Ⅴ章
もう、時間は無い
焦っても時間は経っていく
1
あひるの再起動が終わったらしい。
よく桜木さんの側によく居る男性に聞けた。
桜木さんは忙しいらしく、直接聞く事は出来なかったが、話によると、再起動後も何も話さないらしい。
特に何も新しい情報が手に入らないまま、じりじりと期限が迫ってきていた。
2
今日は研究室に来ていた。
僕、桜木さん、圭、沙智の四人はあひるの対面に立っている。
実験として、知り合いなら何かしら話をしてくれるのではないかという結論になり、呼び出された。
しかし、名前を呼んでも挨拶をしても、あひるは目を開いてこちらを見つめ続けているだけで、何も話さない。
濃い黄色の瞳でこちらを見つめ続けている。
「過去に話した事がある人でも駄目かこりゃ」
早速失敗する予感がしたのか、桜木さんは思わず口に出してしまったようだ。
「あひる、なんだよな?」
圭が桜木さんに質問をした。
「どういう事だ?」
「いや、だって目の色とか、まとっている空気の感じが違うと言うか……」
圭は色々な所が前と違うと言いたげな様子だった。
「私もこれがあひるとは思えない」
沙智も圭と同意見らしい。
「やっぱり前と違うと思うか」
「やっぱり?」
桜木さんは心当たりがあるようだった。
「前に取っていたバックアップと違うという話があったんだ」
「どう言う事ですか?」
「定期的にバックアップしていたデータがあったんだが、丁度ロックがかけられてからバックアップしてなかったんだ。
そして前のバックアップのデータと今のデータは違うと来た。
多分、真太くんの父がロックをかけた時に書き換えたのかもしれない」
「何でか分かりますか?」
「私の予想になってしまうが」
桜木さんは自分の予想を語り始めた。
「吉田博士の記憶のバックアップを取ろうとしたんじゃないかな。
あひるは記憶を入れる器として作られたから記憶の書き換えも簡単なんだ。
だから、自分の脳みそ以外にバックアップを取るとなったらあひるが適任というわけだ。
でも、吉田博士の記憶が入っているのなら何かしらの反応があるはずなんだ。
反応が無いという事は可能性はかなり低い。
しかし、オリジナルのあひるのデータは消えているときた。
なんの確証も得られないが、今の所それ以外の使用方法が考えられない」
自信が無いせいか、桜木さんの声はとても頼りなく聞こえた
「まあ、この方法で喋ってくれる可能性が潰れたって訳か。
一旦他を考えて見る」
そうして、桜木さんは部屋を出て行ってしまった。
「なあ」
圭が口を開いた。
「もし、あひるの中に別の記憶を入れたらどうなるんだ。もしかしたら、元のあひるは」
「まだ、可能性の話でしょ」
すぐに沙智が否定する。
そんな話をしていると、急に声が聞こえた。
「伝言を伝えます」
あひるが口を開き、喋っていた。
なんでと思っているとまだ言葉が続いている様だった。
「根を無くした花にも、故郷を失った渡り鳥にも。
平等に。
そして、ずっと、静かに見守り続けるだろう。
例えそれが、誰も知らない優しさであろうとも、見えない時があろうとも」
3人は静かに聞いていた。
あひるの声は静かな部屋の隅々まで響き渡っていた。
「伝言を伝えきりました。シャットダウンします」
そう言い切った後に目を閉じてから、何も喋らなくなった。
*
「何があったんだ!」
