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第103話 目覚め

※ 改稿は表現の修正です

心地よい暗がりから体がゆっくりと浮遊していく。


目覚める前のまどろみのような心地よさから、少しづつ現実へと引き戻されていく。

幸せな世界。

誰からも邪魔されず、自分の思うように穏やかに過ごせる世界がもうじき終わる。


「こんなに寝たのはいつ以来かなぁ」


『そんな時間も人にはあってよいのかもしれませんね』


何でもないことのように。人間の生態について初めて知ったように。遠くに吹く風を眺めるように。

キザなことをいいやがって。


そんなの俺にだってわかるわけない。


「こんだけおまえとやり合ったのも最近はなかったな」


『あなたも少しはモノを考えるようになりましたからね。自分で考えて進んでいく分には私が何か言うハズもないでしょう』


「『わたしの役目ではありませんから』ってか」


『そういうことです。神の御言葉にカブせるとは少しは成長したと思った私が間違っていたようですね』


わざと?コイツからいつものように腹立たしさが伝わってくる。

でも本気のヤツじゃなくて穏やかにからかってる感じだ。


「親愛の情ってヤツだ。ありがたく受け取っといてくれよ」


『親愛と情。まさにまったく敬うことを知らない。それがあなたなのだからまあ勝手にやってろというところです』


「なんか明るくなってきた。もうすぐ目が覚める感じか?」


『目覚める瞬間にオーバー・スペック達が形にしてくれた魔力通路の補修と拡張を行う必要があります。このままではまた通路が破裂しますから。彼らとしては頑張ってくれましたがあなたの本気の魔力を1回流せば壊れてしまう程度の魔力路ですので』


「ああわかった。手伝ってくれるんだろう?」


『しょうがないですね。神に至らないヒヨッコどもの後始末はお告げをした私が引き受けるしかないでしょうし』


辺りが光に満ちてきて少しづつ開いた瞼から、現実が輝きとなって脳みそにダイレクトに飛び込んできた。


<力の顕現>

<極回復>

<回路再構築>

<壁面補強>

<整合化>


魔力を体内にまわしたその瞬間、一気に魔法を重ね掛けする。


これまでよりもはっきりと、自分の回路の中を流れる光の渦を、魔力の動きの輝きひとつひとつを感じる。

再構築された回路は、引っ掛かりはあるし壁面がガンガン響いて一瞬ほども保てそうもないけど。流れる魔力が一気に光の輝きの強さを増して、ひび割れはじめる直前に魔法が発動する。


その直後にはボロボロだった壁面は瞬きの間もなく補修され、大きく拡張された魔力回路が開通した。

なめらかで通る魔力に一切の抵抗を与えない、近未来的で硬質なツルンとした魔力通路。

続いて全身の魔力回路がすべて改修されると、一切の抵抗のない全身の回路が輝いて。全ての魔力回路がパワーアップしたことを伝えてくれた。



・・・そして俺はまた暗がりの中にいた。


「なあおい?なんで俺は目覚めねえんだよ」


『しょうがないでしょう。全身の魔力回路の再構築を行いましたので魔力切れです。数時間もすれば最低限動けるようにはなるでしょう』


「壊れた弱いところだけ治すんじゃなかったのかよ?俺はもう目覚めたときのキャサリンとの感動のひとことを考えてたのに!」


『知りませんよそんなこと。どのみちあなたの魔力回路は今後使用する魔法に対して最適化する必要がありました。あの棒のバフで神域に近い魔法を使い始めましたからね。少しでも魔力の流れの抵抗を無くすことと通過する容積を拡張することは必須でした。そしてこの機会をワタシが逃すハズがありません』


「ありませんって、おまえ、せめて俺にひとこととかよお」


『あなたからは手伝いを依頼されましたので役割を果たしただけですがなにか?』


「何も間違ってねえ。手伝いは頼んだしおまえは俺に必要な処置をしてくれたんだってのも何となくわかる。でもな?なんか、なんかすっげーーーーなっとくいかねえ!!」


『成長が足りないだけです。今の状況を考えれば当然の処置です。神の御使いに対して"おまえ"とはいつになったらあなたは成長するのでしょう?ここはクレームではなくお礼を言う場面でしょう』


「言わねえ、なんか言うべきかもしんねーけど気持ち的にぜってー言わねえ!」


『感情に走る子供ですか。まあいいでしょう。さあボチボチ目覚めのリテイクが始まりますよ』


世界に光が差し込んだ。

輝く世界が俺を呼んでる。


「・・・ああ、わかった。助かった。ありがとよ」


『最初から素直になればいいものを』


あらためて。ゆっくりと瞼を開いていくと。

自分のほほにかわいいキャサリンの涙がポタポタと落ちているのを感じる。

リテイクなんてするからキャサリンが泣いちゃったじゃねーか。


すぐ目の前のキャサリンの潤んだ瞳がとてもきれい。


「ただいま。キャサリン」


ギュウと頭を抱きしめられて、暖かくて、キャサリンの感触を皮膚で感じる。


俺はこの世界に戻ることができたんだ。


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