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第214話 竜神様

「さぞや名のあるお方かと存じますが、どうかワタシの話を聞いて下さいませんか!?」


隊長の飛竜が必死な形相で俺に頭を下げてくる。

あなたは悪くないからやめてください。


「俺は最初から話をするつもりで来てるけど、おたくの『殿』にはその気がないんだよ」


勉強になったよ今日は。

竜種はやっぱりダメだとわかったもの。


「と、殿?この方の実力はどうみても神格クラスでございます!我らが無礼を働いてよいお方ではありませんぞ!?」


「神格?しかし我らは竜神様をまつる一族、竜神様と大竜以外のものに下げる頭なぞもってはおらんぞ!?」


竜の常識は普通の非常識。

こうなってくると竜神のしつけの問題なのか?

こいつらの考え方ってやっぱりだ。なんというか『竜がこの世界で史上最高』みたいなヤツなんだ。


「頭を下げてくれなんて言ってないぞ?対等に話をしようと言ってるがわからないようだ。あんたとは後でじっくり話をしよう」

この隊長と話するのがいい。理性と知性と常識をもってるヤツと話させてくれ。


「いえそうはいきませぬ!我らは竜神様の元で代々の首領に仕えてきた身、どうかどうかお慈悲を!!」


唯一まともな飛竜が必死の形相で拝むように頼んでくる。

あなたのせいじゃないし俺は真っ当な話をしたい。

相談して一緒に今の状況を何とかしたい、そう思ってるのに。

俺はどうすればいいのかトホホだ。


もういやなんだけど。こういうの。

また俺が悪役じゃない?

だいたい・・・だいたいこういうのは神様が何とかするもんじゃないのか?


困ったところに名案が浮かんだ。

頼むぞ俺の髪様!!


「なあおい?」


『・・・それってワタシを呼んだのではありませんよね?』


「わかってるくせに?ならおまえを呼ぶときの合言葉でも作るか」


『さっさと要件を言いなさいよ。どうせこの竜の絡みでしょうけど』


「そういうこと。もうこいつらと話しても埒あかないだろ?竜神って呼べないかな」


『ワタシの神格なら呼び出せますがあなたは格下ですからね。あと竜神は竜種の味方ですからあなたの言葉を受け入れるとは限りませんよ?』


「それでいい。別に竜の神様とやりあおうってんじゃない、人間にも竜種にもいい感じの落としどころを見つけたいだけだ」

とにかくこいつらと離してもラチがあかない。

親玉と話ができないならその上と話つけるしかない。


『ここにいる飛竜種くらい消滅させればいいでしょう?純粋な飛竜種は隊長と呼ばれる個体を除いて消滅しますが、亜種が世界中にコロニーをつくっています。飛竜と呼ばれる種が完全に消滅することはありませんから竜神も我慢するでしょう』


「いやあの隊長がな?話ができる飛竜がいるのは大事な気がしてよ、なんなら飛竜種の代表になって欲しいくらいなんだけど。あいつの願いをないがしろで滅ぼすのも後味悪いっつーか」


『そうは思いませんけどね?むしろあの個体を縛っているのはふんぞり返っている首長のせいでは?あの個体を消滅させた方が隊長も動きやすいでしょう』


言ってることは間違いないし管理者の視点なんだろうけど。

現実を生きてる側からすると、情けってのが欲しいじゃないか。


「それはわかるんだけどもなあ。まともに話ができる相手にお願いされたりするのってヘコむし、無視するのも心の中でつっかえるんだよな」


『まだまだ未熟ということですね』


呆れるように言われても反論できない。

何が正解かなんてわからないのだからコイツの言う通りなんだろう。

神様ならこんな願いは日々殺到するしそれを裁いているのだから。未熟と言われてるならその通り、でも俺は神じゃない。


「その通りだよ。俺が人間のレベルとは違うことはわかってるつもりだけど、だからって神様でもない。今の俺ってなんなんだって思うとよくわからないんだよ」


『迷える子羊の悩みにつき合うつもりはありませんけどね?いいでしょう、少し大人になったあなたを久しぶりにナビゲートしましょう』


次の瞬間。


ピシャアン!