そう言って桜木さんが部屋に入って来た。
「あひるがシャットダウンしたと通知が来た、何があったんだ」
「えっと」
圭が一番に口を開いた。
「伝言を言ったきり、あひるが動かなくなりました」
「そうか」
桜木さんは平静を装って言った。
「伝言は後で見るからこの紙にメモしておいてくれ、再起動に挑戦してみる。君達は帰ってもらって大丈夫だ」
そう言い切ってすぐに何処かに電話をかけ始めた。
その声が遠ざかって行くのを引き止める事も、何があったのか聞くこともできなかった
*
研究所から帰る時に桜木さんの近くによく居る男性に呼び止められた。
圭と沙智には先に駅に向かってもらった。
「真太くん、これ」
そう言って鍵を差し出して来た。
「これ〝月″のキーですよね」
「桜木さんから渡しておいてって言われてね」
「何故ですか」
「レプリカを鍵屋に作ってもらったから、本物は真太くんに返そうという話になったからね」
いや、嘘だ。
きっと桜木さんは僕が何か隠している事があると思っていて、鍵の本物を失うリスクを犯してでも僕が〝月″を起動させるわずかな可能性に賭けたのだろう。
しかし、今は桜木さんが忙しいのは目に見えて分かるから、追求しても無駄だと思ったため、
「分かりました」
とだけ返した。
…………
「おい」
何かに呼ばれて振り向いた。
そこに居るのは黒い影だけだった。
「誰ですか?」
「そんな事は今、関係ない」
こっちの質問を完全に無視して話してくる。
「君は何処まで覚えてる?」
「何処までって」
向こうの口が悪いためか、こっちまで乱暴に返してしまった。
「〝月″についてだ」
「父が作っていて、記憶をコピーしたりできる機械でしょ」
勢いに押されてつい言ってしまったが、この人に言ってしまって良かったのか? と後から考えてしまった。
「そこまでか?」
「そこまで、とは?」
「〝月″の本質の話だよ」
「本質?」
「そんな事も知らずに使ってたのか?」
「は? 僕はまだ使ってないぞ」
黒い影は呆れたようにため息をついていた。
「言うよりも、こっちの方が早い」
そう言うとこっちにぶつかって来た。
*
何かが見えていた。
きっと鮮やかなのだろう、
きっと賑やかなのだろう、
遠くて見えない。
何故こっちは静かなのだろう、
分からない。
あの小さい光に近づきたい、
でも、
足が動かない。
手も動かない。
このままずっと近づけないのか?
分からない。
近づきたいと思っていたらやっと体が動いてくれた。
ゆっくり、ゆっくりと近づいて行く。
光は近づくほどに弱くなって行く。
やっとの思いで触れた時に、
全てを思い出した気がした。
*
「お……、おーい」
上下逆さまな顔と視線が合った。
どんな顔だ?
少し眠たそうな目。
少しボサボサな髪。
小さめの鼻。
口の周りにあるホクロ。
何回も鏡で見た自分の顔だった。
「目、覚めたら早く起きろ」
僕、こんな口悪いっけ?
「分かったよ」
起きて全身を見たら違和感があった。
少し幼さを残した顔に黒いパーカー、僕より低い身長、
「前の僕か?」
「前って……合ってはいるけど、どっちも僕だろ」
「で、今のが君の記憶だと」
「そう」
「何があったの?」
前の僕は自嘲気味に言った。
「ちょっと〝月″に触れすぎただけだよ」
「は?」
「興味本意で階層を降りて遊び過ぎた、それだけだ」
階層を降りる?
