第198話 仲間がいる
「これは主殿、もっとゆっくりでよかったものを」
洞窟は広いんだけどサラマンダーの体も大きい。
大きいものでは5メートルにもなる。
そんなサラマンダーが数十頭も集まると広い洞窟がギュウギュウのすし詰め状態だ。
先頭でオレに挨拶してくれる首長の前へポッケからトカゲちゃんを差し出す。
ペタペタと首長の顔を這い上がると頭の上へとおさまった。
「先日は援軍ありがとう。みんなのおかげで今は落ち着いてやってるよ」
「恐れ多い。いつ何時呼ばれようとも参上する所存。どんどんと我らを振り回し高みへと駆け上られるが我らにも幸いなり」
お礼をいってるのは俺なのに、巨体のサラマンダーみんなで平服されると自分がすごい統治者みたいだ。
「今日は俺の昔からの友達を連れてきたから顔くらい憶えてやってよ。これでも人間の中じゃ偉いんだぜ?」
「皆さま突然の来訪失礼しましたわ。ワタシはシャルロット。西の王国で王女をしておりますの。今日は皆さまとお会いできたことを喜ばしく思っておりますわ」
俺からの紹介は簡単でいい。
なにせ王女だから口火さえ切ればあとはうまくやってくれるんだから。
「これはご丁寧に。主殿のご友人であれば我らの仲間、この森を訪れる際は我らを頼られるがよい。身の安全を全力で保障しよう。それと」
パチリッ
シャルロットの前に小さな火花がはじけた。
「炎の加護なり。ご友人にとって今後あらゆる場面で炎は味方となるであろう。この深淵の洞窟にまいられた土産也。受け取られよ」
え?
俺そんなの知らないけど。
《あんたは加護を与える側でしょう何を言ってんの?だいたいサラマンダー一族最高の加護はいつもあなたの胸ポッケにいてくれてるハズだけど?》
そ、そうだった。
これ以上なんてありえるわけがない。
「ありがたく頂戴しますわ。炎の守護聖獣サラマンダーの皆さまに神のご加護を」
またも最敬の礼を行い印を切るシャルロット。
俺は首長の頭にのっかっているトカゲちゃんに手を伸ばす。
「しばらくは実家でノンビリしてるかい?」
言い切る前に俺の手にピョンと飛び乗ってきちゃった。
いいの?
トカゲちゃんを俺の目の高さまで持ち上げると・・・ポロポロ。
大きなお目目から、お目目とおんなじくらいおおきな水滴が溢れて落ちる。
「ご主人様、ワタシはもういらない娘なのですか・・・?」
ぎゃあっ!
俺をそんなに責めないで!
「しゅ、首長、娘さんをお預かりしてもいいかな?」
「すでにお預けした娘なれば主殿の都合に沿われるが我らも嬉しい。まだまだ力も足りぬが我ら一族全力で援助するので引き続きお願いいたす」
「世話になってんのはこっちだよ。短い間しか会えなくて悪いね、大切にするから」
「御意っ」
「じゃあトカゲちゃん行こっか・・・って、あれ?」
トカゲちゃんの涙は止まることなくポタポタ落ちてる。
「大切になんて恐れ多いですっ・・・ワタシの方こそ命を賭してお仕えいたします・・・」
やさしく胸ポケットに入れて、どういう顔をしていいかもういい加減あやしくなったシャルロットをつれて再び転移した。
ついさっきまでと何も変わらない王宮のプライベートスペース。
部屋に戻ったことに気付いたシャルロットはふらふらとテーブルに手をついた。
「あとは竜だな」
「へっ?」
シャルロットから王女様にあるまじき感嘆符がはみでた。
「竜族の首長と若頭が俺を罠にはめて殺しに来たから返り討ちにして封印した。竜族の代表に滅ぼされるか責任とるか連絡寄越せって伝えてある。単なる脅しだけど」
「はあ」
引き続いて間の抜けた返事。
「あとは水神の加護を受けたシーゲートと協力しあう約束もした。今回の旅はだいたいそんなものだと思うけど」
ガクリ
テーブルにうつぶせてしまったシャルロットはもう沢山と腕をふった。
「いろいろと聞きたいことがありすぎますけれど。少し私の中でかみ砕いてからでないともう何がなんだかわかりませんわ。今日はお開きでよろしい?」
「それじゃ今日は帰るわ」
「また近いうちに。必ず。絶対にっ!時間をとっていただきますからね?」
「わかったわかったって。今日あったことは秘密で頼むよ」
「当然です、こんなこと伝わったらえらいことになりますわ。でもユーリ?」
「ん?」
「秘密を教えてくれてありがとうございます。ワタシと一緒にいてくださろうとするお気持ちは受け取りましたの」
大げさにお礼言われると照れちまうから。
気にすんなそういうのやめとけ。
「こうなってるからどうすればいいのか俺にはわかんねえけど。これだけは憶えておいてくれ」
俺がいないところでひとりで泣いたりしないでくれよ。
仲間なんだから頼れって。
「今のお前はひとりじゃない。俺はどこにいてもお前のことを気にかけてるし仲間達も力を貸してくれる。人間社会のゴタゴタはわかんねーけど、なんかあればみんな力を貸してくれる」
「うん」
子供のようにうなずいたシャルロットが俺の手をキュッと握った。
どうにも思いつめて一人で頑張ろうとするから。
滅多にないけど安心すると子供みたいに戻っちまう。
ちょっと年とったからって、ちょっと美人になったからって。いきなり大人になんてなれるわけない。
大人だって不安の中うろうろしてるだろうに。
「じゃあまたな?おまえには俺と仲間達がついてることを忘れんなよ?」
「忘れるわけがありませんわ!」
笑う笑顔が自信で輝いてたから、大丈夫なんだろう。
ひとりだって不安になることなんてない。
前世の俺のようにさせない。
ひとりで死なせはしない。
(前話の後書きの続き)ので感謝をこめてこっそりアップです
年末年始に向けてどーやれば楽しんで貰えるか頭ひねってる今日この頃
上の行いつの間にか消えたら、あーどうにも出来なかったんだとご勘弁を




