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第127話 ガイゼル司令官に報告

※ 改稿はちょっぴり表現の修正です

王宮にある王国軍の駐屯所。


俺は魔法学院を抜け出して王国軍の総司令官室を訪ねた。

王国軍最強の男ガイゼル総司令官から呼び出されたからだ。

今回のタペストリー領に関する報告。


「今回は助かったぞ礼を言う」

相変わらず無骨な人だけど一言一言に誠意がこもっているから、言葉は短くても気持ちが伝わる。


「俺は何にもしてませんので。キルリス師団長が。ええあの人が全部」


「本当か?」

ジイッと俺を見つめる目はいつでも戦場に立てる男の目だ。生死の際にいる本気の眼。

キルリスに全部なすりつける作戦はあっさりと失敗。


あんまりオオゴトにしたくないからボカそうとしたんだけどこの人には通じねえなあ。


「俺もちょこっとだけ手伝いさせてもらいました、けど大したことないです」


憮然とした表情がちょっと怖い。


「タペストリー領に駐屯していた兵士たちが騒いでいるぞ。なんでも神が降臨したとか言っているがお前だな?」


さすが情報早いし余分な探りがない直球だけ。

俺も面倒なかけひきは苦手なんだけど、この人が知ってしまうとやっぱり迷惑かけてしまいそうとか。

そのあたりウチではキルリス任せなんですよ、と言っても見逃してもらえないよなあ。


「ええと、やったのは俺なんですけど神はいませんでしたけど」


「ユーリよ」


ガイゼル司令官の厳しい目が俺を貫く。

戦場で向かい合っているような厳しい目線。


「俺はおまえとの戦闘も行った。お前の実力の一端をわかっているつもりだしその心根を信頼している。そんな俺が聞きたいのだ」


「はい・・・」

いつかフローラ会長にへりくだったらダメだって言われたのを思い出した。

でも俺は神様のように見せようとしたわけじゃない。

大天災的なナニかで北の兵士達の足が止まって、こりゃしょうがねえって引き返してくれるかと思ったんだ。

それに自分から『はい、私がそのときの神様です』なんて言えるわけない。


「お前がやったことは大したことなかったのか?それとも俺を信頼できずに言えないのか?」


ジッと見つめる真摯な瞳にごまかすことなんてできそうもない。


いえ俺は総司令をめっちゃ尊敬してます。

俺の中で漢と書けば間違いなくガイゼル総司令官です。


「俺としてはただのハッタリです。どうもそれを見た人たちが大袈裟に勘違いしたようで、正直に言うと持て余してます。俺は神様なんかじゃないんですけどそういう感じの扱いになっちまって。自分でもどうしたらいいかわからないです」

言葉にできる気持ちを正直に伝えた。

ぶっきっちょ過ぎてうまく伝わるか不安だけど。


東のエージェントの言葉が耳によみがえる。

タペストリー侯爵もフローラ会長も。

俺の扱いがどうにも神様寄りというか尊いもの寄りというか。


キルリスとキャサリンは変わらない。

いつも通りだから俺も普通でいられるけど、まわりのみんなに誤解されちまうとどうしていいかわからない。


だからかな。なんとなくキルリスに憎まれ口を叩いちまうのは。

多分俺はいつも通りにキルリスからくだらない文句を言い返して欲しいんだと思う。

だって自分でそんなことわかってるのだから。

ガイゼル司令官もタペストリー侯爵もフローラ会長も。キルリスやマーサさんやキャサリンも。

みんなみんな俺より立派だし大人だし”できた人”たちだ。

いちばんできていない俺が、ちょっと他より力があるからって威張ったり偉そうにしたら。

それって前世のクソったれな大人たちと同じじゃないのか。


「力を持つ者には勝手に他人からの思い込みがついてまわる。俺ですら武神だ王国の守り神だと言われるのだ。俺に勝つような男が戦場に出ればさらに持ち上げられるのは想像できる。俺にとってそういう誤解を迷惑な話だと思う時期は過ぎたがな」


ガイゼルが軍の指示以外にこんなにしゃべるのは珍しいと思う。

俺のことを気にしてくれてるのかもしれない。

そして気にすんな、そんなもんだ、と教えてくれている。

俺にはそんな簡単な話にはなかなかできなくて。

ガイゼル総司令官ほどの実績もなければでかい器でもないのに。


「司令官に聞いてもいいですか?」


「何でも聞くがいい。俺とおまえの間だ」


「東の国のことをどう思いますか?」


即断即決のガイゼル総司令官があごに手を置いて少し間をおいた。

俺の聞き方がまずかったか?

漠然とし過ぎただろうか。

でもそういうトコも含めて知りたいっつーか。


「国として考えるなら生き残ろうとするために必死なのだろう。東の軍隊は強くない」


ウッソリと口に出した。


「だが生き残ろうとする手段が公明ではない。あれでは国家というよりテロリストだ。他国に不信と動乱の種をまいて自国に被害がでないよう戦乱を芽吹かせる。そんなやり方は好きになれん」


総司令らしい短直な答えだった。

しかし総司令の話はそこで終わらかなった。


「昔に東の闇帝がきった対外政策でこうなっている。だが果たしてこれが闇帝の考えた東の辿り着く先だったかと考えれば違うと思う」


「どういうことでしょう?闇帝が始めたことを進めた先が今なのでしょう?」


「それは間違いない。だが俺が東の司令官であれば今と違うやり方を行う」


東の闇帝が今も政治を司っているならば方針を途中で転換させたのだろうか。

今は闇帝からすれば孫の代だ。今となってはわからない。


「国は他国に認めさせるために体面や品位も必要だということだ。言い方をかえれば、恰好を付けるということだろう。そのためにまず他の国から嘗められない力をつける必要がある、だから当時の闇帝のがやったことは理解できる。問題はその先だ。今のやり方では国として損をしていると思える」


そこまで話が進んだところで部屋の扉が開いた。


「随分と話が盛り上がっておるな。ガイゼルが酒も飲まずにそこまで語るとはなかなか珍しいものが見れる」


「私も初めて見ましたわ。総司令のお言葉は短くて潔いものがほとんどですもの」


入ってきたのはお久しぶり国王陛下と第二王女で同級生シャルロット。後ろにひっそりと二人を警護している近衛部隊のシュタイン隊長の3人だった。


総司令と俺は即座に立ち上がり王族へ向けて臣下の礼をとる。


今日の本命はガイゼルでなくこの人たちなのだ。



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