「階層を降りるってなんの事だ?」
「比喩の話だよ。
実体を持つ階から概念の階に降りること」
父の日記でもそんな事が書いてあった気がする。
「て事は、今のが〝月″って事?」
「そうだよ」
ずっと気になっていた事を聞く事にした。
「ねぇ」
「何?」
「ずっと君が干渉してたんだね」
前の僕はそれに笑顔で答えを返した。
「どうすれば〝月″に辿り着けるかは示したよ」
「ありがとう」
そう心から伝えた。
「まあ、君も危ないからもう帰れば?」
「君は帰らないの?」
「僕には帰れないし、帰る場所ももう無いからね。
ばいばい、新しい僕」
そう言った後、向こうの僕が僕の肩を押して来た。
その後、意識がホワイトアウトしていった。
…………
*
「ん?」
寝っ転がりながら時計を見た。
まだ十一時、真夜中だ。
しかし、もう眠気は覚めてしまった。
「明日も休みか……」
カレンダーを見ながら呟く、
明日は圭と買い物の予定だ。
夏場にエアコンなしでは最悪死ぬと圭に言われたため、エアコンを探す予定になっていた。
圭なら少し寝坊しても怒らないし、起こしてくれるはずなので夜更かししても大丈夫だろう。
少し散歩にでも出かけよう。
*
静寂に支配されている道を歩く。
最近ここに引っ越したせいか、何回散歩しても新しい発見があった。
今日はいつもとは真逆の方角を歩いていた。
「へー」
こんな所に森があったのか、知らなかった。
森の周りをなぞるように歩いていくと変な影が見えた。
最初は不法投棄された自転車かと思ったが、シルエットが違う気がした。
目を凝らすと白衣が見えた。
そして、黒いボサボサの髪も見えた。
後ろ姿しか見えないが、何度も見たことがある姿だ。
「父さん!」
すぐに追いかける。
背中がどんどん遠ざかって行く。
何であんなに遠いんだ。
呼吸が荒い、息切れしているようだ。
でも、ここで止まれない。
ここを逃すと、きっと何も分からない。
早く追いつかないと、聞きたい事は沢山あるのに。
しかし、疲れは絶対にやってくる。
どんどん遅くなっていく。
「クッ……はっ!」
進んで行くと目の前に開けた場所があった。
あそこなら、きっと追いつける。
その場所に飛び込んだ。
*
「あ……れ?」
何があったんだ?
暖かい。
手を顔の前に上げて見てみる。
真っ黒だ。
何でだ?
血……なのか。
そうか、この全身の濡れた感覚の正体は血なのか。
周りを見てみると、壁がある。
さっきまでの景色と違った。
急に壁に囲まれたと考えるより、穴に落ちたと考えた方が良いだろう。
今考えると、森の中に何もない空間があるのはおかしいと怪しむべきだった。
そんな事を考えていると急に、空の雲が散り始めた。
そこには、
「き……れい……だ」
綺麗な星空が広がっていた。
一つ一つが命を持っているかのように光輝いていた。
何かを語りかけてくるような力強さがあった。
もしかしたらここで死ぬかもしれない。
でも、この景色を人生の最後にこの景色を見れたなら、僕は満足だ。
……いや、嘘だ、したい事は沢山ある。
〝月″についてもっと知りたかった。
もっと散歩して新しい景色を見たかった。
おばあちゃんの料理をもっと食べたかった。
最後に圭や沙智に感謝を伝えたかった。
「ははっ」
だらしない自分がバカバカしい。
最後くらいかっこよく終わりたかった。
これで良かったと思いたかった。
涙が流れてくる。
アホらしい。
そんな事を考えていると何かが光った。
星?
いや近い。
ポケット?
そうか、桜木さんに貰った鍵を入れっぱなしだった。
片手で取り出して顔の前にぶら下げる。
色々と思い出した。
〝月″についての事、オルゴールの曲、あひるの伝言。
伝言……。
根を無くした花にも、故郷を失った渡り鳥にも。
平等に。
そして、ずっと、静かに見守り続けるだろう。
例えそれが、誰も知らない優しさであろうとも、見えない時があろうとも。
「あぁ」
これの事か、
「月光……か」
その単語を口にした時、ぷっつりと意識が切れてしまった。
*
砂地を歩いていた。
「ここは何処だ?」
灰色の砂漠。
見た事ない場所だ。
それにさっきまで何をしていたんだ?
