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第202話 お留守番と来訪者

どうしようか?

やっかいごとばかりが俺のところに舞い込んでくる。


東行きはゴルサットとのだ。アイツが約束を守ってくれたのだからいい。

俺一人がぷらっと行けば簡単なんだけど。発表する原稿だけ誰か作ってくれて。

なぜに面倒な話になるんだ。


ああっとそういえば。


「ねえねえキャサリン?」

「なんだいユーリ?」


どうしたの?って何の疑いもないマナコ。

あれ?


「ちょっと東の国に行ってくるからその間は大事にしててね?」

「え?」


俺は当然キャサリンは知ってるものと思って話してる。

お休み中とはいっても研究所の所長だし、調査隊では隊長みたいな立場だったのだから。


「国王から言われて。あれ?キャサリン知らない?」

「知らないけど?なんのことかな?」


雲行きが怪しくなってきた。

キルリスから聞いてないの?


「ほらゴルサットのおっさんが調査団の研究成果を持ち寄ってカンファレンスやろうって。約束通りこっちの王宮へ手をまわしてくれたみたい」


「ボクのいないところで?しかも東に行くの?ユーリひとりで?」


お目目がジトリとなってきた。

雲が出てきて雨が降り出す?いやいや嵐がきそう。


「なんだかシャルロットも行くことになっちまって。もちろん二人だけじゃないよ?ザハトルテさんも一緒だしジョバンにも行ってもらおうと思ってるんだ」


「それでボクは?」


「え?お家でこの子のことを頼むよ?」


「え?ボクはお留守番なの?」


え?の交換が続く。

面倒がふってきたのに家庭の危機までやってくるのか?


「えっ・・・う、うん。子供お腹にいるし、長距離だし、なんかあるといけないし」


ツワリは終わりかかってるけど。

大分何でも食べられるようになったけど、大きなお腹で人込みなんて絶対ダメだっ!

どんな病原菌が。


「その間にユーリは王女様や研究者たちと楽しく研究トークを?ボク一人を置いて?」


「そそそそういう王命なんだよお」


キャサリンからジトリと見つめられてカンじまった。

サバちゃんのこと言えない。


「ボクこれから泣くから。赤ちゃんも悲しんじゃうと思うけどでももう決めた、ボクは泣くからっ!ふえええぇぇぇぇ~~ん」


泣いた。


「な、泣かないで、泣かないで、お願いだから。赤ちゃん生まれたら一緒に行けるから、世界中どこにだって行きたいところにいけるからっ!」


「ホント?」


「ほんとのほんと。だから涙拭いてお鼻もチーンしてほら」


「うぅぅぅ、だったら待ってる。すぐに帰ってきてね?(チーン)」


「うんすぐに帰ってくるから!」


「どれくらい?」


「ゔ・・・2か月くらい、かな・・・?」


「うっうううぅ・・・ふえええぇぇぇぇ~~んっ!」


また泣いた。


「ほらユーリ、キャサリンをあんまり泣かせちゃダメよ?お腹の子供に響いちゃうわよ?」


「まマーサさん、この場合俺どうしたら」


「あらあらあなたの方が泣いちゃいそうね?いいわよ、母上の胸でお泣きなさい?」


マーサさんがポンとたたいたお胸がユサアと揺れる。

片目をつむる仕草がチャーミングだ。


「だ、ダメだ!!お母さんのデカいおっぱいにユーリを慣れさせちゃダメだ!!今ならボクのオッパイだって結構・・・」


振りかぶるキャサリン。

あ泣き止んでる。


「あら残念ね?あなたもたまにはユーリに甘えたくなっただけよね?」


マーサさんがツンッとキャサリンのオデコをつつくと、テヘヘと照れて笑ったキャサリン。


「だってしばらく会えなくなっちゃうし」


いたはずのキルリスは会話がはじまった後にいつの間にかいなくなっていた。

キャサリンに一言いってくれてもよかったのに。なんでもかんでも俺におしつけやがってあの野郎め!




そんなバタバタがあった翌日の昼間。

ピ~ンポォ~ン。


「こんにちわぁ~」


ベッシリーニ邸の呼び鈴が鳴り、男の子の不安げな声が響いた。


コバルトブルーでサラサラの髪に少し垂れた青い瞳、女の子のような長いまつ毛、筋の通ったお鼻に血色の良いキュートな唇、白いお肌。

背丈は低く幼い表情が庇護欲をそそられる。

守ってあげたい美少年がそのまま絵画から抜け出たような子どもが、自分より随分と大きな玄関の前で不安そうに扉が開くのを待っていた。


「はぁ~い」


返事をしたのはキャサリンだ。

洗い物をしているマーサの代わりに、いそいそと大きなお腹を抱えて玄関を開ける。

妊娠しているお母さんが出ていくにはいささか不用心に思えるが、この敷地内にはキルリスとユーリのダブル結界が張られて敵意や悪意に不浄な気は一切超えられないし、玄関には神聖なるグレートウルフが目を光らせている。

此の世の存在では彼女に危害を加えるのは無理なのだ。


ダンボールを抱えた男の子はロボのお眼鏡にかなったようだった。


「ユーリ様いらっしゃいますかーーー?」


男の子は元気よく、ちょっと緊張している感が見え隠れ。頑張って大きな声で来訪の意図を告げる。


ユーリ様?


キャサリンは呼び方に少し違和感を感じたが、ユーリは魔法師団の副師団長にも任命されたし以前から王国軍の臨時指南役という役割も担っている。様付けされてもおかしくはない。


「あら随分可愛らしい子だね?今日はどうしたの?ユーリは・・じゃなくてうちの主人は(照れっ)ただいま留守にしてるんですよ~」


お届け物かな?

そう思ったキャサリンが優しく主人の不在を伝える。

魔法学院の教授もしているキャサリンは、幼い子にも優しく諭すように教える名教授だ。

ユーリのことを「うちの主人」と言い換えたところで照れてしまっているのが、新妻であり未だラブラブなカップルでもある彼女の初々しさだった。


「いえ~竜神様からお告げがありましてーーー。ユーリ様のところで修行してこいって竜族を代表してまいりました~~」



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