キンタマスカットフォーエバー
「そんな…!頑張って毎日水やりしてた向日葵が…」
「朝起きたら育ててた野菜が妙な植物になってて…」
「うちの観葉植物が…その…卑猥な形に…」
近頃こんな話をよく聞く。
どうやら、また「奴ら」が動いているようだ…
ある日、2人の男女が公園のベンチで談笑していた。
「あのさ…実は受け取って欲しい物があるんだ」
「嬉しい!何?」
「ふふ、実はさっき内緒で花束を買っていたのさ。君にぴったりだと思って」
有り体にいえばプロポーズの場面である。
男性は顔を赤らめて花束を取り出したが、女性に花束を渡した途端氷のように青ざめてしまった。
「なんで…!?僕は100本の薔薇を買った筈なのに…!」
「この大量の猥褻物が私にぴったり…!?最低!絶交よこのド腐れ乳首が!」
花束を男性の顔にぶちまけ、女性は怒りのまま走り去ってしまった。
「どうして…どうして…」
酷く項垂れる男性の前に、黒いスーツを身に纏った中性的な顔立ちの女性が颯爽と現れた。
「そんなに落ち込んでどうしたんだい?まるで意中の女性に振られたような顔してるじゃないか」
長く伸びた髪を纏めながら、彼女は微笑みながら声をかけた。
その微笑みは天使のように優しくもあり、悪魔のように嘲笑っているかのようだった。
「ああまさしくその通りだよ…100本の薔薇が大量の…変なのに変わってさ…」
「へえそれはお気の毒にね…ちなみにその変なのってのは、これかい?」
そう言うと、スーツの女性は何も無い手のひらから「変なの」を出現させた。
「…!?そうだよ!なんであんたが持って…」
「そりゃそうさ。だって全部私の仕業だもん。」
「…!?」
驚いた口が塞がらない男性を見下ろし、スーツの女性は続ける。
「私はマラキング様の忠実なる配下、ミザーナ・オーレ。ちょっと特殊な能力を持っていてね。周辺の植物をあんたが言う変なの、もといチンポポフラワーに変える事ができるのさ。いずれ世界中の植物をチンポポフラワーに変えて、世界を滅亡させようってワケ。」
「…じゃあ農家でも集中攻撃すれば良いじゃないか!なんで嗜好品の薔薇なんかを…」
「あら、そこに気がつくとはあんた中々聡明ね。確かにその方が手っ取り早いけど、チンポポフラワーを増やすにはエネルギーが要るのよ。で、そのエネルギーを大量に持ってるのは…」
次の瞬間、ミザーナ・オーレの左手が蔦のような形状に変化し、男性の体に巻きついた。
「あんたのような深く絶望したやつの体なんだよね」
「…ぐわあっ………………!!!助けて…!」
蔦のような物が男性の体を締め付け、元々悪かった男性の顔色が益々青くなっていく。
「あんたのエネルギーを吸収して次の標的を見つけてチンポポフラワーを咲かせる、永久機関の完成ってワケ」
そうこうしている内に、男性の叫びを聞きつけ人が集まる。
「え…あれ何?」
「映画か何かの演出?」
「これ通報した方が良くない…?」
ザワザワと騒ぎ出した民衆に対してミザーナ・オーレが一喝する。
「おっとあんた達!下手な気を起こさないようにね。さもないとこいつがどうなるか分からないよ…?」
そう言うと、男性の体に巻き付く蔦のような物がさらに強く締め上げていく。
(くそ…もうここで俺の人生終わりなのか…彼女にも振られた上絞殺なんて…)
(どうせなら、もっと色々な事をやっておくんだったな…)
「そこまでだ!」
僅かに働く思考を巡らせた瞬間、一人の仮面を被った男が現れた。
「あ…貴方は…?」
「キンタマの隣にちんぽこがあるように、助けを求める者がいれば必ず現れる…人呼んで、キンタマスカットフォーエバー 参上!」
金色と若緑色に包まれた全身タイツ。
見方を変えると卑猥なモノに見えてくる仮面。
道を歩けば数秒で職質されそうなその他諸々。
余談であるが、後に被害者の男性は「容姿だけ見るとどっちが敵か分からなかった」「むしろ敵の援軍が来たのではないかと思った」「ビジュアルは絶対変えた方が良い」と語ったと言う。
「大丈夫か青年!俺が来たからにはもう安心だ!」
むしろ不安になった、と語ったと言う。
「おのれキンタマスカットフォーエバー…!何度も私の邪魔をしおって…!」
これまで余裕綽々だったミザーナ・オーレが苛立ちの表情を隠しきれていない。
