配信にはご注意を!!!とある王国のロイヤルプレイ事件
「あら S・M・L をもの珍しそうに見るなんて、あなたは旅人さんかしら?
それじゃあ、うわさくらいは聞いてても、実際にS・M・Lを使ったことは無いのかな
といっても この国で普及して、まだほんの数か月なんだけどね」
「ナルニア国の人間が、どうしてこんなに多くの人がS・M・Lを持ってるのかって?
そうね、あの夜の話をするのが1番わかりやすいか……
あのライブは生涯……、ううん、この国の歴史として 永遠に残るでしょうね」
「あれは、国を揺るがす 大事件だったもの」
「事の発端は、宮廷魔術師・ハイランダー様が、S・M・Lを王都で販売しだした日かな。
ソーシャル・マギア・ライブ 通称 【 S・M・L 】 」
「簡単な民間魔法しか使えない、あたし等は詳しい事は知らないけど
遠い国……そうね、例えば~~ レジデント王国とか?
海をまたぐ 大規模通信魔法を使った王族間の交渉が、長年行われてたけど
あれには 大きな問題があったの!
宮廷魔導士・ハイランダー様をはじめ、この国が有する魔導騎士団の協力があっても、魔力の疲労がヤバかったんだって」
「以前、レジデント国との交渉日に、某国から狙われる襲撃未遂事件が起きたんだけど
その1件がきっかけで、ハイランダー様をはじめ、この国有数の魔法使い達によってついに完成したのが 通信魔道具 S・M・L 」
「梨くらいのサイズから、国王陛下達が使ってる 部屋1面のサイズまでと
今では 色んなサイズがあるんだけど、なんといっても、あたしのような庶民でも買える値段で販売するようになったのが、本当にありがたかった。
あたしもお姉ちゃんみたいに、子爵家で働けてたなら、新しいS・M・Lが買えるのに――」
「あっ、ごめんなさい……今は、あたしの 愚痴の話じゃない
S・M・L がこの国に普及するきっかけになった、大事件について話したいの!」
「S・M・L が発売されて、しばらくの頃のことよ」
「当時はまだ ハイランダー様が、新しく発明した魔道具の1つだったから
貴族や、ハイランダー様の魔道具を 普段から目ざとくチェックしている商人達 他には城下に点在するギルドといった 1部の連中しか持ってなかったんだけど
“あの夜”の1件以降、この国の7割が所持するほど普及したわ」
――それが、【 ナルニア国 ハロルド国王陛下の 女王様プレイ事件 】
「ちょっと! 何を言ってるんだ、コイツって顔しないでよ!
ちゃんと話すから しっかり聞いてね?」
「あの日も、この国にS・M・Lを普及させるため ハイランダー様からの依頼で
S・M・Lが発売されて以降、城内や、陛下のお部屋で毎月行われる、陛下や王妃による生ライブの日だったの」
「王族のライブといっても、あの頃は、ハロルド国王陛下やマリアンヌ王妃殿下が
普段 私達が見られないような、王族の礼服やドレス、マリアンヌ様が愛用されている宝石をライブに出すといった、どちらかというと 貴族向けのライブが多かったんだって」
「だからS・M・Lも 最初は売れ行きが悪かったみたい、今より高かったからね。
あたしの友人や同僚、この王都でも、S・M・Lを購入してた人は今の1割……いや、もっと少なかったか?
とにかく、今ほど普及してなかったの」
「そんな中で あの夜、陛下が自分の部屋でのライブ配信を終えた後にあれが起きたの。
ハロルド陛下がね ライブの配信を切り忘れちゃったのよ!」
「それだけなら問題なかったんだけどね、事件はこのライブで起きちゃった。
王様が、S・M・Lのライブ配信を切ったと思い、厳めしい顔を崩されたかと思ったら、普段お召しになっている、立派な礼服を脱ぎだしながら王妃に
「マリアンヌ、今夜も “いつもの”を頼めるか?」
「“いつもの” でよろしいのですね?」
って言いだしたの、ここまではハロルド様や、マリアンヌ様も王族の格を保ってた
らしい…… 生で見れなかったのが悔しいなぁ」
「そしたらね?
