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水上の重い言葉がテーブルに落ち、三人の男たちがそれぞれの思いに沈む中、それまで沈黙に徹していた志乃が、静かに口を開いた。
「水上さん、一つ確認させてください」
彼女の澄んだ声に、三人の視線が再び集まる。
「紀伊半島で使われたという『水龍の玉』は、儀式によって龍脈というものに働きかけ、結果として災害を引き起こしてしまった。そういうことですね?」
「……その通りです」と水上は頷いた。
「そう考えると、玄洋会の今回の狙いは、『鎮めの石』と、儀式を行うための龍脈の場所、そして……私。この三つを同じ場所に集めることが目的、と結論づけて良いのではないでしょうか」
志乃の言葉に、その場の空気が凍りついた。
父の宗一郎は、娘が自らを危険の中心に置く発言をしたことに、息を呑んで絶句している。
新聞記者の岸馬は、煙草を口にしたまま動きを止め、驚きと感心が入り混じった目で志乃を見つめていた。この少女は、この異常な事態の構造を、誰よりも正確に理解している。
水上は、初めて志乃に対して、研究対象を見るのではない、対等な協力者を見るかのような眼差しを向けた。
「……全くです。驚きました、志乃さん。あなたの結論は、寸分の狂いもなく正しい。それこそが、玄洋会の最終目的です」
水上はテーブルに身を乗り出し、声をさらに潜めた。
「そして、最悪なことに、彼らはすでに三つのうちの一つ、『鎮めの石』を手にしている。そして、二つ目の鍵であるあなたの存在にも気付いている。残るは、儀式を行うための『力の場所』だけです。彼らがその場所を突き止めた時……あなたを奪いに来ることでしょう」
水上の言葉が、決定的な事実としてその場に突き刺さった。
志乃の冷静な分析によって、漠然としていた脅威は、明確な輪郭を持った危機へと変わった。
残された道は、もはや多くはない。




