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第225話 砂の道

灼熱の太陽の下には見渡す限り砂丘が延々と続く

遠くでは陽炎が登る

空には雲ひとつなく、しかしそれは晴天の晴れやかさとは程遠い灼熱の地獄となる


一直線に築かれた石畳の回廊は砂に覆われて姿を隠し、砂に埋まった道の目印として遠くに見えるポールだけがその場所が回廊であると気づかせてくれる。


先頭を進む王国軍の馬車でキスリーノが御者席に座り、いかに己が役立つかを示すかのように魔法を連発していた

「ウィンドウ・ブレストッ!」


本来は街道であるはずの小さな砂丘を風魔法で吹き飛ばし道を開く


中級魔法を連発するキスリーノに若干疲労の色が見えても笑顔はさわやかだ。

この程度の疲労は疲れに入らないと言わんばかり。今まさにユーリの役に立っていることに幸福感すら覚えている満面の笑顔。


西の王国の人間がこの大砂漠を超えることはめったにあることではなく、一握りの商人か冒険者が高額な報酬のために命を賭けてわたる。

それ以外はせいぜい砂漠の端をかすめて、回廊の分かれ目から南下して南の王国の首都を目指すばかり。

南下せずに東へ直接進む回廊こそいまユーリたちが進行している道なのだけど、やはり旅人も少ないしちょくちょく砂に埋もれている。

馬車で進めるのは強力な魔法使いが砂を吹き飛ばしながらラッセル車のように突き進んでいける一団だけなのだから。


「なあジョバン?俺はあんまりいいたくないんだけど、アレってお前の役目だよな?」


ユーリはあきれ顔でジョバンに尋ねてもまるで気にした様子はない。ニカリと笑顔で応えるジョバン。


今回の旅で王宮が用意した強力な魔法使い、それはS級冒険者ジョバンである。

依頼はわかりやすいものだ、研究発表者の護衛とルート上における障害物の排除だ。

西から東へ行こうとする一団に随行するなら『砂の排除』は当然含まれる泥臭い仕事なのだから。


「あのニイチャンに『俺が行くか?』って聞いたんだけどよ?まあこれだけ思いっきり魔力を放ち続けるなんて滅多な機会じゃない。本人の訓練にもなってるハズだぜ?そのうちバテて交代してくれって言うさ」


魔力量は限界まで消費することを繰り返すことで超回復を繰り返す。筋肉と同じだ。

魔導士も高位になれば結局は体育会系なのだ。

冒険者一の魔導士であるジョバンしかり、東の帝国4賢人のひとりゴルサットしかりだ。


「別に構わねえけどな、なんなら俺もやるし。俺なら馬車ごと持ち上げてさっさと・・・いてええっって!」


シャルロットがユーリの内ももをつねると、悲鳴をあげるのをブスリとした顔でにらんだ。


「道中に起こる問題や不便はココでしか経験できないことですわ。東との交流を考えるなら知らなければ始まりませんわ!」

東の帝国は西からすれば敵国となる。

現在この二国間は探りあい化かしあいながら、それでも小安状態であるので正確には『仮想敵国』

この2国間の変化からシャルロットが感じる気配は『世界の節目』


これまで4大国が領土を奪い合い拮抗してきた大国同士の関係が変わる節目にきている。

それはユーリ・エストラントという国の規模に収まらない世界を見通す男によってもたらされた。


各国の賢明な施政者たちはすでに感じ取り行動を起こしている。

シャルロットからすれば、わかっておらずボケボケしているのは西の王国だけに見える。

最たるものが東の皇帝であり4賢人だ。情報も決断も早い。


東は軍が脆弱な分最も世界情勢に敏感に動く。

機を見れば躊躇せず干渉する。そんな東が今回あからさまにユーリに手を伸ばしてきた。


王政貴族政治の王道をいく西の大国と、知略と謀略により戦乱の時代を生き抜いてきた東の大国。

その2国が手を組むならば大陸におけるパワーバランスが大きく崩れることになる。

西と南が組んでもダメ、北と南が組んでもダメ。

最強の軍備と魔導部隊を持つ西、情報と知略に先んじた東が組むことで生み出す世界への強大な影響力。

世界はこの流れへ集約を始めている。


ユーリと直接対決して勝てる国などいないのだから、強力な武力は意味をなさないのだからユーリがいることで国家間のバランスは「武力によらない」関係となる。

長年東の帝国の課題であり弱点であった「武力の貧弱さ」が解消できるのだから東の外交上むしろ有利なのだ。

もちろん今回の研究発表という名目の会談次第。


今回の訪問がどういう結果になるかシャルロットにはわからない。

ユーリの引き抜きか、東と西の融和につながるのか。

ユーリがいるかぎり東と敵対ということにはならないだろうけど、引き抜かれてしまえば前提も崩れる。

そして深淵の森で実質的な支配者であるユーリとっては西の王国の立場に立つ必要性はない。

どの大国も危険に手を出せない森を掌握する唯一の男なのだから。


彼は自分の仲間たちの思いが深く情に厚いが、それだけのことだ。

たまたまに彼が愛したのは国王の右腕の一人である魔導士団長の娘であり、王国軍総司令官と尊敬しあっている仲であり、第二王女である自分の友である。

さらにはジンもいればフローラもいる、ほかにも多くの知己がいる。

そんな仲間たちと楽しく過ごすことが彼の希望なのであり、彼が西の立場にたっているのは結果論でしかない。


ユーリには西の王国の側という意識はあまりないはずだ。だが彼は西の民として生きてきた。彼の生きてきた道にはやはりその人々が関わっている。


異物としてはじこうとした王国から世界から求められる存在へ。うつろな彼の立ち位置が変化を促進してしまう。

時代が移ろっていく、国や世界の仕組みが変わってしまうなら。


第二王女という存在はどうなるだろう?


絶対にユーリを東に渡してはならない。

だがそれだけでなく、機を逃さず東の帝国に食い込む。


ユーリはその気質から勝手に取り込まれようとするだろう。問題は自分だ。


徒然なるままに想いをはせていたシャルロットがフンスと鼻息も荒く気合を入れなおしたその時に



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