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第205話 精霊達の忖度

ガバリッ


竜の子は突然膝を地につけると両手を地につけた。


いわゆる土下座の体勢だ。

なんだろうか、土下座ってこの世界の標準の何かなんだろうか?


「主様!どうかそれだけは勘弁してくださいっ!」


「ちょ、ちょっと待って」


ドカンッ!


竜の額を思いっきり床に叩きつけると、大きな衝撃でベッシリーニ邸が大きく揺れた。

そしてグッと顔を上げた竜の子が、再び勢いをつけて床に自分の額を打ち付ける。


土下座脳天割、これってこの世界では標準だったの?

サバちゃんから伝染したとか言わないよな、いやいや地竜の首長から吹き込まれたのか?


「竜神様と部族みんなの希望として参っております!何もせずオメオメと戻れようがありませんっ!」


ドカンッ!


「だ、だからやめなさい!キミの場合は割れるのが額じゃなくてこの部屋の床だから!」


「いえ、この気持ちが主様に届くまでひたすら続けるのみですっ!どうか、どうかご一考くださいませ!」


ドカンッ!


「ねえユーリ?」


「な、なんだい?キャサリン?」


ニコニコしていたキャサリン。

笑顔がちょっぴり引きつってるよ?


「ボクとしてはユーリが思った通りにして欲しいんだけど」


「うんいつもありがと(オデコにチュ)」


ドカンッ!


「でもこの家ってお父さんとお母さんの大切な屋敷なんだよ」


「そ、そうだね。夫婦の思い出がいっぱいってヤツだね」


ドカンッ!

メリメリメリッ!


床が大きくへこんで辺りいったいがひび割れた。


「ちょっとコレは困っちゃうな?」


口で言っても聞かないなら実力行使あるのみだ、竜の子が振り上げた頭を両手でつかむ。


「と、止まれ話を聞けって!」


「いえ止まれませんっ!私の気持ちが届くまでは!」


抑えてる俺の両腕ごとに頭を打ち付けようとする、しかもめっちゃ力が強い。

さすが子供でも竜種。


ドカンッ!


両腕を振り切ってさらに床に額を打ち付けた。


なんっつーバカ力だっ!

肉体強化に腕力強化、剛力の三重がけで上がった頭をもう一度掴んだ。


「もうできないぞ、なんで俺のまわりは土下座脳天割がブームなんだよっ!」


「いえやってみせます!私の気持ちが届くまではっ!」


それが俺への願いをかなえるたった一つの方法であるかのような口ぶりだ。

それ誤解だから!誰が吹き込んだんだやっぱり地竜か!?


今度は俺の力が大きく上回ってることに気づいて、グッと込める力がいっきに強くなった!


「させるかよっ!!」


レベル900の身体強化の三重奏だ、負ける訳がないだろうっ!!


グググググググッッッッッッ


激しく力が均衡してせめぎ合い。

それだけお互い必死だ、レベル差ほど力の差がないのは種族的な地力が違うからか。


こんの野郎っ!!


「ダアアアアアッッッ!!」


押し戻そうと更に俺も力を込めて。勢いよくっ!!


「私も負けませんッッッツ!!」


お互い力と力、意地と意地の張り合いが加速する!



ベキベキベキベキベキッッッッ!!!

「ちょ、ちょい待ち、えっ?」



ドッゴオオオオオォォォン!!!!



ベッシリーニ邸2階の俺達夫婦の部屋。


激しい衝撃と轟音が鳴り響き、あまりに強い二人の踏ん張りで床が耐えられず吹っ飛んだ。



その後俺は一晩中土魔法と精霊魔法を駆使して屋敷を元に戻したのだった。


崩落して1階に『落ちた』俺はすぐ先で唖然とするキルリスとマーサさんに目があった。

怒るかあきれるかキルリスの表情が悩ましい。

しばらく俺を見つめていたキルリスは「明日の朝までに直しておくこと」と一言だけ告げて、マーサさんとキャサリン3人で寝室に引き上げた。


キャサリンが両親の部屋で寝るのはしょうがない。

妊婦さんだしね。体大事睡眠大事。

でも寂しい。


竜の子はギンさんが首を咥えて庭に連れて行ってくれた。

ロボのところで他種族と接する際の心得を話をしてくれるらしい。ありがたいったらありゃしない。


「なあ。あれって秘書の役目じゃねーの?」


文句を言う相手もいない寂しい状況。もくもくと作業をするのにも飽きてきた俺がちょっとイジわるくウサギに話してみたら、


「そうね。私も行ってみるわ?」


ピョンピョンとウサギもギンさんの後を追いかけて行ってしまった。

なんだよまじめかよ?