雷光がきらめいて俺の結界を貫いた。


現れたのは、まだうら若い乙女と呼べる神聖なる女神様だ。

自分から宣言しなくても間違いない。

背後からは神力のオーラが吹き上げて黄金に輝く光が天まで立ちぼっている。そんな存在なんて女神様の他にいない。


「※※※※様に呼ばれたからきたぞ?オーバースペックのユーリ・エストラント」


※※※※はあいつ、じゃなくてナビゲーター、様?の名前なんだろう。


「こんにちは、竜神様とお呼びしても?」


「それで構わん。要件は何じゃ?」


美しいのにキツイ表情なのはいきなり格下のせいで呼びつけられて不機嫌なんだろうか?それとも神様っていつも慈愛の微笑みをしてるって俺の思い込みなのか。

話を聞いてくれるのはアイツの顔を立ててか竜種のためなんだろう。両方だよな。


「この飛竜さんたちと会話したいのですが話を聞いてくれないのです。このままでは滅ぼすことになりますけどそれも避けたくて。お口添えいただけませんか?」


一瞬、ほんの一瞬ゲンナリした顔をしたような気がした。


「現世の事柄に神は手をださぬのだぞ?お主が飛竜を滅ぼすのであればそれも世の黄金律なのであろう」

冷たく言い放った女神様は飛竜たちに見向きもしない。当たり前のように消滅をお認めになった。


「それはそれで構わないんですが、このままだと飛竜だけでなく竜種全般を滅ぼすはめになりそうなんです」

そうなんだ。飛竜の首長も話を聞かないけど竜はもっと話を聞かない。この流れで竜たちとやりあうなら全部やっちまうしかなくなる。


「それは捨て置けぬ。竜種は世の秩序を保つ種族である、飛竜の一部が消えると竜種の全てでは話が違う」


「それは黄金律には当てはまらない?これまでのことはわかりませんが、竜種が世界の秩序を保つ存在からはずれたかもしれませんよ?」


俺が思わず言ってしまった瞬間、女神様から立ち昇るオーラが黄金から深紅に染まった。

踏んではいけない地雷を踏みぬいちまったか?それでもやめるワケにはいかない。

このまま竜種とモメ続けて全滅させるしかなくなるかもしれないのだから、竜の神様には仁義をきっておかないと話が進まない。


「それがない証拠はワレという存在であろう?竜種を司るワレがここに在る、これが創造神様の定めた理なのだから。竜種が世に不要であればまずワレが消滅するであろう?」


そういういうもの、なんだろう。

神様の世界のことはわからない。

この竜神様が消えたら竜種はきっと滅ぶのだろう、今の竜たちの動揺は間違いない。


「それならば神様からの役割を果たせる竜種が残っていればいいですね?」


「さてな?創造神様からの神命をお主が理解しておるとは到底思わぬ。お主はまだ現世にあって人という種にしばられておるのだから。お主が竜種と話ができぬとほざく以上に、お主とワレでは会話が成り立たぬと感じるぞ?」


神って種族の根本にある『世の理』俺にわかるわけない。

だから話にもならないと神様から言われればそりゃそうだとしか返せない。


「わかりました。今の俺はオーバー・スペックとしてこの世の理の中でもがくしかないようです。女神様にお会いできて光栄です」


伝えた俺に竜神様ははじめて微笑んでくれた。


「間違ってはおらぬ、誰もが暗闇に挑むことで精進するのだからな。お主も常世と神域の間で悩むがよい、それはオーバースペックに課せられた宿命ではあるがまた特権でもあるのだから。ならばワレは神界へと戻らせてもらうぞ?本来常世に顕現してよいものでない」


「なんだかすみませんでした。大変なご迷惑をかけたみたいですみません」

頭を下げる俺に竜神様はもう一度微笑んでくれた。


「まあの?しかし※※※※様にひとつ借りた恩を返せたのでヨシとしておく。お主が今の言葉通りに感じたのであれば竜種にも一縷の情けをかけてくれるがよい。竜種の長老とも話すがよかろうぞ?」


清廉で暖かい空気が残っている。

女神様の気配が立ち去ったところでおれはナビゲータ様へと呼びかける。


「ありがとうよ?なんにも解決はしなかったけど、何かの道を教えてもらえたような気がする」


おれは※※※※様、口に出して発音できない神様らしいナビゲーターにお礼を伝えておいた。

こうなることはわかっていたんだろうけど。


『フフフ。あなたはまだ彼女がここに顕現した真の意味をわかっていませんよ?』


お?

笑ったのか?


めずらしいゾこいつが笑った!


『ワタシも竜神をまねて微笑んだだけです。こんなことでマウントとろうとするあなたは本当に〇ズですね』


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