第197話 小旅行
「ごめんなさい」
しばらく涙を流していたシャルロットがホッと息を抜いた。
美人の友達でこの国の王女様。
どうすればいいかなんて俺にはわからない。
でもココまでの俺が何かを間違ってるなんて思わない。自分で選んできたことだから、成功だろうと失敗だろうと間違いじゃない。なるようになっただけだ。
だからって。友人を泣かせたくない。
一緒にいることを望んで涙まで流してる友人に、俺は何ができるんだ?
「なあ。ちょっと俺と旅をしないか?ほんの1時間くらいだ」
「いいけど、地図でも広げる?」
涙をぬぐいながら少し笑顔。
気分転換の空想の旅だって思うよな、でも違うんだな。
俺は腰に下げたエルフの短剣に軽く触れる。
《いいわよ?ここの王族とは古の縁があるしエルフたちも拒絶しないわ。サバちゃんに話を通すからちょっとだけ待って》
胸元にはいつものトカゲちゃん。
「ご主人様のやりたいようになさいませ。サラマンダー一族は即座に集まります」
俺の気持ちを即座にくんでくれる仲間達。
シャルロットは俺が何をやってるのかわからないと言った。それなら俺にもできることがある。
「ではシャルロット王女、お手を拝借」
しゃれっ気で手を伸ばすと白い手を重ねてくれる。
「うふふ、楽しみな気分転換ね?」
まだ冗談だと思ってるけど。
俺は魔法を展開する。
<亜空間転移>
シュンッ
突然の場面転換。俺は慣れてるけどシャルロットはビックリして当たり前だ。
振り返ると美しい王女様がガクゼンとしている。
目の前には懐かしいエルフの大樹が俺達を見下ろして歓迎してくれてる。エルフの森だ。
精霊達が舞って幻想的に輝く姿は変わらない。
バタバタと見知りのエルフが駆けてくる。
「主様遅くなりました!なんならここで誠意をみせるために!」
サバちゃんが走ってきたけど、挨拶する間もなく瞬間的にジャンプしそうに体をかがめたから慌てて手を振る。
「土下座禁止だからな?それはそうと俺のほうこそ無理いってゴメンね」
「何をおっしゃいますかっ!我らエルフ一族は主様の一の眷属としていつどんなご命令にも従いまするzu・・」
多分ちょっと格好つけて「まするぞ」って言いたかったんだろうけど・・・
「噛んだな」
《噛んだわね》
「土下座は勘弁して」
《あの娘は脊髄反射で土下座するから止めるの無理なんだけど》
「くっ!こうなったらっ!」
ヒューン
ジャンプして空中で正座の体制を取り。
地面に着地した瞬間に頭を地面に・・・
「やめなさいってば!」
頭を地面にたたきつけるまえに手のひらを差し込んで頭を受け止めた。エルフの筆頭巫女さまだって話してるのにシャルロットの前で流血させるわけにいくかって。
「ひ、ひええええっ!ワタクシなんぞの頭を主様が抱えられて、もう、もう、臣下失格ですうううぅぅぅ~~~~!!」
そしてさらに頭を叩きつけようとふりかぶったところを
ベチンッ
手を差し込むと額を叩いちゃったゴメン。でもダメ
とまった頭をそのまま胸に抱きしめると強制停止。
「さ、サバージュ巫女様?紹介したい"人間"がいるんですが」
やっと会話ができそうなので、また何かやり始めるまえに間髪入れずに丁寧に。俺は人間だし相手は高貴なエルフ族の筆頭巫女様だ。
「は、はいっ!女王様から先に連絡いただいていますっ!ユーリ様様っ!!」
はて。
「さ、さまさまって」
「ワタシなんぞに『様』を付けていただいたらユーリ様様には倍付ですっ!なんなら3倍付しますよっ!」
ダメだ。
シャルロットに紹介するつもりなんだけど。サバちゃんが話せば話すほどシャルロットに何かを誤解される気がする。
「シャルロット、この方がエルフの巫女様だ。女王不在の間エルフの王国を取り仕切っていらっしゃるんだ」
突然のフリになってもシャルロットが崩れはしない。
第二王女として幼少から鍛え抜かれた瞬発力と察知力は大国の姫だ。
「はじめましてエルフ王国の巫女様。西の王国の第二王女シャルロットですわ。今日は突然の訪問をお詫びします。ユーリが私のわがままを飲んでくださいましたの」
俺が勝手に連れてきたんだけど話をうまくあわせてくれる。
「こちらこそはじめまして人間の国の王女様。エルフ女王の名代サバージュですわ。皆のまとめをまかされる者になりますの。やはり西の王家の方は私たちと親しみのある匂いがしますね?」
おお二人とも表の顔だ。
サバちゃんいつもこうしてたら見直すんだけど。
そして俺の眷属。うん。ど直球すぎる。
「サバちゃん突然悪いね?俺が調査団でまわった場所を王女に見てもらおうと思って。やっぱりサバちゃんのところに来ないと始まんないし」
そう言うと俺達を歓迎するように森の大樹が明るく輝いた。
精霊達が祝福してくれてる。
これはシャルロットが精霊達に歓迎されてるってことでいいのかな?
《そういうこと。西の王族は精霊達の加護を受ける素養があるしシャルロットちゃんは十分愛されてるわよ?今も精霊がついて見守ってくれてるし、あなたと縁があるしね》
俺が大樹に手をふると横にいるシャルロットもパタパタと手をふった。
さらに精霊たちが集まって来る気配。
ブワリッ
輝くオーラが大樹からあふれ出して俺達を包み込んでくれた。
「精霊の祝福?」
「精霊達が歓迎していますわ。あなたに精霊の神々のご加護を」
サバちゃんがすっと目をつぶってシャルロットに印を切ってくれた。
悪しきものを断ち切り聖なるものへと道を繋げる。
「ご歓迎ありがとうございます。ワタシからも歓迎してくださる皆さまへ感謝を」
スカートをつまみあげて、王族が他国の王族への信愛と友情を現す最高位の淑女の礼で頭を下げる。
「ふふふ、頭をお上げくださいませ?ユーリ様に連なる方から頭をお下げいただきますと、こちらとしましても・・・」
サバちゃんに優雅な微笑みが浮かび口元に手を添えて。
動こうとしたサバちゃんの首ねっこをひっつかむ。
「土下座禁止。言ったよな?」
「はっ!?今ワタシは何をしようと!」
だから土下座だろ?
反射的にやることじゃないよな?
「サバちゃん?シャルロットは人間の中で随分偉いんだけど俺を頼ってくれてるヘンな奴なんだ」
むっ?シャルロットの目つきが豹変したけど。
瞬間で俺をにらむなよ。
「俺の友達なんだ。悪いけどよろしく頼むよ」
「くれぐれもそのご縁を自ら手放すことがなきように、これはエルフの女王から下されたアドバイスです。われらはユーリ様を中心としたお仲間同士ということですわね?」
「そうなりますね、よろしくお願いしますわ。今日はこんな貴重な知己が得られたことをとても嬉しく思いますわ」
美女ふたりが笑顔でふんわりと手を握ってるから、少し落ち着くのを待ってから。
「じゃあ今日は急ぎ足なんでまた来るわ。今日は立派なサバちゃん見れて嬉しかったよ、いっつもそうだと尊敬しちゃうよ」
俺はシャルロットの手を通り亜空間転移の魔法を発動した。
真っ赤になって後ろに倒れていくサバちゃんに風魔法でクッションを準備するのは忘れない。
前回更新の後に総合評価ポイントが100ptを超えました
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作品は200話目前です、次のパートへの前触れがパラパラとはじまってます




