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第138話 互いの事後

「いかがでしたか?」


キルリスとユーリが体質した後の第二王子執務室。

元近衛隊長であるジョルジュが第二王子へと話しかける。


「口ではうまくごかなしたつもりであろうがな。ワレの中でも考え直さねばならん。あやつはおそらく伝承に残るオーバー・スペックに間違いない。キルリスより遥かに洗練された魔法を使いよる。人間の至る限界に近いキルリスを軽く凌駕するのであれば人の域は越えておろうよ」


「今後の扱いどうなさいますか?」


「無論我らに協力してもらう。と言いたいとこだがな。今回の件でワレラの動きは国王の知るところとなっておるしシャルロットとの絡みもある。しばらくは表に裏にと『国益を担う範囲で』都合のいいように走ってもらうのがいいだろう。やつらが走りやすいようにニンジン(情報)も用意しておけ。お主には面倒な仕事を頼む」


「はっ。おまかせください。やつらの首輪となってみせましょう」



出たばかりの部屋でそんな会話が行われているとはしらず。


二人は来た時とおなじように階段を下り、検閲を受けてなんとか王宮の外へと出たのである。


「ぷはあ。娑婆の空気はうめえな」


「まったくだ。腹の探り合いだったがあんなもんだろう」


「おっ。うまくごまかせたかな?なんか変な結論になっちまったけど」


「だいたいごまかすなんてのは無理な話だ。あっちから探りを入れられて接触する口をつけられた、そんなとこだろう。ユーリが俺より上の魔導士だってのはバレたな。もともと疑っていたようだし」


「え?そうなのか?なんとかごまかせたかと思ってたけどな」


「無音の魔法をみるまでもなかっただろうが。あれはただの確認とけん制だ。要は『わかってるぞ』ということをハッキリさせただけだ」


「あんただって無音魔法かけるだろう?そこまでわかんのか?」


「殿下ご自身の魔法レベルはかなり高い。御自分で行うのはもちろんだが、あの方は自分で魔法使いになるためにレベルを高めたんじゃないからな。他人を観察するためだ」


「うーん、いってることがわかんねーぞ?」


「それなりのレベルなら詠唱破棄とか、スムーズだとか瞬間的にとか魔力のゆらぎを感じさせないとか、そういうものからわかるだろ?ああ、お前はそんなの気にしてねえか。でも積み上げてきた低レベルの人間はそういうところに敏感になるんだよ」


「なんだよ。始まりからもう俺が思ってたのと違うじゃんかよ」


うまくやり切れたと思ってた自分が恥ずかしいじゃないか。


「後はお互いの立場を暗黙で主張しあっただけだ。殿下は断定する必要があることは俺には聞いていない。それでいて聞こうと思えば聞けるぞ、わかっているぞ、とプレッシャーをかけてきたわけだ。白か黒かだけならひとつひとつをお前の魔法かどうか俺に確認すればいいだけだからなあ。」


「それはまた面倒なこった。結果はどうだ?成功か?失敗か?」


「どっちでもない。こんなもんで勘弁してやるから協力しろよ、という想定範囲に落とされた感じだ。むこうとしても国王と直接つながっている俺達を早々無下にもできんがほっとくつもりもないんだろう。あとは殿下の使いっぱしり次第だな」


「アイツって俺がやっちまったヤツだよな。ほんとどのツラさげて会話すりゃいいんだっつーの。」



王都の中央通りにあるホテルのロビー。

近くにはガリクソン商会の本社ビルもある。

以前マーサさんに支配人を紹介してもらったホテルだ。


高級そうな調度品、なめらかな曲線が色気を醸し出すあるティー・カップ。

美味い紅茶が湯気をたてる。


「なんだ、面白いもうけ話でももってきたのかと思ったんだが違うのか?」

シャツの上に渋いジャケットを着こなすダンディーな社長。

まるでどこかのモデルのように様になっている。

ガリクソン社長だ。


「たまにはこういう趣向も面白いと思いまして」

「そりゃあ顔をだしてもらって俺としても嬉しいが。どころで彼は?」


面白そうに俺をみたあと、俺の横にいる男を眺める目は鋭い。

油断ならない相手を見ている、そんな感じだ。


「お初にお目にかかります。王宮所属のベルーサという一兵卒です。命令を受けてここにおりますのでお気になさらずに」



第二王子ジョルジュの元近衛隊長ベルーサ。


殿下との話のあとから、俺の傍にちょくちょくあらわれてはしばらく傍にいる。

邪魔だっつーても「命令ですから」のひとことで付きまとわれるのはたまったもんじゃない。


東の話は、聞けばそれとなくは教えてくれる。

自分からは特に話す気はなさそうだし、深い話を聞こうとするとすっぽかされる。

何気にいやがらせをして俺に仕返ししてる気がするんだけど。


久しぶりにガリクソン社長から時間をもらった。

ガリクソン本社そばの某ホテル。

マーシャさんからのご紹介だ。


「社長はヤスキリ商会のことはご存じですよね?」

「もちろんだ。茶葉やハーブ類なんかの商売をしてる会社だからレストラン部門とも関わりがある。困れば手を貸してもらえるしあちらが困ればこちらも手伝う。お互い持ちつ持たれつの関係だな。なぜそんなことを聞く?」



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