一連の流れから察するに、二人は因縁の相手という事だろう。
「はっはっは、悪がいれば正義の味方も現れるのは当然だろう!…ところで人質が逃げているが良いのかい?」
「…!」
この茶番を繰り広げている内に、蔦のような物は切り刻まれ人質は救出されていた。
「悪いね、このキンタマブーメランは音もなく物を切断する事ができるんだ。ちなみに2つある」
「くっ…卑怯な…!」
「それ君が言う?」
挑発するようなキンタマスカットフォーエバーの言動にミザーナ・オーレの苛立ちが益々募っていき、ついに啖呵を切る。
「予定変更だ!チンポポフラワーを増殖させるつもりだったが、お前を叩っ斬る!」
ミザーナ・オーレの右手も蔦のような形状に変化し、キンタマスカットフォーエバーの体を貫こうとする。
「いやそれワンパターンすぎるって。もう食らうの7回目だから」
そう言うとキンタマスカットフォーエバーは余裕そうに切り刻んでいき、着実にミザーナ・オーレを攻撃していった。
「ぐっ…!」
「ミザーナ・オーレ…もうやめなよ、君は俺に勝てっこないよ」
「…!うるさい!私はそんな安い挑発に乗るような奴じゃないって事ぐらい、お前もわかってるだろ?」
汗を流し肩で息をするミザーナ・オーレに、キンタマスカットフォーエバーは語り続ける。
「君の能力は使いようによっては『もっと良い事』に使えるのに…。どうしてそんな『下らない事』ばかりするんだ?」
キンタマスカットフォーエバーがそう呟いた瞬間、明らかに空気が変わった。
冷たく鋭い、周りの者全てを戦慄させるような空気だ。
「下らない………下らないって…?」
「…?どうした?」
キンタマスカットフォーエバーは意味が分からず首を傾げる。
「私はマラキング様の忠実なる配下…マラキング様の目的の為なら何だってする…」
「いやだからなんでマラキングとやらに執着するのって、」
「お前は!!!お前らは!!!私達が毎日石を投げられていた時に何かしてくれたか!?思い出すのも悍ましい位の罵詈雑言を吐かれていた時、庇ってくれたか!?そんな私達を救ってくれたのはマラキング様だけだったんだよ!!!!!」
先程の飄々とした面影はどこへやら、ミザーナ・オーレは感情を剥き出しにし、目を血走らせ、数㎞先にも届きそうな程の大声で叫ぶ。
「…!!」
流石のキンタマスカットフォーエバーも表情を曇らせ、静かに呟く。
「悪かった…。敵とはいえ、君の恩人を侮辱して…」
ミザーナ・オーレは落ち着きを取り戻し、されども殺気に満ちた表情で呟く。
「もう遅い…きっと分かり合える筈がないんだ。所詮正義と悪なんだから…」
「なあ悪かったって…君の話をもっと、」
キンタマスカットフォーエバーの言葉を遮るように語りかけ、胸元から黒い石のような物を取り出す。
「もうどうせ最後だから教えてやろう…この石はマラキング様の力の一部が込められている。これを私の体に取り込めば強大な力を手にするだろう…しかし、その負荷により私の体はきっと耐えきれない」
「…!やめろ!そんな事!マラキングはそんな事を望んでいるのか!?」
「…!………」
真剣な目でキンタマスカットフォーエバーが語りかける。
ミザーナ・オーレは一瞬目を見開いたものの、すぐに表情が険しくなる。
「うるさい!!!私はマラキング様の力になれれば良いんだ!それが…全てなんだ…!」
キンタマスカットフォーエバーが静止する間も無く、ミザーナ・オーレは石を自身の体に取り込んでしまった。
「がはっ……………!ぐぐ……………………」
その瞬間、ミザーナ・オーレが苦しみ出したと思いきや、その体躯全体が蔓に飲みこまれていき、巨大な化け物へと姿を変えた。
「グオオオオオオ…………」
もう対話ができる相手ではない。
緩めかけていた武器を強く握り直し、キンタマスカットフォーエバーは構えを取った。
「くっ…!やるしか無いのか…!」
キンタマスカットフォーエバーは先程のようにキンタマブーメランで攻撃するが、いとも簡単に弾かれてしまう。
「何…!?ぐわっ………!」
驚く間も無く蔦の塊がキンタマスカットフォーエバーの腹を殴打し、キンタマスカットフォーエバーは倒れ込む。
「ぐ…………!なんて力と速度…………」
怪物と化したミザーナ・オーレに容赦は無い。横たわるキンタマスカットフォーエバーに蔓の殴打を浴びせ続ける。
