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第1話 資産50億

みなさん初めまして。鏡と申します。いつもなろう作家さんの作品を楽しく読ませていただいておりましたが、読んでいくうちに私も書きたいと思うようになりました。趣味程度で書いていますので、温かい目で見ていただけると嬉しいです(笑)

今日も、何もせずに資産が増えた。


いや、正確に言えば、何もしなかったから増えたのかもしれない。

世の中には働けば働くほど金が減る人間もいれば、何もしていなくても勝手に増えていく人間もいるらしい。

どうやら俺は後者の側に回ってしまったようだ。


超高級タワーマンション最上階。その窓から見下ろす街は、沈みゆく夕日に照らされ黄金色に染まっている。

担当した不動産会社の男は「この景色だけで数億の価値があります」と誇らしげに語っていたが、今の俺には宝石を見せられているのか石ころを見せられているのかすら分からない。


どれだけ美しいものを見ても、心が一切動かないのだから。


「……また今日も、減らなかったな」


テーブルの上のタブレットには、現在の資産が表示されている。


約50億円。


昨日より三千万円ほど増えていた。現金、預金、株式、投資信託、債券、不動産、その他諸々。

要するに、俺が持っているものすべてを金額に換算した合計だ。現金だけで50億あるわけではないが、どちらにせよ一人の人間が一生遊んで暮らしても使い切れない額には違いない。


通知欄には無機質な数字が並んでいる。


【前日比:+29,614,000円】


配当、利息、評価額の上昇。世界のどこかで経済が動けば、その一部が俺の資産に反映される。

逆に減る日もあるが、長期的に見れば右肩上がりだ。何もしなくても、金が金を生む。


数年前まで、俺、神代(かみしろ) (れい)は、ただの会社員だった。給料は平均以下。特別な能力もなければ、将来の展望もない。休日はベッドの上でスマホを眺めて終わるだけの、どこにでもいる人間。名前を覚えられることもなく、誰かの人生に影響を与えることもない、背景の一部のような存在だった。


その日も、いつものようにSNSを無意味にスクロールしていた。


ふと、一つの投稿が目に入った。


「今は働かずに投資の利益だけで豪遊しています」


半信半疑でプロフィールを開く。そこに並んでいたのは現実味のない写真ばかりだった。美女と海外旅行、高級車複数台、豪邸、ブランド品がズラリ。いかにも嘘くさい。普通ならAIが作った画像だろと笑って終わるはずだ。


だが、そのときの俺は画面を閉じることができなかった。


まるで底なし沼を覗き込んでいるような感覚だった。羨ましいというより、理解できない世界を見ている不気味さに近い。


「これだっ!」


理由は分からない。

ただ、これをやれば何かが変わる気がした。

根拠など何もないのに、なぜか確信だけはあった。


俺はその日から投資について学び始めた。


最初は当然うまくいかなかった。上がれば喜び、下がれば慌てて売る。典型的な素人の動きだ。

何度も損をしたし、向いていないと思ったこともある。それでもやめなかった。他にやることがなかったからだ。

仕事が終われば相場を見て、休日も相場を見て、寝る直前まで見ていた。気づけば生活のすべてがそれになっていた。

それからいくつかの投資が信じられないほど当たり、雪だるま式に資産は膨れ上がった。


そして三年経った現在、総資産は50億円を超えていた。


なぜそこまで増えたのか、自分でもよく分からない。努力がなかったとは言わないが、それだけで説明できる数字ではない。

ただ一つ確かなのは、止まらなかったということだ。金が金を呼び、気づいたときには後戻りできない場所に立っていた。


俺は確かに『勝ち組』になった。誰もが羨む生活、将来の不安など一切ない環境。

社会的に見れば成功者そのものだろう。


——のはずだった。


今の俺は、この部屋からほとんど出ていない。


やりたいことは全部やった。欲しいものは全部手に入れた。

いや、違う。手に入れすぎたのだ。


高級車も、豪邸も、旅行も、女も、酒も、料理も。思いつく限りの贅沢はすべて試した。それでも何一つ心に残らない。


何を見ても、何をしても、何も感じない。嬉しさも驚きも達成感もない。

感情だけが削り取られ、空っぽの器が残っているような感覚だった。


あの頃は裕福ではなかった。だが少なくとも世界は色づいていた。

コンビニの新商品を買うだけで楽しかったし、ボーナスで少し贅沢するだけで嬉しかった。

給料日前には財布の中身を何度も確認し、あと何日持つか計算していた。


だが今はどうだ。何もない。


「こんなことになるならいっそのこと全部、なくなればいいのにな」


もし資産がゼロになったらどうなるだろう。

怖いか、苦しいか、それとももう一度、何かを感じられるのだろうか。


俺は本気で資産を減らす方法を考え始めていた。


だが、投資をやめればいいという単純な話ではない。

すでに持っている資産が勝手に金を生むのだ。

株も不動産も、売らない限り配当や賃料を生み続けるし、価値も変動する。


なら全部売ればいいと思うだろう。


理屈では可能だ。だが現実はそう簡単ではない。

俺の資産の大半は未上場株やファンド出資、不動産など、すぐに現金化できるものではない。

手続きにも時間がかかるし、額が大きすぎて市場に出せば価格そのものを崩しかねない。

何年もかければ可能かもしれないが、今すぐ一気に処分するのは現実的ではなかった。


だからせめてもと現金は使っている。高級車も買ったし、旅行にも行った。

金で手に入るものは片っ端から試した。


それでも総資産は減らない。


使う速度より増える速度の方が、圧倒的に速いのだ。

バケツで海の水を汲み出しているようなものだった。


どうすれば、ゼロにできる?


俺はその答えを探すため、珍しく外に出ることにした。

コンビニで安いコーヒーを買い、帰り道を歩きながら考える。

金持ちになってから一度も気にしたことのない、小銭の温度が妙に現実感を伴っていた。


もし全部失ったら、また俺の人生に色がつくのだろうか。


そして、その答えを知る前に


俺は、あっけなく死んだ。

拙い文かもしれませんでしたが、まずは第1話を最後までお読みいただきありがとうございます。

本作の主人公レイと同じように私自身も小説家として成長できるよう日々精進していきますので、引き続きお読みいただければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m


※話を進めていく中で随時、内容を確認しながら作成していますが抜けや矛盾があれば教えていただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
Xから来ました。大量の資産を持つ人間が資産0を目指すという設定、すごく惹きがあって、読者としても物語の向かっていく先が迷わずに分かって素晴らしい発想だと思いました。
Xより失礼致します。 資産を持て余した男から始まるプロローグとても読みやすかったです。
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