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君は武王  作者: いふじ
3/6

プロローグ3

あー、本編始まるまで長いね!!


てなわけで(どういうわけ?)

プロローグ3回目、はーじまるよ!!

「何だアレは?」

 

誰の言葉だっただろうか。


 誰かが前方を見てそう漏らした。


 リゼルたちの前方には赤い、灼熱の炎を連想させるような大きな光があった。


リゼルたちはその怪しく赤く光る光を見て呆然と立ち止まっていた。

 

強烈な雨脚のはずなのに、何故か肌を焼くような風がリゼルたちを撫でた。


 「まさか・・・」


 リゼルの言葉に仲間たち全員が同じ考えを抱いていた。


 リゼルは自分が出してしまった答えを否定するように大きく頭を左右に振り、一目散に走り出した。


 リゼルを静止させるような声が聞こえたような気もするが、リゼルは止まらなかった。


止まれるはずがなかった。

 

この豪雨の中で鎮火しないわけがない!


あの赤い光は炎なわけがない! 

 

祈るように、自分に言い聞かせるように、リゼルは駆けた。


 もう、自分たちの集落はすぐ目の前だった。


しかし、強烈な雨に視界を奪われているため、どうなっているのかが確認出来ない。


確認出来るのは、ただただ赤く、人を軽々と飲み込むほど巨大な赤い塊だけであった。

 

「エルモアー!」


 赤い光の中に飛び込みリゼルは妹の名前を呼ぶ。


 「エルモアー!」


 赤い光がリゼルの肌を焼いていく。


 「エルモアー!」


 喉が焼け付くように痛かった。


それでも、リゼルは妹の名前を叫び続ける。

 

次第に頭がぼうっとしてきたかと思うと、リゼルは体勢を崩して、地面に膝をついた。そ

れでも妹を探そうとするリゼル。


 突然、首筋に激しい痛みを感じると、意識が朦朧となる。


ここで気を失ってしまうと、もう二度と愛しい妹に会えないような気がしたが、リゼルの意識はそこで途絶えた。


リゼルは意識を失う直前に黒く長い髪を見た。

 

 次に目を覚ましたリゼルが最初に感じたものは暖かなぬくもりだった。

 

額に気持ちのいい何かが乗っていて、それがリゼルを労わるように撫でてくれている。痛

みを訴えている後頭部も、柔らかな何かの上に乗っていて、幾分か痛みが引いているよう

に感じられた。


 なんだか懐かしい。


 そう感じていたリゼルだったが、突如聞こえてきた喧騒がリゼルを暖かな世界から切り離した。


 「その子を放せ!」


 知った声だった。


それは仲間の、両親が死んで以来、自分とエルモアを実の子供のように可愛がってくれた女の声だった。

 

喧騒が激しくなる。


 リゼルは少しずつ目を開いていく。


 視界はぼやけたように霞んで見える。喧騒だけがリゼルの耳に届いている。


 だんだんと視界が回復してきた。


誰かが自分を見つめている。

 

誰かはわからない。でも、仲間ではないのだろう。


 聞こえてくる喧騒が鮮明になった。


 「リゼルに何をした!」


 「私たちの家族をどうしたんだ!」


 「何故、我らの家族を殺した!」


 知った仲間の怒号が、一番否定したかった現実をリゼルに突きつけた。


 リゼルを見つめ続ける者の輪郭が徐々に見えてきた。


 リゼルを見つめ続けていたのは女性だった。


 綺麗な女性だった。


黒く長い髪を地面に垂らしている女性は、リゼルと目が合うとにこりと微笑んだ。


それは優しく、忘れかけていた母のぬくもりをリゼルに与えてくれた。


リゼルは自分が綺麗な女の人の膝の上に頭を乗せているとわかると、顔を赤く染めて恥ずかしくて、嬉しくて、照れる。


だが、自分を見つめ続ける碧眼の瞳に魅入られて、石のように固まった。

 

「気がついたかえ?」


 女性の言葉に仲間たちが一斉にリゼルの下に駆け寄ろうとする。


しかし、仲間たちの足はどうしてか途中で止まった。


仲間たちが一体どうなったのか気になったが、リゼルは女性に、「うん」と答えることにした。

 

