第24話 合格発表の日
合格発表の日は快晴のいい天気。陽射しがまぶしい。
まるで俺達の明るい未来のように!
・・・そんなキャラじゃないし俺。
無理やり前向きの言葉を出してもテンションはあがらない。
明るい未来なんてあるワケがない。憂鬱でしょうがない。
日差しの眩しさに焼かれるバンバイヤの気分がわかる気がする。
明るさや眩しさがつらい。
心をブスブスと突き刺してくる感じが痛い。
次席だなんて。
目立ちたくないって言ってるのに。
下手に目を付けられたくないのに。
首席じゃないだけましだと何度考えたか。
少なくとも同学年で俺より一人はできるヤツがいるのだから。モロモロをうまく負ける感じで、No.2だけど残念なヤツだ、みたいにやってくしかないのか?
めんどくせ。
無駄な労力。
興味ないんだけどがくせーせーかつ。
なんなのコレ。
キャサリンに聞くとこの学校では首席でも次席でもヒエラルキー順にやっかいな仕事を割り当てられるそうだ。クラス委員に生徒会。学内行事に他校との対抗戦。
時間欲しくて学院に入るのに学院に時間を搾取されるのか?
キャサリンは「どうせなら首席だったらいいよねー」とニヤニヤしてたけど、それだと俺の希望と違うでしょ?依頼通りに結果出してよ、家庭教師として問題でしょう。
あとはキルリスのおっさんがうまくやってくれることを祈るだけだ。
待ち合わせで発表時間の少し前に学院の庭に向かった。
試験のときにソフィアと一緒に座ったベンチ。
彼女はベンチに座ってソワソワしてる。
「おはよう。昨日はよく眠れた?」
ソフィアの顔を見るとホッペタも真っ赤だったけど目も真っ赤だった。
寝てないって顔に書いてある。
「ばっちりに決まってるでしょ!こんなことでドーヨーするワタシじゃないわよ!」
俺と目があうとすぐに意地をはってうつむいちゃう。
「そっか、そっか」
でも試験の結果に不安でしょうがなくて揺れている子。
そんな彼女がオズオズと俺を見て聞いてくる。
「あ、あ、あのね。あのね。」
「ん??」
「もし私が試験に落ちても、落ちても、ともだちでいてくれる?」
不安で不安でしょうがない目で見上げられた。
バッカだな。そんなこと。
なんか関係ある?
たかが学校にそんな価値ない。
小さい女の子が泣きそうになりながら聞くことじゃない。
「何があっても大切な友達だろ?違う?」
「うんっうんっ、違わない。そうだよ、そうだね、ずっとだよね」
「そうだよ。ずっとずっと」
大丈夫大丈夫。
うつむいてツムジが見える頭をなでたげる。
やわらかくてきれいな髪の毛。
かわいくってクリクリ撫でてたら気持ちよさそうに目を細めてる。子猫みたい。
「でもソフィアは受かってると思うけどね。今日の俺の勘は100%あたるよ」
「そうかな?」
「間違いないよ」
「そうかな?そうかな?」
「大丈夫大丈夫。落ちてたら責任持つから」
「まっ!!!!!」
ま?
まかせろ、責任もって慰めるから。元気にするから。
「い、言ったからね!ぜ、ぜ、ぜ、ぜったい責任取ってもらうからねっ!」
責任とる?おう。アレレ?
「う、うん、できる限り?」
「約束したからね!!」
大丈夫、ソフィアが落ちてるワケがない。
うん・・・うん?
心ここにあらずでニマニマしてるソフィアの手を引っ張って正門前まで移動する。
いよいよ受験の結果が張り出される時間。
俺のことはおいといて。ソフィアを早く安心させたげたい。
なんだかひとりでブツブツと
「落ちてた方がアリかもだけどそうするとユーリとのキャンパスライフが」
とか言い始めたから思考が迷走してると思う。
どうせ受かってるし、早く普通にもどさないと彼女のオツムがオーバーヒートしてしまう。沸騰したヤカンのように湯気が見える気がする。
係の人がやってきて、正面に組み立てられた掲示板に受験番号と名前が書かれた紙を貼りだしていくその瞬間に。
「ぎゃあっ!!!」
俺から声がとび出た。ソフィアからじゃなく。
なんだありゃ。
ま、まさか、こんなことって!!!
ソフィアはちょうど20番目だった。合格者100人中なので、やっぱりいいところついてきた。
ほら、ね。
でも俺の叫びはそっちじゃない。
ソフィアが受かったのはもちろん嬉しい安心したけど。
今の問題はそっちじゃなくて。
「ゆ、ユーリ、すごいすごい!!!!!首席じゃん!!!!!!!!」
俺の服の袖をひっぱってソフィアがわざわざ繰り返し教えてくれた。
うん、そーだねー。
ソフィアは自分のことより俺が首席だったことを喜んでくれるのだからやっぱりいいヤツ。
そんな彼女と友達なことが俺もうれしい。
とても嬉しいことなんだけど。
でもこの結果はうれしくない!!!!!
俺のノンビリじっくりの学生ライフを何だと思ってる!
キルリスの野郎め話がちちち違うじゃねーか!
怒りで頭の中なのに噛んだ。
その後、
「あ、あったあった」
ソフィアが自分の名前を見つけたのに、なんか残念そうに聞こえたのはきっと気のせいだ。
「おめでとうソフィア。二人とも20番内だから特Aでおんなじクラスじゃない?」
「そうだね、二人で一緒のクラスだね、ラッキーだね!頑張ったかいがあったね!!」
「そうそう、頑張ったな、やったな、ソフィア!!」
しかしソフィアの頭の中でユーリの言葉は上滑りしていた。
ユーリは首席入学。
この学院の首席は特別であり、卒業後は王宮で重用されることが間違いない。
女子全員がユーリを狙うに違いないということなのだから。