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第129話 国王陛下からの

「雷と炎の竜が暗黒の暴風の中で幾重にも空を駆け巡ったと聞いたぞ?」


「え?ええ、それはまあ」


王様だけじゃなくてガイゼルも。いつのまにかシュタイン隊長までこっちを見られると怖いんですけど。


「見せれば相手が引くかなあと思いまして」


「ふむ。敵の兵士たちは膝をついて神に助けを求めて祈っておったと」


「それはその、なんだか敵の兵士たちがビビって逃げるかと思ったらその場で動かなくなってしまって。ちょっと追い払おうとしただけで」


「その後には巨大竜巻が敵の兵士を追い払ったそうじゃな?北の兵士たちは神の怒りにふれてしまったと今でも震えあがっておるらしい」


・・・今でも?


北に入っている諜報員からの情報だろう。退却した街でのウワサに違いない。

ワリイことしちまったかなあ。トラウマってやつ?

神様とかじゃないんだからきれいさっぱり忘れてくれないかなあ。


「けど神なんていませんでしたよ」


何度目だろう。

何回神はいなかったと言えばいいのやら。

俺がやったことだ神様がやったわけじゃない。


「お主は神をどう考えておる?」

埒があかないといわんばかりに王様から質問された。

それなら御使いから聞いた話をちょっとは理解したので。


「この世の理を創り守る存在でしょうか」


「それはまさに世界の真理に近いのであろう。だがただの人間からすれば人智を超えた力はみな神の力じゃぞ?少なくともそう感じるのが当たり前の人間ということになる」


自然信仰みたいな考えだろうか。

だけど自分よりはるかに大きな存在を前にすると、なんだか敬虔な気持ちになるのは確かだ。


「ではお主は神と思われてもしょうがあるまい?お主が自分のことをどう思おうともな」


突然の自然現象としてあんなことが起こればもう神様の仕業としか思えない。ナビゲータ先生に注意されたからわかったつもりだけど人間側?のトップから言われるとどうにも身に染みる。スミマセン世間知らずで。

でもやったのは俺だし俺は神様じゃない。


なら俺って何なの?って一瞬よぎった。


「俺はそんな存在じゃないですから」


「勘違いするでないワシもお主を神だとは言っておらん。『思われてもしょうがない』力を見せたというだけで他人の勝手な思いこみよ」


「俺は神様だなんて思われたくないのですけど」


ホント。

勘弁してほしい。

そう思ってたら王様が厳しい顔になった。


「それならやり方が違っておるわバカものが。普通に殲滅魔法を撃っておけばよかったろうに」


それはそうなんだろう。

そうしておけば俺はただのすごい魔法使いってだけ。

「王国の兵士は全員守りたかったのですけど。北の兵士を殺すのもなるべく避けたかったんです」


俺は王国軍の先遣隊として動いたのだから、甘いと言われるかもしれない。

だけれど生き死にを簡単に扱えない。


力のあるヤツの気持ちで、機嫌ひとつで簡単に弱いヤツが生きのびたり死んだり。

できるハズがない。前世で死んだのは俺なんだから。


仲間を守るためなら生き死になんてかまってられない。

じゃあ国の為にといわれるとそれは違うって思っちまう。

国民はおまえと同じ国にすむ仲間だろ、とか言われちまうと困っちまうけど。


俺の心が、前世からの魂が。

これは仲間のタメだって勝手に動くときに俺は容赦なんてしない。


仕事だから役目だからとか、そういうのはムリだ。

そんな風に割り切れない。



王様はふうと息をついた。


「そんなことじゃろうて。お主に頼んだのは時間かせぎだから責めたりはせんよ、それでは筋が違う」


「俺は時間をかせぐだけなら彼らを殺さずにできると思ったし、うまくやれば兵を引かせることができると思っただけなんです」


やっちまうことを恐れたと思われたかもしれない。

でもそれならそれでいい。

俺が年相応の子供なら、目の前で自分を殺そうとするヤツと対峙したことがなければ。

殺すなんて恐れるのが当たり前なんだから。


あの狂った目を自分に向けられたことがなければ。


俺は知っている。

ヒトはヒトを殺す。


頭のネジが飛んでるヤツは世の中に掃いて捨てるほどいる。

立場や役目で自分からネジを飛ばすヤツもいる。

そんなヤツラに。


二度と俺も仲間も殺させない。

そのためならいつだってやってやる。


「軍隊で考えればその考えは甘いとしか言えぬ。しかし軍人でないお主がそう考えるのは何の問題もない。戦闘が始まるしかない戦場で、その戦場自体を吹き飛ばせるからお主だからこそじゃ。戦わずに済むならそれに越したことはない」


「ありがとうございますでよいでしょうか?」


「さてな。ただ我らとお主は立場も考えも違う。ワシは他国へ侵略の意志はないが、王として我が国への侵略は徹底的に叩き潰せねばならん。だが相手が死ねば恨みが残る、3世代を越えねば薄まらぬ恨みと憎しみに王国が巻き込まれるのは避けたいというのもまた本音じゃよ」


何が正解なんだかわからない。

キャサリンは正解なんてないって言ってたけど。


「我らでは出来ないことがお主に出来るなら選べる道も増える。当たり前の人間では見えない道理も高みから俯瞰して見える。そんなことをシャルロットに教えてやってくれぬか?」


「俯瞰?道理?ですか?」


なんとなく、なんとなくしかわかんねえ。

ちゅーしょー的なんじゃないですか王様?

直接ああしろこうしろ言ってくれた方がやりやすいのですが。


どこかでため息が聞こえた気がするのはきっと気のせいだ。


「なんだか難しい話ですね。やりますけどわかってないかもしれませんよ?」


それでも俺がアイツの力になれるなら。

そばにいて力を貸してやりたいと思っちまう。


「それでよいシャルロットのことを末永く頼む。シャルロットが信念と現実の間で悩んでおったら道を示してやってくれ」


最近俺のまわりが大袈裟になってねーか?

すごい魔法が使えるからって俺は賢者なんかじゃない。

俺だから感じることを話せばいいってことだと思うけど。いいのかそれで?


「そんな大層なもんじゃないですけど友達のために俺ができることはやります。それでどうですか?」


「それでよいさ。ではまた会おうぞ?たまにはワシのところへも来ておくれ」



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