「すまんな。わらわが不在であったが故にこのように起きなくてもよい悲劇を生み出してしまうことになるとは・・・」


 「お姉さん・・・誰なの?」


 リゼルは自分を見つめ続ける女性を見て、不思議そうな顔で言った。そんなリゼルの言葉に女性は気をよくしたように笑い、


 「わらわはもう『お姉さん』と呼ばれるような歳ではないよ」


 それに対してリゼルはゆっくりと首を横に振る。後頭部は未だ痛んでいるようで、首を動かしたリゼルの顔が痛みに歪んだ。


 「これ、無理をしてはいかん」


 「大丈夫。あと、お姉さんはお姉さん。サーラさんより綺麗」


 一番最初にリゼルを放せと叫んでいた女性が顔を赤くして、怒ったようにリゼルの名を叫んだ。


 「ふふふ、それは光栄なことよな」


 言って女性は優しくリゼルの頭を撫でる。


撫でられたリゼルはくすぐったそうな笑みを浮かべた。


撫でられただけだというのに、後頭部の痛みがまた少し引いたような気がした。

 

「のう、童よ。主の名はなんという?」


 問われたリゼルは、少し考えると、


 「リゼル。リゼル・トリッジ」


 そう答えた。


 「そうか。優しき響きの名じゃな。我が名はマリア・セレクト。この名より、『武王』という名で呼ばれるほうが多いがの」


 マリアと名乗った女性はまるで世間話でもするような軽い調子で言う。


 その場にいたリゼルの仲間たちは全員固まり、次の瞬間には全員が動き出した。


 「リゼルを放せ!」


 「『武王』様の名を語る愚か者がその子に触れるな!」


 仲間たちが憤ったのは仕方がないことだった。


『武王』が死んだとされたときから、一年あまりが経つが、その間に、『武王』の名を語る悪人は後を絶たなかった。


『武王』の名を語り、民を守ってやるから金を出せと国を騙したものもいれば、『武王』の名を使い戦わずして国の財を掠め取るような輩が世界中に存在しているからだった。


 仲間たちはそれぞれ武器を携えて、マリアに飛びかかろうとするが、それを銀の矢の一閃が阻止する。


 「させると思うか?」


 低く、暗く、そして、重みを感じさせるような男の声が言う。


今までリゼルはその男の存在に気づかなかった。

 

朦朧とした意識ではあったが、部族の中で誰よりも強く『戦人』という地位を与えられたリゼルすら、その男の存在には気づけなかった。


 さきほど仲間たちの足を止めたのはこの男がどこからか、仲間たちに矢を射って止めたためだった。


その証拠に、リゼルが母とも姉とも慕っているサーラの足元に、今放った矢とは別に、もう一本銀の矢が地面に突き刺さっていた。

 

「我は『武王』マリア・セレクトに仕える七王が一人、『弓王』ナプン・フィール。我が弓をかわ―」


 「やめい!」


 マリアの大声が『弓王』ナプンの動きを静止させた。


ナプンを静止させたマリアの声はともすれば、泣き出しそうな少女のようにか弱い声のようにも聞こえた。

 

「は・・・」


 言うと、ナプンは静かにその場へ肩膝を突いて、まるで銅像のように動かなくなった。


 「お主らも、本当にすまなんだ・・・。わらわが―『武王』が不在であったばかりに」


 「まだ『武王』様の名を語るかっ」


 マリアの言葉に再び武器を手に取った仲間たち。


しかし、今回ナプンは少しも動く気配がなかった。

 

代わりに仲間たちの動きを止めたのはリゼルだった。


 「サーラさん。マリアお姉さんは本当に『武王』様だよ」


 「なっ、しかし・・・」


 サーラを始め、仲間たちはリゼルの言葉に動きをとめた。


口では否定したサーラだったが、自分たち仲間を他国の脅威から救ったのは実質リゼルだった。


『戦人』とまで称えられたリゼルが肯定したからこそ、サーラたちは動きを止めた。


そして、『戦人』と呼ばれるリゼルだからこそわかったのだろう。


特別な地位に就く者通しで何かが通じ合っているのかもしれなかった。

 

サーラは握っていた細い槍を地面に落とすと、そのまま膝を突いて崩れ落ちた。


次に聞こえてきたサーラの声は涙を堪えているような声だった。

 

「エルモアや、他の皆は・・・どうなったので、しょうか?」


 「・・・すまない」


 一拍置いて告げたマリアの手から赤黒い液体が流れ出ていた。


 「そう・・・ですか・・・」


 サーラはそれ以上何も言わなかった。


他の仲間たちも何も言えなかった。

 

マリアはそんなリゼルの仲間たちを見る。


一度目を閉じ、何かを呟くように口を開いた。


その呟きはあまりにも小さなもので、マリアのすぐ近くにいたリゼルですら聞こえなかったのだが、

 

(時間がない?)


 マリアの唇がそう動いたように感じられた。


 ゆっくりと目を開けたマリアは、リゼルの目を見て言った。


 「わらわの子供になってはくれぬか?」

 

リゼルはマリアの言葉に自然と首を縦に振って答えた。


さー、次からはやっと本編突入です!!


ご意見・ご感想・誤字脱字、お待ちしております!!

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