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第157話 情報交換?

そんな会話をしながらも研究者同士の意見交換は続く。

ゴルサットも簡単な返事をしながら話を促すけど司会はキャサリンだ。

魔法自然科学の分野ではキルリスより専門だし、王国の魔法自然科学は大陸一の専門性を誇る。

つまりキャサリンは大陸イチ、少なくとも大陸でトップクラスの魔法自然科学の権威なのだ。


かんかんがくがく。


各国の研究者それぞれのプライドもあり、興味もあり、この機会を逃せないという気持ちもある。

さらに国を代表しての調査団ということもあり、何らかの結果を残すことが求められている。


ただの大森林地帯、というだけではない。


異常な魔力密度。

他の地域とは明らかに異なる生態系、魔物体系。

そして異なる個体強度。

エルフの王国の存在。

精霊の力が集まる土地。

世界最強の生物である竜種が集うと言われる北方の山脈。

深淵の森の奥地に星の中心へと穿たれた底の見えない深い迷宮。

迷宮は旧人類の遺跡で構成されており、さらにその先奥深くにたどり着いたものは世の理の深淵に到達するという。


どれひとつとっても他と比べれば異常な地域だ。


クエッションだらけで人智が届かない場所だ。


「まずは可能な限りこの土地の異常性をはっきりさせるということでいいかしら?出来る限りの物証を確保しつつ数値として残せるものはきちんと計測して。説得力が欲しいし今後比較ができる基準が欲しいわ」


キリリとした顔でバツバツと仕切っていくキャサリン。


キャサリンが。

キャサリンが俺の知ってるキャサリンじゃない!

どこのできるバリバリお姉様だこの人は!?

俺の知ってるキャサリンは「いいかしら?」なんて言葉は絶対使わない!!


「今回は森の中央付近を目指しながらその先についても検討しましょう。奥へ行けばいくほどに危険が待ち受けていると言われてるから、安全が確保できそうなところまで行ってみることことでいいですね?この森の入り口と中央を比較できれば、奥地を探索する危険が予測ができるかもしれないわね」


くり返しになるがキャサリンは魔法自然科学の権威だ。

南の研究者2名はすっかりキャサリンに魅了されておりウンウンとうなづくばかり。

東の研究者でゴルサットを除く2名も妥当であるとうなづいた。


「最強のお二人はいかがですか?今回の調査目的からするとできる限り安全に配慮して内容を絞りましたけど」


うえーーん、キャサリンが俺にも他人行儀だよおおお~。

顔では平気なフリをして心が泣いた。悲しい。

俺は「お二人のうちの一人」なんて。

あとでたっぷりとキャサリンに慰めてもらわないと気が済まん!!


「泣くな、悲しむな、寂しがるな!お前には俺がいるだろう?」


やさしく肩を抱きしめられ、おれのほほにゴルサットが顔を・・・お、おい待てえええい!

じょ、ジョリジョリしたヒゲが痛いんだよ、だいたいおまえ汗臭い!!


「お二人とも急にお仲がよくなったのは結構ですけど。それでは同意ということでよろしいですね?」


冷たい顔をしたキャサリンがこちらを見て鼻をならす。

まるで「なにやってんだコイツら。フンッ」って言ってないけど言葉が聞こえる。

このオヤジのせいで俺までできない子扱いになってる気がする!!


「南の調査隊もそれでいいようだ、全体の行動としては東としてもそれでOKだ。その先の情報はワシとユーリで斥候していけるところまで行って調査してみよう。いかがかな?」

ゴルサットは気にもしない。

平気な顔で勝手なことをブッコみやがった。


「え?ちょ?あなたナニいってんだい、ダメだよそんなの!?行くならボクも連れて行かないと!!!」


あ。


キャサリンが元に戻った。

キャサリン教授がわがままキャサリンに豹変した!


「しかし危険が伴うからな。結婚前のお嬢さんをそんな場所へ連れて行ったら婚約者に叱られちまう。なあ?」


ゴルサット俺を見ながら言うなよ。

おまえはそんなに俺と冒険がしたいのか?それとも隙をみて亡き者にしようとしてるのか?人間レベルで俺になんかするのは無理ゲーだしコイツはそれをわかってると思ったけど。


「なに言ってるんだい、ボクがいかないんだったらユーリが行くわけないでしょ!そうだよねユーリ!!!」


「え。いや何がどうなってんの?だいたい行くなんてひとことも・・・」


っつーかなんでこのオッサンとサシで冒険することになりそうな雰囲気なんだ?


「なんだい!こんなオヤジと二人だけで冒険したいってボクを置いていくって!そんな気なの!?」


「そうじゃなくて、その」


キャサリン他の人がみんな見てるし。

ち、痴話げんかってとられちゃうよ、なんかそれも俺としては二人の仲が認められてる感じでちょっと嬉しかったりするけど。


「じゃあワシとユーリそしてキャサリン隊長の3名で必要に応じて斥候する場合がある、ということでいいな?南の調査隊にはメンバーが入っていなくて悪いが入手した調査データはきちんと共有することを誓おう。すまんがワシですらこの森では人を庇う余裕はないだろうからな」


他の隊員がキャサリンと俺を交互に眺める視線が痛い。


「ワシから言うのもナニだがキャサリン教授はかの有名な西の王国の魔法師団では5本の指に入るやり手じゃ。そしてこのユーリは今回の隊列では最強の魔導士だからな。ワシやキャサリン教授を庇えるのはこの男以外にいない」


こいつツラッとキャサリンのこと紹介しやがった。やっぱガッチリ俺達をマークして来てやがる。

それに俺のこと最強って勝手に言いやがってと思いハタときずいた。

こいつは・・・


「よし、それでいこう!ボクたちがいない間は東の副官さんにこっちの調査をお願いする形でいいよね?」


「ああ了承した。ワシらは思い残すことなく飛び回れるってわけだ」


「いいねいいね、それでいこう!」


ゴルサットとキャサリンが、ガッシ、と腕と腕を組み合わせた。


決定、ね。

そしてゴルサットが言ったことがもうこの調査団の共通見解なわけね。

会議でも商談でも、最後は声が大きいヤツと押しが強いやつが勝つんだよなあ。


ゴルサットは俺が最強だとバラしたことで、自分達の手におえないような強力な魔獣や魔物が出たら俺に対応させるわけだ。

俺が力を出さない方がこの調査隊にとって裏切りに見える。


なるほどこの調査隊で俺が力を発揮するように仕向けておいて、一緒に斥候に出れば間近で見放題で確認できる。

キャサリンがいれば俺は必ず彼女を庇うしゴルサットはそれを見放題。


はめられたってほどじゃないけどうまく誘導された。

キャサリンの特性もバッチッリ理解した上でハメてくるから面倒くさいぞ。

できる限りカモフラージュはするけどこの森ではどうなることやら。


『そんな連れないこと言うなよ』


まだチャンネルがつながってたか。

俺達は黒魔術でつなげた念話で会話を続ける。


『力があるもんは堂々としてりゃいいんだ。貴族だ家柄だなんっつーのは西の貴族社会だけの話だぞ?世界は広いのにつまらんことに拘っててもしょうがねーだろうが』


『そういうことは信頼できるヤツから言われてえんだけど。あんた東のお偉いさんだんだよな?俺らのことをさんざんチョロチョロと探っておいてなんなんだよ』


『無礼は許せ、俺が国を代表して謝る。だが世界を壊滅できるヤツが出てきたらうちの諜報部が放っとけないのもわかるだろう?俺達がココに来ているのだって結局理由は同じだ。俺達はお前に直接危害を加えようとしたことはないはずだぞ?』



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