「くそ…どうすれば良い…?このまま俺は負けてしまうのか…?」
「キンタマスカットフォーエバー!僕のマスカットとキンタマを使って!」
意識が朦朧とするキンタマスカットフォーエバーに、見知らぬ少年が語りかける。
「キンタマスカットフォーエバーのパワーはマスカットとキンタマなんでしょ!?僕の実家がマスカット農家だから貰ってきたんだ!」
キンタマスカットフォーエバーは一瞬喜びの表情を浮かべたが、すぐに迫真の表情に切り替わる。
「ダメだ…!マスカットはともかく少年のキンタマは2つしか無い…!一生生え変わる事は無いんだ!そんな物を受け取る訳には…」
「大丈夫、ちゃんとキンタマはあるよ」
そう言って少年はズボンを下ろし、チンポコを露出させる。
確かに少年のチンポコにはキンタマが2つ付いていた。
(教育及び倫理的によろしくない表現の為、少年のチンポコは謎の光に包まれています)
「本当だ…!じゃあ少年が今持っているキンタマは一体…!?」
少年は微笑みながら説明する。
「これは『心のキンタマ』。通称『ココキン』。誰かを思う気持ちが強くなると生えてくるんだ。只のキンタマのように男性にのみ2つあるんじゃない。誰にでも無限に生えてくるんだ。」
そう言ってココキンをキンタマスカットフォーエバーに手渡すと、ボロボロだった彼の体は瞬時に回復し、活気が戻っていった。
「キンタマスカットフォーエバー!私のココキンも受け取って!」
「オイラのも!」
「持っていきな!」
「こんな老いぼれのが役にたつなら!」
「今回だけだからねっ…!」
「ざあ〜こ♡」
「ワン!」
少年だけではなく、周りの人がココキンを捧げてくれたおかげで、キンタマスカットフォーエバーは光り輝く究極戦士となったのだ!
「ありがとう…これでアイツを倒せる!」
そう言うと両手のキンタマブーメランを掲げ、声高らかに叫んだ。
「キンタマはチンポコの為に!そしてチンポコはキンタマの為に!皆の力が一つになる!ファイナル・キンタマスカット・フォーエバーハリケーン!!!!!」
「グアアアアアアアアアア………………………!!!!!!!!!」
金色に輝くキンタマブーメランをミザーナ・オーレだった物に放つと、その巨体は浄化され、そこには満身創痍の状態で横たわるミザーナ・オーレの姿があった。
「ミザーナ・オーレ…目を開けれるか…?」
「…?」
キンタマスカットフォーエバーはミザーナ・オーレの前に屈み、語りかけた。
ミザーナ・オーレは苦しそうに力を振り絞り、目を開いた。
「少しだけ受け取ったココキンを残しておいたんだ。君の話をもっと聞きたくて…これを使えば君は消滅せずに済むかもしれない」
「…!」
「過去は確かに変えられない、だが未来はどうとでもできる。これから分かり合えるかもしれない。さあ、使うんだ…」
ミザーナ・オーレは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに俯き、
「分かり合える未来も…あったのかもな」
そう呟き、キンタマスカットフォーエバーの手を払いのけ、煙のように消えてしまった。
「…そうか…。」
キンタマスカットフォーエバーは立ち上がり、俯いた顔を上げ、拳を握り締めた。
「これからどうなるかは分からない…でも、平和な世界の為に俺はこれからも戦う…!」
そう決意を確かにするのだった。
一方その頃、マラキングの牙城にて。
「…そうか…。ミザーナ・オーレが…」
ミザーナ・オーレ消滅の知らせを受けたマラキングは、黒貂を抱きながら静かに手を合わせた。その表情は悪の親玉とはとても思えない、まるで我が子を想うような慎み深く静かな物だった。
「この犠牲を無駄にはせぬ…必ずや我の理想を叶えてみせる…!」
そう力強く呟いた後、配下の方を向き言い放った。
「我が親愛なる配下、ドルゲザ、千由芽!ミザーナ・オーレの敵を射って来てくれ…!」
「承知いたしました」
「はいは〜い」
マラキングの元を後にする配下を見届け、静かに呟いた。
「キンタマスカットフォーエバー…覚えておれ…!」
決戦の時は近い…
次回、キンタマスカットフォーエバー第20話
「チンポコにキンタマが2つあるように、人は1人で生きていけない」
来週も、レッツ キンタマス!




