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第232話 宙からの来訪

宮廷へと向かう大通り。


馬車が五台も並んで走れるほどの広さの通りをバッハさんの馬車に先導され、カッポカッポと宮廷へと向かっていく。

沿道は人が何重も取り囲んで、人の群れが宮廷まで延々と続いているよう。

紙吹雪が舞い、花びらがちらされ、沿道の人々はこちらに向かって大きく手をふり、そして。。。


「ユーリ様!!」

「ユーリ様あーー!!」

「ユーリ!ユーリ!ユーリ!!」


熱烈盛大な


俺コール


え?

あー、うん。

ナニこれ?


シャルロットはお忍びだから、今は西の研究団の到着を歓待してくれてるのだよな?

姫さんはカーテンをしいた馬車で身バレしないようにしているわけだし、さすがに一般国民は姫さんがいるとは思ってないハズだ。

じゃあ俺?

俺だとして、なにこれ?

西の研究団の団長をたててくれてんの?

でも他国の研究団の団長の名前って一般の人たちが知ってるもんなの?


「なんか俺?期待されてる?なんなら炎の竜でも出した方がいいか?竜族の古龍でも上空に呼び出した方がいい?」


「やめとけやめとけ!慌てる気持ちはわかるけどよ?」


ジョバンがやんわりと止めてくれた。

そしてシャルロットが腹立たしい表情で隙間から外を眺めているのも印象的。


紙吹雪舞う王宮への大門の前。

ズラリと並んだ衛兵の中央では見慣れた大男がこちらに手をふっている。

その横にはジョバン副隊長。


「とりあえずちょっと行ってくるな。姫さんが表に出るわけにもいかねえだろうし歓迎されて放っておくわけにもいかないだろ。悪いけどジョバンはここで姫さんの警護してくれねえか?」


そんなの当たり前だと頷くジョバン。


「俺はおまえの活躍を高みの見物とさせてもらうぜ?なにせ俺様へのコールなんてカケラも聞こえてこねえときた。俺もS級魔導士としてそれなりには有名なつもりだけどな?だったら期待されてるヤツが答えなきゃなんねーよな」


ジョバンがニヤついて楽しそうに!笑ってるけど。姫さんを見るとくやしそうにこちらを見ているだけだ。


姫さん的にはどうしようもない。

相手はこちらの希望通り上位者しか姫さんが同行していることを教えていない。

これはこちらが出した希望なのだからここで出ていくことはできない。


止まった馬車から俺一人で降りた。


大門のまえに集まった群衆は数万人?もっとだろうか?とにかく人が延々続いてるのだからプレッシャーがすごいぞ。

この場にいる全員が俺を取り囲んでもなんでもないけど、すごい数の群衆ってそれだけでパワーがぶつかってくるんだな。


ユーリコールを繰り返す群衆の熱気があがり、今はもう戦闘前の軍隊の雄たけびに近い。

そんな波動がぶつかってくる中、しかしユーリは落ち着いた足取りでゴルサットの元まで進むのだった。

互いに目を合わせ、わざと周りに見えるように大げさに手を握り合う。


言葉はない。


だが手を握り合った瞬間で魔力による感覚共有が発動するの二人。


『なんだよコレっ!おまえ、俺のことをなんて伝えてんだよ国に!!』


俺は当然満面の笑みだ。顔と思いはウラハラだ。

俺だって随分大人になったつもりだ、でもなんなんだコレ、それならそーと言っとけよ!!


『すまん、と先にいっておくが細かい事はあとでな。それより気づいてるだろう?』


『うちの馬車の結界をやぶる程じゃねえけど、このまんまだと群衆に被害がでるぞ?』


はるか、はるか。

このカラッと晴れた青空が広がっている、それよりももっとはるか、宇宙(そら)の領域から。


光と闇を混成させた衝撃が弾丸となってまっすぐこの場所に向かって降りてくる。


「招待しておいて悪いのじゃがちょいと手を貸してくれ。ワシはどうして年寄りくさくなってしまった」


ついには口に出して依頼された。

そしてゴルサットは万全じゃない。


あの日ゴルサットは自分の持っている魔道具すべてを俺に渡してくれた。

あいつの力は3割も減ったから、どれだけ底上げさせてたんだろうと思ったんだけど。


その時から比べても半分近く力を落としている。

見てみればその表情や目元だって、覇気や生気といったものが薄くなっている。


「敵?の狙いはなんなんだ?これも祭壇魔術だとは思うけど、撃ち落とすには勢いがあるし周囲を闇と光が複雑に防御しながら突き進んでるぞ」


ホントに随分と手残った魔術だ。

この場にさく裂すれば群衆に東の宮廷だって一瞬で吹っ飛ぶだろう。

残るのはウチの馬車とその下の地面だけなんて笑えない。


「威嚇じゃろ?お前が着いたそのタイミングを狙っておるだろうから、お主や王女を傷つけられるとは思っておらんだろう。王女だろうが攻撃するぞ、群衆への被害も顧みないぞ、そんなテロリストの意思表示じゃろう。あとはおぬしの実力を大衆の面前で示そう、というところか。ところでもう時間がないな」


なんとなくわかるけど筋が通ってたのか?

後で聞くしかない、そろそろやっちまわないと。

群衆に被害なんて出さないけど、今の話ならバレないようにやりたいからな。


「ゴルサットは見てていいぞ?とにかく誰にも何にも被害が出ねーようにするからあとは頼む。どうかは何とも言えねーな」


同時に俺のナビゲーターへ、そしてインテリジェンス・魔法杖と共有だ。

「アレを捕まえられるか?」


『超光速に達しているため難しいでしょうね。迎撃はおもいっきり派手にやれば案外気づかれないものですよ?魔法杖も同調しなさい』


【力の権限】

<光射昇刺翔>


今の俺が力の権限を使えば神域に足がかかった魔法になる。

名前が神様っぽい感じで少しハズかしいのは仕方ない。先生に言われた通りにやってるだけだしな!


一瞬のこと。広場一帯が神の白く清らかな輝きで包みこまれた。

光は集まって空を駆け上がると、はるか上空で祭壇魔法の衝撃を直撃し吹き飛ばした。

晴天だった空が真っ赤にそまり、ゴゴゴと音を立てた大きな地震が周囲をグラグラと激しくゆする。


<土魔法 修復!>


実際に神の光が宇宙へとかけあがったのを知覚できた人がこの場に何人いたんだろうか?

まぶしい、と一瞬感じたあとに衝撃、空が赤く染まり、大地震。

そのころには一瞬の輝きなんて忘れている、記憶の隙間で大地震で割れた道も壁も一瞬で修復という寸法だ。


「やっとることは前にもまして無茶苦茶じゃなあ」


ゴルサットが俺を見てボソリ。先にある遠くを見つめた。


「俺は変わんねえよ。おまえと一緒だ」


分厚い胸板を握りこぶしでドンって叩いてやった。

そう言っておかないと、なんだかコイツが消えていくような気がした。

こいつに俺の<極回復>をかけてもかわりはしない。

いろいろな無理をしてきたんだろうし、俺の訪問にだって無理してくれたんだろう。


老いた、といえば一言で終わる。

こいつの魂の力も、生体エネルギーも、そして魔力を生み出す魔核も。

そのすべての使用する期限が近づいて神様へと力を返す時が近づいている、そういうことだ。


シンと静まり返っていた広間はたった今の天変地異すらなかったかのよう。

さらに巨大な俺のコールが町中に響き渡るのだった。


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