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神様に辿りつく少年  作者: 水砲


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240/242

第240話 皇帝とゴルサット

簡易な正装に着替えてから、ゴルサットに連れられて宮殿の上階へ案内される。


見張りの兵士たちはゴルサットを見るとサッと道を開けるのだけど。

その後に俺を見るとなぜだか笑顔でお辞儀された。

客に対する歓迎の笑顔?

どこかの西の王国の宮廷とは大違いだ。

もちろん俺も笑顔を返すのが礼儀。うん。


これから皇帝へのご挨拶?と今後について??だ。


ゴルサットがそう言ったんだから。

友達になってくれ、って言うヤツのとこに会いに行って改めてお話して今後も仲良くやってこうね二人でこんなことやったら面白くない?みたいな『ご挨拶と打ち合わせ』

・・・ホントにそういうことでいいんだよな?


どうにもうまくかじ取りされてる感がハンパない。

無理やりとかじゃないけど『まあそんなもんか』『そうなってもいいか』みたいな方向に流そうとしてるというか。

イヤなら別に行かなくてもいいんだぞ?途中でやめたっていいんだぞ?なんて言いながらいつの間にかツルツル進んで先を促してるような感じがしてる。


扉の前に着いた。

大きな両開きの扉は朱色の生地に金で縁取りされて、ここが位の高い人の部屋だと主張している。

そして両脇には警備兵が立っていて、やっぱりゴルサットにはビシリと敬礼した上で俺にはニッコリ笑って頭を下げてくれた。


なんとなくだけど。そんなものなのか?って違和感がある。

これがガリクソン商会の社屋の中だってんならわかる、来客は全て儲けを持ってきてくれる存在だ満点の笑顔でお出迎え。

だけどここは帝国の宮廷なのだから兵士達の仕事はスマイルではなく警戒だ。やってくるのはヒットマンかもしれないしスパイかもしれない。


その笑顔が作り物じゃなくって心からの笑顔に見えるのは、俺がまだガキだからだろうか?

そうとしか見えないんだけどなあ。少なくとも悪意のセンサーにひっかからないからダマそうとかじゃない。

大好きで心の奥に絶対の敬意とか尊敬みたいなのがあって親しみがある、自分の気持ちをぶっつけても大丈夫だと安心してる。

何だか心にポンッって飛び込まれてコッチもちょっぴり照れちゃうような笑顔だ。

そんな俺も笑っちまうしかない。なんの警戒もなく素の自分を見せるなんて余程の相手だ。

握手して話してみたくてウズウズする。


俺ってチョロイのか?


「皇帝よユーリ殿をお連れした。入ってもよろしいか?」


ゴルサットが声をかけると少しくぐもった声で承諾の返事が返ってきた。

研究発表会で聞いた声。


「さあユーリ入ってくれ」

衛兵たちが両扉を大きく開いて皇帝の客間が現れる。

奥には執務机と本棚、手前には豪華なソファ。


だが人の気配はもっと手前で扉を開いたすぐ目の前にあった。


片膝をついた皇帝その人が頭をさげて俺に向いている。


「ご足労いただき御礼申し上げる。本来であれば私から赴くべきところです」



えええええ・・・



ゴルサットを振り返ってもプイと反対を向きやがった。

『俺はノー・タッチだから』って顔向きで表現してくれちゃってる。

あからさま過ぎじゃねえか?オレっておまえに連れて来られたんだけど。

とにかくそんなのヤメてもらうしかない。

「お願いすら不敬にあたるんじゃないかと思いますけど。お顔をあげて立ち上がって頂けませんか?なぜこの国で最も偉い方が俺なんかをそこまでしてくださるのか、どういうおつもりなのか?俺にはサッパリわかってないのですから」


顔をあげた皇帝はオレより年配だけどまだ若い。せいぜいが三十くらいだろう。

それでもしわ深い頬を立派な口ひげが隠して威厳を感じる。


そんな男と向き合った俺の肩書は?

今回の訪問で魔導士団の副師団長に任命された。あと魔法学院の助教授兼・・・学生?


「あなたは世界の理を司るだろう存在なのですから。改めましてよろしければ私と友諠を結んでいただけますか?」


立ち上がった皇帝から差し出された右手。


どうしたもんだ?

ゴルサットの方を見ると反対を向いていた顔がさらに曲がって後ろを向いた。


わかりやすい自己主張しやがって。

じゃあもう一回アンタを見たら一周回ってコッチを見るんだろうな?

絶対だからな!


「東の皇帝では友として役不足でしょうか?それともワタシが気に入らない?」


俺とゴルサットが暗黙のやり取りしちまったから勘違いされたようだ。真面目な瞳が俺を見つめているから、もう俺が決めるしかないのだろう。


立場とかそういうことではないのだけども。

なんだか当然の流れで握手する、みたいなのがいいか悪いかわからない。

そして迂闊に握手すると後々マズイことになりそうな気がしているだけなんだ。


相手は真摯な態度で俺を扱ってくれている。

この人の発言ひとつひとつに気持ちを感じるから。

普段は知らないけど今はまっすぐに俺と向き合おうとしているのはわかる。

ならばオレだって同じ対応をすべきだ。そうでなければ失礼だ。


「まずは話をしませんか?俺は帝国の皇帝が手を差し出すような相手ではないと思いますよ?研究者としてココにいますが国では魔導士団の副師団長を拝命している立場です。帝国になぞらえればそちらのゴルサット老師の部下のその部下、といった役どころでしょう」


わざとらしくゴルサットの名前を出してやる。

首は一周周りはしなかったけど(あたりまえだけど)やっぱり俺の方を向いてニカリと笑った。


「そうかそうか、ワシはそんな下っ端に稽古という名目でコテンパンにされたのか!これにはワシも気づかなかったなあ!」

ガハハと笑うのがイヤミったらしいからヤメとけ。


少しだけ考えてから皇帝は差し出した手をソファへと向けて座るよう促してくれた。


「この可哀そうな右手には部屋を出るときまで待ってもらいましょう。ソファへどうぞ、よろしければ東の茶葉でいれた飲み物はいかがですか?」



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