確か十一時に起きた所までは覚えている。
思い出そうとしていると、後ろから声が聞こえて来た。
「Mare Tranquillitatis 静かな海だよ」
振り返るとそこには、
「父さん?」
「ああ、そうだ、私だ。真太、よく来たな」
僕を優しい瞳で見つめる父がいた。
「静かな海って月?」
何度か写真で見たり、話で聞いたりした事があった。
「そうだね。
ほら、地球があっちに見えるだろう」
そう言いながら父は指と視線を彼方へと向けた。
本当だ。
青い地球が見えていた。
とても非現実的で、とても綺麗な光景だった。
「ここは何処なの」
もう一度、同じ言葉を別の意味でいう。
「〝月″により概念が実体を持つ事が出来る空間、とでも言おうかな。
ここを初めて見た時、真太にも見せたいなと思ったよ。やっと、見せることができた」
〝月″を使っているという事は、誰かの記憶の中に居るという事か。
「この景色は誰の記憶なの?」
「昔の宇宙飛行士の記憶だね。
沢山入れられた記憶の一つにあったんだ。
奴ら、どんな記憶でも手当たり次第に入れたからな」
父はそんな事を言いながら地球のある方から僕の方へと視線を戻した。
そして、父は実験について語り始めた。
実験は成功していた。
〝月″を使うことによって、色々な人の記憶を手に入れるという実験は成功したんだ。
それにより、ものすごい量の知識を手に入れることができた。
しかし、その代わりに色んな欲望に押しつぶされそうになった。
生物は何をしても欲が付きまとう。
何かを食べる時や、何処かに行くに時でさえ、欲望という物は存在している。
しかし、生物の意志だけでは欲は消せなかった。
どんなに神に近づこうと、人間は欲望に勝てなかった。
欲望があると、本当に正しい判断を選べない、〝自分の欲望″と〝皆んなの欲望″は違うから……。
だから、私は全ての知識を使い人類の欲を消せるように〝月”を改良した。
もし、この機能を真太が使おうと思うのなら、ここに来るのに使った鍵を十年間、定期的に〝月″本体に差し込む事で使える。
簡単な洗脳のような物だ。
一瞬でどうにかなる話では無いから実体を持つ必要がある。
ここに居る間はできないんだ。
だから、同時に研究していたあひるを使用することで、ここに存在する概念上の物が実体を持ち、鍵が使用可能になる。
そして、この方法を私が使わなかった理由は、全然時間が足りなかったんだ。
欲望という物は時間が経つにつれてどんどん膨らんで行く。
さらに、蓋をして見てみぬふりをしても、なくなりはしない。
何百人分の欲に、人間一人の体じゃ足りなかったんだ。
きっとあれ以上の時間を地球で過ごしていたら、人を辞めてしまうかもしれないから。
人でなくなる前に人間らしく自殺した。
「だから、私が概念となった今、これを使う事が出来るのは、吉田真太、君だけだ」
僕だけ……。
どうすれば良いのか分からなかった。
きっと、この決断を僕一人で決めるのは無理だろう。
何故なら、父が言った通り、人の行動には欲望が付いて回る。
きっとこの決断を僕一人で決めたら、僕だけの欲望になってしまうだろう。
分からない。
みんなはどっちを選ぶだろう。
いや、どっちの方がみんなに利益があるのだろうか。
分からない。
「なら、答えは簡単だ」
新田さんの声が聞こえて来た。
「君はどっちをしたい? きっと、どっちを選んだって後悔するさ、人間は選ばなかった方を過大評価するからね」
どっちがしたいか。
僕がしたいと思う方はどっちだ。
僕はどんな欲望に触れて来た?
