表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/171

第79話 幼い自分と御使い

「なあ」


『どうせ聞いてくると思いましたよ』


おれはキャサリンのオデコを自分の額でクリクリとこすってから、久しぶりのアイツに声をかける。


「さっきの話ってオレ?」


『・・・そうですよ。あなたです』


なんかだ歯切れ悪いな。なんだよその間は。


「それならちょっとだけ思い出した子のことも多分本物だよな?」


『本人は大層あなたに恩義を感じてましたから。人の短い生の中でも縁があればまた出会うのでは?』


「人の短い生っておまえ言い方な。そりゃ神様とかにくらべりゃなそうなのかもしんねえけど」


『神に寿命という概念はありませんよ。それでなんですか?』


「オレにはその時のこともムチで打たれた記憶もないんだけどよ、でもよく無事でいられたよな?今の俺だってそんなことやられたらミミズ晴れで血が滲むようなことなんだろう?」


『使いましたから』


・・・何を?


久しぶりに何言ってるんだかわからん。

以前は長ったらしい答えだったけど今日は短すぎだ。

隠してる、わけじゃあないよな?


「なんだよ、ナニがどうかはっきり言えよ」


『私の判断で当時あなたが使える全ての魔力を使って身体強化をかけました。魔力は微量しか確保できませんでしたが傷が後に残らない程度には防御できました。対処しなければ障害が残っていた可能性があります』


応えはいつも通り抑揚のないロボットみたいだけど。

少しだけ言い辛い感じが伝わってくるのは気のせいなのか?

どうだって俺にとっては同じだ。


『療養に時間がかかったのは魔力回復を優先して傷の自然治癒は後回しにしたためです。回復した魔力を使ってワタシがムチ打ちの記憶を消し去る暗示をかけました。そのためもう一度魔力が枯渇することになり自然治癒に時間がかかりました。痛みの記憶が4歳児に耐えられるものではありませんでした』


「全部つながったな。ありがとう、でいいのか?」


『私の権限による保護措置です。あなたが前世を思い出した時点で権限は剥奪されましたので、今のワタシはあなたをナビゲートする以外の力はありませんからご理解ください』


お礼言うしかないヤツだけど。

ご理解くださいってワザワザこいつが言うからは意味があるんだよな?

その時が特別だったってことでいいのだろう。


『今のあなたがどのような生き方をしようと何が起ころうと私は手出ししないということです。アナタ自身やアナタが大事にする人間が死のうとも私はナビゲートするのみです』


そんなの当たり前だし言われるまでもない。

たとえどうなろうとも。

俺は俺が選んだ道を進むだけだ。

たとえコイツでも。神様の御使い様だろうと、他人に頼って何とかしてもらわなければできないなら。

そんなのはもう俺の人生じゃない。

コイツだってそれがわかっているから言ってくるんだ。


「よく小さい時によく手を出してくれたもんだよ」


『この世界のあなたは自分で考える通りに生きるために存在しています。幸せになろうと不幸になろうとそれはあなたの選択ですので後は自分で何とかしなさいということです』


「とりあえず後は自己責任で考えて好きなようにヤレか?いつも通りだな」


『そうです。いつも通りです』


ハッキリは思い出せないから想像してるところもあるけど。


馬車の窓から外を見てた俺に路地の先でムチ打たれている子供が見えたんだろうな。

この世界の侯爵の子供の意識じゃなくて前世の意識に引っ張られたのだろうと思う。

今の俺が見たとしても同じように飛び出したと思う。


でもその後はきっと違う。

小さな俺は子供を庇うしかできなかったけど。ちょっと前の俺ならレーザー・ビームで即殺してるだろう。

そして今の俺ならさすがに事情を聞くしでもまずは止めなきゃいけないから魔法でその場にいる全員の動きを止めて・・・それから・・・・


俺の知らないところでいろんなことが起こって繋がって今がある。

そんなことを考えながら


スヤスヤ、スヤスヤ。


キャサリンの寝息に俺の寝息がユニゾンして深い眠りに引き込まれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