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異世界転生した俺は資産50億円を使い切りたいのに、リターンのせいで全然0にならない  作者: 鏡まやたか
第2章 ガルドリア王国編

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第21話 衝突

王都の外縁。

夜の闇に紛れ、レイたちは静かに辿り着いていた。


「ここから先は予定通りだ」


そう告げると、サーニャとヤコウが前に出る。


「任せとき」

「……行ってくるね」


二人は物陰を縫うように進み、そのまま城内へと消えた。


――数分後。


物陰で見張っていた兵士二人が、音もなく崩れ落ちる。

サーニャの一撃とヤコウの隙を突いた動きだった。


「やるやん、姐さん」

「無駄口叩いてる暇はないよ」


サーニャは倒れた兵の鎧を手早く外し、身につける。

ヤコウも同じように装備を整えた。


「似合っとるで」

「……いいから行くよ」


二人はそのまま地下牢へと向かう。


一方その頃。

レイとエリシアは、城外の脱出経路付近で待機していた。


「……頼むぞ」


レイの呟きに、エリシアは静かに頷く。


「必ず成功します」


ミレアはすでに中へ潜入し、サーニャたちの後を影のように追っていた。


地下牢。


湿った空気の中、かすかな呻き声が漏れている。

鎧姿の二人が、迷いなく奥へ進む。


「おい」


警備兵が振り返る。


「なんだ」


サーニャが低く告げる。


「上からの命令だ。明朝、こいつらを新たな測定器(サンドバッグ)として街へ放つ」


兵が眉を寄せる。


「急だな」

「上はいつも急だろ。せや……だから今から事前点検をしなければならない」


慣れない標準語に苦戦しながらヤコウが言う。

そしてサーニャが続ける。


「ここは我々が引き継ぐ。君たちは持ち場を離れて休めとのことだ」


兵はしばらく二人を見比べ――やがて頷いた。


「……そうか。では、任せた」


足音が遠ざかっていく。

完全に気配が消えたのを確認してから。


サーニャが鍵へ手を伸ばした。


「……開けるよ」


金属音が静かに響く。

一つ、また一つと牢が開かれていく。


中にいた者たちは、誰一人動かなかった。

ただ、こちらを見ている。


「……出ろ」


ヤコウが低く言う。

その言葉で、ようやく動き出す。


震えながら立ち上がる者。

足を引きずる者。

支え合いながら進む者。


全員を予定していた部屋へと移動させる。


扉を閉めた瞬間。

サーニャは兜を外した。


その顔を見た一人が、声を震わせる。


「……サーニャ様……?」


次の瞬間、あちこちで同じ声が上がる。


「本当に……?」

「サーニャ様……っ」


サーニャの喉が詰まる。


「……私のせいでみんなごめんね……」


言葉がそれ以上続かない。


「あーもう、感動の再会なんは分かるけどそれはあとにしぃや」


ヤコウが割って入る。


「時間ないで」


サーニャは一度だけ目を閉じ、顔を上げた。


「……みんな聞いて。これからここを出るよ」


全員の視線が集まる。


「安心して、外には私の仲間がいるからその人の指示に従って」

「さっそく順番に出口に向かってもらうで。静かに速くやで」


扉が開く。この先に見張りはいない。

最初の集団が動き出した。


数分後。


「……一組目、合流」


ミレアの報告が届く。

サーニャは小さく頷く。


「次だ」


二組目。三組目。

今のところ順調に進んでいく。


そして――最後の組。


「これで……」


そのとき。


「――そこで何をしている」


低い声が背後から届いた。


誰も振り返れない。

最後尾にいたサーニャだけが、ゆっくりと顔を向ける。


「……ガルム」


ガルムの視線が逃げる者たちを捉える。

そしてサーニャがそれに気づいたときには、もう目の前にいた。

剣が振り下ろされる。


――ガキンッ!!


サーニャが受け止める。


「ヤコウ!!みんなを連れて逃げて!!」


さすがのヤコウも冷や汗をかいている。

だが、すぐに頭を切り替えた。


「任せとき!サーニャ姐さん、死ぬんやないで」


そして叫ぶ。


「ほら全員走るんや!!止まるな!!」


人々が一斉に走り出す。


足音が遠ざかり、サーニャとガルムだけが残る。


ガルムが剣を構え直す。


「……愚かだな。何もせず、静かにしていればよかったものを」


サーニャは剣を構えたまま答える。


「……それじゃダメだ」


ガルムの目が細くなる。


測定器(サンドバッグ)の失踪もお前らの仕業なんだろう?」

「……そうだよ」

「レイとかいうあの男の指示か?」


ガルムは鼻で笑う。


「あいつはこの国の価値を変えるとかほざいていたな。だが、結局はゴミを拾ってるだけだ」


サーニャは一歩、踏み込む。


「違う。間違ってるのは、君たちだ。力で押さえつけるだけじゃ、この国は持たない」


ガルムは黙って聞いている。


「現に、もう統率できてないじゃないか。ただの暴力国家は、いずれ崩壊する」


サーニャの声に迷いはなかった。


「レイが来た今が、変わる機会なんだよ」


数秒の沈黙を打ち破りガルムは笑った。


「くだらん」


剣を構える。


「力こそがすべてだ。強ければ支配できる。この世界すら我ら獣人のものにできる」


サーニャは首を横に振る。


「……やっぱり、分かり合えないね」


構え直す。


「なら――ここで止める。昔みたいに軽く捻ってあげる」


ガルムの口元が歪む。


「奴隷落ちした傷物の分際でまだ俺に勝てると思うなよ」


二人の距離が詰まる。


視線がぶつかる。


次の瞬間。


同時に踏み込んだ。

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