マリアンヌ様がいきなり、陛下の机からムチを取り出したかと思うと
「ふふ! こんなのが好きだなんて、これが一国の王の姿かしら!?」
「ホホホホホホ! 無様に床に這いつくばりなさい、ほらまた叩くわよ!」
「まるで犬ね、何 立とうとしているの? まだおしおきが必要みたいね!」
「犬は 人間の言葉なんてしゃべらないわ! ほらワンワンって吠えてみなさいな」
「●●●1部発現をカット・修正してお送りします●●●」
って マリアンヌ様による、本物の女王様プレイが、S・M・Lで生配信されちゃったの!」
「しかも、マリアンヌ様による お2人のプレイを邪魔しないよう
ハロルド様が“いつもの日”は、直々に王命で 部屋の近くを人払いされていたから
結局、最後までお2人の深夜の情事が S・M・Lで配信されちゃった」
「当時は、まだ S・M・L もみんな持ってなかったから
“あの夜”の事件も、S・M・L じゃなく、口頭での拡散がメインだったけど
この1件は、あっという間に国中に広まった」
「荘厳・厳格な国王として名高い、ハロルド様や
社交界でも氷の微笑を持つ、ゼロスマイルの賢妃・マリアンヌ様の信じられない1面がライブで配信されたから
あわや 王家の失墜か……
と思われけど、ここからがS・M・Lの 本当の始まりだった」
「あの配信が、ナルニア国に……あたし達 国民に刺さっちゃったの!」
「あれが、本物の女王様プレイか……クソッ、なんで私は 国王ではないんだ?」
「なんて羨ましい、俺だって マリアンヌ様に叩かれてぇぜ!」
「ふん、あのムチの使い方、まだまだね! 私の方が上手いわ」
「ハロルド様、這いつくばってる お姿もかっこい……やっぱりみっともないです」
――と 国民の反応は様々だったけど、あの事件が
S・M・L によるライブが、この国で爆発的に広まったの!」
「それからはもう、激動の毎日だったわ……
王都はもちろん国内中で、あっという間にS・M・Lを、買い求める人々が増え
気が付けばこの通り
今や、国民の7割が持ってると言われてるくらいになるなんて」
「ほら、あそこに居る、商人フォークフさんの笑顔を見てよ
この数か月、あの人の笑顔が消えた所を 見たことがないわ」
「それにしても、S・M・L って本当にすごいのよ?
私達、平民の中から中からも、S・M・Lによって
貴族に、しかも子爵家に召し上げられた方だって 居るくらいなんだもの」
「例えば、アシュフォード家なんてすごかった!
貴族はもちろん、国王陛下でも体験されたことの無かった
ドラゴンプレイを S・M・L でライブ配信されたことで、陛下から直々に
「ふむ、ドラゴンプレイ……か 盲点だったな
アシュフォードよ、その柔軟な発想力と 実行する行動力を評価し
貴公に 【子爵】 の位を授け、王国における 新たな貴族としての責務を果たしてもらう」
って貴族に召し上げられたのよ?
平民から貴族になるなんてあたし、初めて見た」
「あたしの婚約者も、アシュフォード家にあやかろうとして
「リザ、俺達もドラゴンプレイしないか?
あいつ等の生息地までは、少し遠いが、評価してもらえれば 俺達も貴族に仲間入りだぜ!?」
なんて言われたけど、流石に断ったわ。
あたしの友人・アビーと、彼女の婚約者が
アシュフォード家が 子爵家に召し上げられるうわさを、聞いてすぐに
「私達も、ドラゴンプレイをしてくる!」
と意気込んで旅立ったまま、消息が途絶えた事を 忘れてないからね」
「旅の途中から、S・M・Lでの配信も途絶えたし、今頃 氷漬けかしら?
ドラゴンが住む、あの山って寒いらしいしね。
脳みそまで筋肉な騎士団が 力試しで行くような場所よ?
ま、2番煎じのライブで貴族になれるのなら みんな真似するよね」
「そうだ、これも話しておこうかな。
S・M・Lのことだけど、陛下と王妃の1件以来
S・M・Lが【 サディズム・マゾヒズム・ライブ 】って呼ばれるようになったのよね……」
「ハイランダー様が城内で、プレイのための魔道具じゃないもん……って嘆かれてる姿まで配信されてたけど
あれを見る限り、ハイランダー様は マゾではないみたいね」
「せっかくこの国に来たのなら、向こうのギルドで貸し出し用のS・M・Lを借りてみたら?
みんなが色んなライブをやってて、毎日見てても 飽きないよ!」
あなたは、推しの配信トラブルを リアタイで見た事がありますか?