静かに頷いた。


「よし……なんとか全員救出できそうだな」


その後、次々と合流し、最後の組みを待っていた


ーーそのときだった。

これまでよりもわずかに遅れて、最後の組がこちらへと姿を現す。


そして、その先頭にいた人物の様子を見た瞬間、レイの表情が強張った。


「兄貴!!」


ヤコウだった。


だが、その顔には普段の軽口や余裕は一切なく、明らかに焦燥に駆られた表情のまま、息を荒げてこちらへと駆け寄ってくる。


「どうした!?」

 

レイが聞くとヤコウは一瞬言葉を詰まらせながらも、必死に声を絞り出した。


「サーニャ姐さんが……四天王ガルムと交戦中や!!」


その場の空気が、一瞬で凍りつく。


「ワイの目から見ても……正直、少々部が悪そうやったで……!」


その言葉を聞いた瞬間、ミレアは何も言わず、そのまま迷いなく城の中へと駆け出していった。


「ミレア!!」


レイの呼びかけも届かない。


同時に、レイとエリシアも動こうとする。


「助けに行かないと――」


だが、レイの足はその場で止まった。

策もなく飛び込んだところで、何ができるのか。


相手は四天王。無策の突入はサーニャの足を引っ張る。

その理性が、踏み出そうとする感情を強引に押し留めた。


周囲では、救出された人々がざわめき始める。


「俺たちも行く!!」

「サーニャ様を助けなきゃ……!」


だが、その声をエリシアが遮った。


「……行って、どうするんですか」


その一言は、感情ではなく現実を突きつけるものだった。


「あなたたちが行って、何ができるんですか」


返す言葉は、誰にもなかった。

自分たちが足手纏いになることくらい、誰もが理解している。


それでもなお、何もしないという選択を受け入れられないだけなのだ。


そんな感情が場に渦巻く中、突然レイの視界にステータス画面が浮かび上がった。


【サーニャ】

前日比:−金貨2枚


「……!」


思わず息を呑む。

たった今、日付が変わったのだ。


これまでに考えたことがなかったわけではない。

投資対象の価値が下がる――それはすなわち、何らかの損失が発生したことを意味している。


そして、これはレイにとって明確な“異常”として認識される。


(……何かあったな)


冷静に状況を組み立てる思考の裏で、確実に焦りが広がっていく。

だが、考え込んでいる時間はない。


「……考えてる場合じゃねえな」


レイは迷いを断ち切るようにエリシアへと視線を向けた。


「エリシア、ここはお前に任せる」


一瞬だけ揺れたその瞳も、すぐに強い意志を宿す。


「日が上り始めるまでに俺たちが戻らなかったら、その時は全員を連れてここから離れろ」


一瞬、エリシアは戸惑ったがすぐに頭を切り替えた。


「……わかりました」


続けてレイはヤコウへと目を向ける。


「ヤコウ、お前はここに残ってエリシアのサポートを頼む。今はここにいるが奴らが優先だ」

「……っ、兄貴……!」


悔しさを滲ませながらも、ヤコウは歯を食いしばり、やがて小さく頷いた。


「……了解や」


その返答を確認すると、レイは振り返ることなく、一直線に城の中へと駆け出していった。

 

一方その頃、すでに城へ戻っていたミレアは、サーニャのもとへと急いでいた。

長い廊下を駆け抜けながら、胸の奥で不安と焦燥が激しくぶつかり合う。


(サーニャさん……どうか、無事で……!)


足がもつれるのも構わず走り続ける中で突然、前方から声が聞こえてきた。


「――今の私は自由だ。何にも縛られない――《狼牙絶閃》」

「……っ!!」


サーニャの声だと確信した瞬間、ミレアは残された力を振り絞るように走り抜け、ついにその場へと辿り着いた。


そして目にしたのは、真っ二つに断たれたガルムの身体とその正面に立つサーニャの姿だった。


だが、サーニャはすでに限界を迎えており、今にもその場に倒れ込んでしまいそうだった。


「サーニャさん!!」


ミレアは駆け寄り、その身体を受け止める。


「サーニャさん……本当に……お疲れ様です……」


震える声でそう告げると、サーニャはかすかに目を開き、か細い声で問いかける。


「……みんなは……」

「無事です。全員、脱出できています」


その答えを聞いた瞬間、サーニャの表情から力が抜け、張り詰めていたものが一気にほどけていく。

 そして、そのまま静かに意識が途切れた。


「サーニャさん!!」


その叫びとほぼ同時に、レイがその場へと駆け込んできた。


「サーニャ!!無事か!?」


焦りを隠さず駆け寄るレイに対し、ミレアは落ち着いた声で告げる。


「大丈夫です。気を失っているだけです」

「……そうか」

 

その一言に、ようやく緊張がほどける。


だが、レイの視線はすぐに横へと移り、真っ二つになったガルムの死体を捉えた。


「……勝ったんだな」


ほっと息を吐いたその直後、遠くから複数の足音と怒号が響いてくる。


「こっちだ!!」

「この先で何者かが交戦している!!」


明らかにこちらへ向かってきている。


「……まずいな、このままだと捕まる」


レイは、くサーニャを背負い上げる。


「ミレア、行くぞ。ここに長居はできない」

「はい!」


二人は戦いの痕跡が残るその場から離れ、エリシアたちの元へ向かった。

お付き合いいただきありがとうございます。

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