多分、〝月″について知りたいという欲望がなければここまで来れなかっただろう。
他にも色んな欲望があるはずだ。
圭と一緒に居たいと思わなければ、きっと今みたいに楽しい人生は送れなかっただろう。
月を知りたいと考えなければ、今見ているこの景色も見えないままだ。
僕は……。
「きっと、欲望にも色々あるはずなんだ。
何かを発明するためにも欲望は必要だし、幸せを感じるためにも欲望は必要だ。
それに、他の生物のように死なないための行動が必要無くなった分、自由になった。
やりたいことのない自由な人生を無駄に生きる位なら、欲望のままに生きた方がマシだと、僕は思う」
断言はできなかった。
おそらく、自由な人生を無駄に過ごす生き方にも楽しさはあるのかもしれない。
でも、僕はどっちの方が良いか言い切った。
「人の欲はいつかその身を滅ぼすとしてもか?」
と父に言われたが、僕の意見を変えるつもりはなかった。
「例え死んだとしても、人生、楽しければ良いんじゃないかな」
その答えを聞いて満足したのか、父は優しく微笑んでいた。
「答えを出してくれてありがとな、真太。最後に真太に伝えたい事があるんだ」
私はね、一回真太を失ってしまった。
〝月″に触れようとしたのを止めるべきだった。
私がこの景色を見せようと思わなければ。
そうして植物人間になってしまった真太を見て、取り返しのつかない事をしてしまったんだと思った。
自分の持っている記憶を使い、真太を戻そうとしても戻せなかった。
〝月″の実験と同時に進行していた記憶を作り出せる機械を使い、一時的に直した。
でも、自分のせいで息子をなくしてしまったんだ。
もう一度やらないように、全て忘れようとした。
誕生日にあげたパーカーだって捨てたし、キーも私以外が使えない様にオルゴールに隠した。
まさかオリジナルのあひると前の真太が、真太の手助けをするとは思わなかったけどね。
「だから、もう会うことはないと考えていたが、ずっと後悔していた。
自分の欲望のせいで色々と迷わしてしまってすまなかった。
そして、それでも私の話を聞こうとしてくれてありがとう」
「父さん……。僕も、聞きたかった事を教えてくれてありがとう」
自然と感謝の言葉を返す事ができた気がする。
「最後に伝えたかった事が言えて良かったよ」
「最後?」
「これが我が息子の答えらしい」
質問には答えずに、僕の後ろに視線を向けながら言った。
「陽翔くん、道ができましたよ」
「あぁ、道を作ってくれて助かったよ新田」
後ろから新田さんが現れた。
「まぁ、真太くんを閉じ込める訳には行かないから、良いんじゃないですか、これで。真太くん、君は良く頑張ったね」
こっちに優しい笑顔を向けて、感謝を伝えるように頭を下げた。
「さて、もう〝月″が使われない様に記憶を消して回らないとだから、もうお別れだな」
悲しそうな顔をして父がこっちを見ていた。
「さあ真太くん、最後にやりたいことをやってきな」
そう、新田さんが言った後に、肩を押して来た。
その後、意識がホワイトアウトしていった。
3
朝日が昇る。
そうして、世界はまた、無知である幸せを手に入れた。
*
「た。しんた……真太!」
「目を覚ました?」
沙智と圭が目の前に居た。
二人の服は土で汚れていた。
特に圭の服は汗で濡れていた。
「ここ……は?」
「無理に喋るな、ここは崖の下。
朝、お前を起こすために部屋に行ったら鍵が空いてて、中に居なかったから結構探したんだぞ。
近隣住民の人達から話を聞いて、お前を見つけたんだ。大丈夫、すぐに助けが来る」
圭が質問に答えてくれたが、これは嘘だとすぐに分かった。
言葉とは裏腹に圭の顔は浮かない表情をしていた。
もう時間が無いのだろう。
でも、新田さんは最後にチャンスをくれた様だった。
「最後……に、言……いたかった」
最後の力を振り絞って言い切る。
「もう喋るな真太」
圭が心配してくれたが、もう止まるわけにはいかない。
「今ま……で、ありがとう」
沙智は泣きながらも、ぎこちない笑顔を作ってくれた。
圭も我慢していたが、涙を我慢できない様子だった。
「お前……もうさよならだ、なんて言うなよ」
圭が言ってくる。
曖昧な視界の中で言い切った。
「あぁ、また……会う日……ま……で」




