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月光  作者: 山口ぴぴ
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終章

四月

 私の名は桜木と言う。

 名前のせいで、よく四月生まれだと思われるが、七月生まれだ。

 しかし、研究所の近くの桜並木が綺麗な為、この時期は好きだ。

 今日はその桜並木と逆に向かって行く。

 どんどん街の中心から離れて行って、周りが静かになっていく。

 大きな川の橋を渡る時、周りが静かなせいか、川のせせらぎがよく聞こえた。

 そして山に差し掛かった。

 そのまま歩いて行き、民家が減ってくると墓地が見えてきた。

 その墓地に入って行く。

 山の斜面に作ったせいか、急勾配の坂が真ん中にあり、それをゆっくり登って行く。

 最近運動を一切行ってないため、息を切らしながら登って行く。

 そして、たくさんある墓の中に質素に佇む一つの墓を目指して歩いて行く。

 その墓には『吉田陽翔』と書いてあった。

 それを見下ろしながら言う。

「吉田博士、あなたは何を見ていたんでしょうか。私には分かりませんでした」

 四ヶ月ほど前に大きな通信障害があった。

 その頃からだ。

 科学者全体に記憶障害が起こり、大混乱が始まった。

 謎のスーパーコンピュータ、人によく似た人形などが見つかり現場は混乱状態だった。

 しかし、私だけその記憶障害から逃れていたらしい。

「あなたは、私に何をさせたいのですか?」

 その答えは返ってこない。

 きっとこれからも返ってこないだろう。

 スーパーコンピュータのデータは完全に消されており、何の為に誰が作ったのか分からない代物だった。

 前の自分の記憶と今の状況を見比べる限り、〝月″や〝月″周辺に関する記憶、記録が周りから抜け落ちている様だった。

 きっと、吉田博士は何かの意図があって私の記憶を抜かなかったのだろう。

 しかし、

「私には、あなたの様に何かを変える事は出来ません。

きっと、このまま観測者として生きるのですが、あなたはこれで良いのですか?」

 何度語りかけても答えは返ってこなかった。

 そして、ひとり。

 知識を持つ事の辛さを知った。











十月

「陽翔くん、このアンドロイド、名前どうします?」

 少し掠れた声が聞こえた。

 新田だった。

 今は〝月″とは別の研究をしている。

 〝月″によって手に入れた経験と、〝月”により作られた最高の知能、つまり私、吉田陽翔の力を使い、新しいアンドロイドを作る研究の途中だった。

 しかし、今では最終チェックを行っている所で、緩い空気が部屋中に流れていた。

「名前なんてこれに必要か? 所詮アンドロイドだぞ」

「いや、民間でこれから使う時に必要ですって」

 そうだった。

 このアンドロイドの実証実験をどうするか話をした時、新田は私の息子とその学校に目をつけて、話を通してしまった。

 そこの高校の校長先生もノリの良い人だったせいで、話が決まってしまい。

 引くに引けない状況になっているのだ。

「型番があるだろ、今までそれで呼んでたし」

「いやいや、人間にせっかく寄せて作ったんだから、名前くらいつけましょうよ」

「……それもそうか」

 ここまで頑張って、名前で台無しにするのは勿体無い。

 しかし問題はある。

「で、誰がつけるんだ? その名前を」

 ここには学者しかいない為、ネーミングセンスが良い人が居ない気がするのだが……。

 そう考えながら周りを見渡すと、皆、やる事がないからか、こっちを見ていた。

 反対意見を言わないあたり名前を付けるのは賛成なんだろう。

「そうですね〜」

 新田が少し楽しそうに笑いながら言った。

「〝月″の反対の〝お昼″とか。いや、やっぱり〝あひる″とかにしますか? 可愛いですし」

「可愛いってお前なあ」

「ほら、『醜いあひるの子』って童話みたいに、いつか、日の目を見た時に、注目を集める為のゲン担ぎにどうですか?」

「注目を集めたら後はどうすんだ?」

「それは……ノーベル賞でも取って、そのお金で早めの老後生活にでも入りますかね」

「簡単に言ってくれるな」

 新田の冗談に笑って返す。

 周りもそれを聞いて笑っていた。

 後日そのアンドロイドに〝あひる″と言う名前が決定した。






END

 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 この小説は初めての小説なので最初は行頭が一マス空いてなかったり、漢数字を使って無かったりした中、まあまあ時間かけてなおしました。

 正直この話は元はノベルゲームにする予定で作った話だったので、今度から書き方が一気に変わるかもしれませんが、次回作が出たら読んでくれると嬉しいです。

 ここから先は裏話的な何かです。


 5章の中盤の植物人間状態の描画って、実は皆の見たことのある景色から持って来ました。

 まあ言うなれば、生まれてから記憶ができるまでの0〜2歳位の記憶です。

 僕は1歳位の記憶がある特殊な個体で、更に、それ以前の記憶もあります。

 見た時間軸的に、保育園に行く前なので1歳以下の目がちゃんと見えない時期の記憶です。

 綺麗な物なので書きました、人間だから仕方ないネ。


 新田さんというキャラありますよね。

 あのおじさんって、実は3章までただのおじさんのまま進んで、4章でキャラが決まりました。

 未来の僕がフラグを回収してくれると思い、書きました。

 他にも色々と回収していないフラグがあるので〝忘れて無ければ″回収します。きっと。


 あと、坂中駅は現実に実在しない……はず。


 それと、4章のお上の目力が強い女性は、なんか1章書いてる時に出したかった人です。

 イメージ的に最初は後ろで縛った髪型だったのですが、研究者が長髪って? と言うのと沙智、桜木さんがポニーテールなので被らない様にしました。

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