そこは「アタシにアレの面倒みれっての!?アタシが死ぬわよ!?」くらい噛みついてくるかと思ったけど。らしくない。なんだか俺がさみしいんだけど。



「主様はウサギちゃんのこと。どう思われてますか?」

もくもくと作業を続ける俺。

癒しトカゲちゃんがヒョコンと胸ポッケから顔を出してスルスルと首のあたりに張り付いた。

うっ。こそばったいよトカゲちゃん。


「自分勝手なアホなヤツかな?どうして?」


「ウサギちゃんを主様がどう思われてるのか少しわからなくって」


俺は土魔法で壁を作り直し、精霊魔法で柱を補強しながらトカゲちゃんと何でもない話をした。

夜の暗闇を手伝ってくれている精霊さんたちがほのかに照らしてる。

話し相手が見つかった俺、もうトカゲちゃんが秘書でいいだろう。


土魔法はいいけど精霊魔法はその。精霊さんたちに労働させちまうことに心でわびながら『久しぶりにちょっとみんなで遊ぼうよ』みたいなフリして魔法を操って。

森を管理する精霊たちは自然の恵みを与えてくれる。簡単に木材も鉱石でもガラスでも準備して加工してくれる。俺は形を整えて窓枠やドアを作っていく担当。


《あんたね?精霊たちも楽しく遊んでる体だけどわかってるに決まってるでしょ?アレ、あんたに気を使わせないよう楽しく遊んでるフリしてるのよ?》


「あっ・・うう・・・ごめん・・・」


《まあいいのよ、精霊達もあんたの役に立ちたいだろうし。精霊の神様から頼まれてるしね》


手間をかけさせた上に、き、気をつかわせちまってんのかよ?

なんだよコレが忖度ってヤツか?

俺は忖度されてんのか?


「主様はウサギちゃんのことはお嫌いなんですか?それなら私の方からもお手伝いできることもあると思います」


まじめなお顔のトカゲちゃん。


「嫌いじゃない。かな?好き嫌いなんて気にする相手じゃないっていうの。あの好き勝手やらかす感じが半分は迷惑で、でもこいつだからしゃーないみたいな。みんな俺を敬って協力してくれるけど、アイツはそんなのわかった上で勝手にやらかす感じ?あいつも気を使わないからコッチも気をつかわなくて楽なんだよ」


まじめな子にはまじめにお答えするのが礼儀。

でも説明下手だよな、なんていえば伝わるかわからない。

もっとうまく伝えられればいいのだけど。


「私には難しいですけど、でもわかりました!ウサギちゃんは『ちょっと別枠』な感じなんですね?」


「ははは、どうなんだろうね?俺にもよくわかんないわ。アイツはアイツだし縁があっていつも俺の腹の中にいるし。それはそれでいいんじゃねえか、どうせそんなもんだろうって今は思ってる」


好き嫌いとか迷惑とか、そういうのとはもう別枠なんだよなアイツ。


「わたしは、わたしは・・・どんな感じ、なんでしょうか?」


そんなのは決まってる!

「俺のなかでカワイイが過ぎる。最大級の癒しだし大事とっても大事、守りたいのトップクラス。なんっていえば通じるんだろうなあ、目の中にいれても痛くない?そんくらいカワイ大事で貴重。伝わってる?」


「は、はいっ」


パクンチョ!


「うひょ?トカゲちゃん?」


首筋にトカゲちゃんが、パクって。


「キ、キ、キ、キスマーク、つけちゃいましたっ。カワイイって言っていただいたお礼ですっ」


か、かわ、かわい、かわゆいトカゲちゃんっ!


「わたしも、わたしも勝手しちゃいましたっ。ダメですか!?」


一生懸命なトカゲちゃん。

俺はを手のひらに乗せて頭を指で撫でてみた。


「大丈夫大丈夫。じゃあ今日はキスマークつけてもらった記念日だ」


「はいっそうです!また、またしますから!」


真っ赤なトカゲちゃんはヒュパンッと俺の胸ポケにもぐっちゃった。



明け方。遠くの空がちょっぴり明るくなってきた。

屋敷を見上げる俺。吐く息も白い。


何とか恰好ついたなあ。


庭に出てみると竜の子はロボに寄っかかって眠りこけてた。

ついでにウサギも。

ギンさんは俺に気づいて足元に絡んできた。


「ユーリよ、あまり若いヤツラをかどわかすでないぞ?」

しょうがないなあって感じで俺を見て笑う。


そんなんじゃないって。

ギンさんがそばにいてくれる温かさで俺もホッとする。


「かどわかしてないし。トカゲちゃんもギンさんもウサギだって大事だし」


「ワレも仲間にいれてくれるのか?まあよいわ、そういうのもまたお主の宿命じゃろうしな」





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