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第162話 魔物遭遇

翌日。

さっそく参加国の研究団が森の奥へと進む。

天気は良好だけど進むにつれて魔力濃度があがり魔物の気配が濃くなっていく。

護衛の兵士たちの顔も引き締まる。


ドドドドドドドッ!


「グレート・ボアの群れだ!各員研究員を守れっ!」


木々の間からイノシシの群れが雪崩のように向かってきた.

3メートルはあろうかという巨体が数十頭もいるだろう。

木々の間を器用ににすり抜けてスピードを落とすこともなく突進してくる。


「ぎゃあっ!」


南の兵士がボアを切り倒そうと剣を振りぬいて固い毛皮にはじかれた。横にズレた体はすぐ後ろをかけてきたボアに正面から吹き飛ばされて吹っ飛んでいく。

次から次へと走って来るボアの最初の一匹をどうにかしたって意味がないだろうって。

流れるように続いていくボアの群れ。ジョバンは大木を盾にそこから三角形の結界を張って後ろの研究員や兵士たちを守る。ボアが木陰の人間を避けていくように計算してある。


別にコイツラは俺たちを襲ってきてるわけじゃない。ただいつも通りに突進しながら移動しているだけだ。やり過ごすのがよし。


「すごいねえ」

「これだけいると壮観だね」

他人事で申し訳ない。


俺はとっさにキャサリンの腰を抱き上げて、そのまま目先の大木の枝に跳躍した。今はふたり枝に腰を下ろして群れの流れを見下ろしている。


「なんだよおまえら。高見の見物で手をぬいてんのか?」

スーッと浮かんできたゴルサットが俺の横に座った。


「おっさんだってそうだろ?できるヤツが全体を見てやらねえと助かるモンも助からねーだろ。これでもさっき吹っ飛ばされた南の隊長に結界張って守ってんだぜ?」


一応な。

飛ばされて木を何本もへし折ってとまった南の隊長の周囲に結界張ってヒールかけてるんだから、働き者なんだぞオレ。

森の木々で視界悪いんだから誰かが全体の状況を俯瞰してやばいヤツに手助けしないと、だろ。

オレはただの研究員なんだから上出来では?


「だいたい1トン近くあるボアが連続して突進してくんだぜ?刀とか盾とかいう話じゃないってわからないと」


「死ぬ前にはわかるといいがなあ。ぼちぼち群れが通り過ぎそうだ、晩飯に1頭くらいは狩っておくか?」

オッサンがスルッと木から飛び降りてボアの背に飛び乗った。


ザンッ


首元に手刀一線。スッと飛び降りると首の飛んだボアが目の前の木にぶつかって崩れ落ちた。


「おーい誰か頼むぞお」


ゴルサットの呼びかけにマスク副隊長が面倒くさそうに寄ってくる。


「隊長?食べるまでには血抜きして皮をはいで解体してって誰がやるんですか?」

「そりゃあなあ。ワシも年じゃし手が震えて細かい作業はとても若いもんにはかなわんし」


マスク副隊長がヤレヤレって首を振っているからいつものことなんだろう。

やりたい放題かよゴルサット。


「しょうがないですね。若いヤツラにやらせますから帰ったら一杯おごってやってくださいよ?」

「おまえだって若いじゃろう」

「あなたからすればここにいる全員が若いです。わかりましたね?いいですね?」

「わかったわかった。いいから頼むわい」


念をおされて手をふるゴルサット、いかにも『何回も言わんでいいわい』とガキみたいに逆切れしてやがる。

俺がキャサリンを抱きしめてゆっくりと木から降りるとマスク副隊長は俺の方へにこやかに笑った。

「いつものことなので気にしないでください。隊長が遠征に出るたびに誰か彼かに手間をかけので。隊長は国に戻ると毎日順番に酒を奢り続けるのがいつものことですからね」


あの豪快じいさんにしてこのシュッとした副官あり。

何人かの若い兵士たちがボアの巨体の解体に入った。デカイから大変だ。


「いいんですよ経験にもなりますし隊長も若いヤツラにおごる理由つけてるだけですから。ガンガン手伝って毎日隊長に晩飯をたかって、ためたお金で結婚資金を作った強者の隊員もいるんですから!」


カラカラ笑うとじゃあといって副隊長は戻っていった。


金がないと出会える人も経験も限られちまう。

新しい経験も出会いもパワーいるし、若いうちにできるならそれに越したことない。

ゴルサットなりに考えてんだろうけど。半分は勝手やって面倒押し付けてるよな。


その日は西も南も関係なく全員に豪快なボアの丸焼きがふるまわれたのだった。


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