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神様に辿りつく少年  作者: 水砲


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第10話 考えろ

『ワタシという存在がいるのに。どうして凝り固まった考え方しかしないんでしょう』


何を言ってるのかわかってるのか?

コイツの立ち位置がホント不明。

俺の腹は何万回煮えくり返ればいいのか誰か教えてほしい。


『それではあなたの言う「力のあるヤツラ」の狙い通りの思考しかできていないということです』

喧嘩を売られている気がする。

心の触れてほしくあたりをザワザワと逆なでされている。


腹が立つ。自分の思い込みと情けなさに。いいように利用されそうな自分に。


「だいたい魔力検査って何なんだよ」


『ハイそれが当然の思考です。検査されるのは魔力量、魔力強度、適性のある魔力元素のレベルです。他に神々の加護や天からの称号といった魔力行使に関係ある事項も検査の対象です。判定は大規模な教会が保有する聖玉に魔力を流すことで判定されます』


じゃあやっぱりダメじゃんと言いそうになったけど自分で止めた。

コイツがカマかけているのだからココで終わるハズがない。

間違いなく"ナビゲータ"のイヤミったらしいため息を聞くことになる。


「どうやって判定するんだ?」


『体内を流れる魔力は、魔法発動前でもその属性や性質を持っています。魔法発動時には体内で魔力を循環させて必要な属性色や性質色を付加して濾し濃くして発動する魔法の元になる原始魔力まで高めます』


「え?色?」

思わず聞き返してしまった。

見えない魔力に色って。どういうことだ。


『あなたのボ・・頭でイメージしやすくするための方便です。実際には「性質」が正しい表現です。あとは色の深さ、魔力濃度の濃さと出来上がった量で魔法の威力が決まります』


「何となくわかった、気がする。何となくな」


『それではご理解いただけた前提で続きを話しますがよろしいですね?』


この野郎。俺の事ボンクラとか言いかけたな。

容赦がない。わざとらいしんだよ聞き方が。「ホントはわかってなくても知りませんからねー」って口調。


「要するに自分が使える魔力の色は自分の体の中に元があって、魔力検査で流す魔力にも自分が持っている色が出ちまう。いいんだろこれで?」

『今は・仮に・その解釈で結構です。あとは発出する色の濃さや強さでレベル判定されます』


喧嘩売ってんのか本当に。

なんでわざわざ何回も言葉を強調するのかね。


『はいはい。じゃあ魔力検査で流す魔力に、属性の色を出ないようにするのと色の濃さや強さを弱くすりゃいいわけだ。できるやついるのか?』


『高度な魔力操作をすれば可能です。条件は最低でレベル99を超える必要があります』


レベル99は人間の限界なはずだ。


「あと1か月で出来るものなのか?」


『素のあなたが取得することは不可能です。あなたには圧倒的なレベル上げ適性がありますがそれでも1か月という期間は短すぎます。せいぜい初歩の魔力操作の最初の段階まで取得できれば御の字です』


結局はできない、って言ってるのかコイツ?


さんざん気を持たせておいて。

だまって聞いてりゃこいつ好き勝手言いやがってっ。

やっぱりダメなんじゃねーか。


俺をふりまわして楽しんでやがんのかよ。

コケにして笑いものにしてやがんのかよ。


ああ?

なんだああ?

何いってんだコイツはああああ!!!


これでも教わってるから必死で我慢してきたけど、さすがに俺の堪忍袋もブチ切れた。

「っざげんじゃねーよてめえ!!」


血が昇って頭がガンガンする。


「俺はな、勝手にいいように扱われるのが大っ嫌いなんだよ!」


どいつもこいつも勝手に俺を利用しやがる。

笑いもの?腹いせ?自分たちのうっぷんを俺ではらす気か?


俺はこの世界で自分を思い出した時に決めたんだ。


もう二度と誰かに利用されてやらない。

俺は利用する側だ、クズどもを利用する側だ。

バカにするのもコケにするのも許さない。

絶対に譲れない。


このくそったれナビゲータにもだ。


はあ、とハッキリ聞こえるため息が聞こえた。もう止まらない。

こいつをぶん殴らないと気がおさまらない。


「おいおまえ。姿現せ。ぶん殴ってやる」


『・・・・』


ヤレヤレって感じのため息。

それから目の前で光の粒子が乱れて、俺より2、3歳くらい年上の優男がボワンと現れた。


『さあ現れたよ。それでどうするの?』


「ぶん殴るっ!」


そのまま思いっきり拳を振りかぶり顔面にたたきつけた、と思った。

俺の拳は優男に柔らかく深く沈みこんで拳の周りが渦を巻く。

そのまま跳ね返されて、俺は勢い余ってゴロンゴロンと転がって壁に激突した。


『無駄だよ。僕には実体がないからこの体はゴムみたいに作ってみたのさ。どうだい拳は痛まなかったかい?』


ニコリと笑って俺に向けて目を据えた。

こいつは絶対に俺の体を心配していない。


『キミの腕が届く背丈で、キミ流に言えば「イラつく」タイプの顔にしておいたから』


「っのやろう!」


腹がたつ、本当に腹が立つ。

もう自分でも何に腹を立てているのかわからなくなるくらいだ。


後ろから蹴りをいれても殴ってもやっぱり弾き飛ばされる。

殴っても何してもこいつの皮肉な笑いは変わらない。


ブンブンと俺が腕を振っているとあきれた顔でまたもや「ハア」と大きな声を立てた。


『いい加減に頭が冷えてくれると嬉しいけどね。少し遊んでやれば落ち着くかと思ったけど。おサルさんを見誤ってたかな?』


「お前を見てると余計に腹が立つんだよ!」

思いっきり振りかぶってもう一発顔面を殴ったら、今までの何倍も弾かれて壁に激突して意識が遠くなった。


『もういいですか?ならこの姿は消しますよ』


フォンッと音がして優男の姿が掻き消えて誰もいなくなった。

暗闇の中で荒い息の子供がひとり、壁にぶつかったオデコに血が滲む。


『デハ先ほどの続きになります』


待てって。デハじゃないだろうが。

まだ俺の息が、肩が、ハアハア言ってんだろうが。


『自業自得です』


また機械のような音声に切り替わった。

どうして口調まで変わるんだ。

でも少しだけ気持ちが落ちたせいで、頭がまわるようになってきた。


「どうしようもないんだろ?時間が足りないんだろ?」


『質問の意味が複数該当しますので前提から質問してください』


なにコイツ?

バカなの?

こんなの意味なんてひとつしかないだろ?アレ?


・・・そうだっけか?


「高度な魔力操作を魔力検査までに取得するのはムリなんだろ?」

『はい、その通りです』

「なら魔力検査で俺の能力を隠すことはできないのか?」


『できます。正確にはアナタ次第で可能です』


前提条件だ。

思い込むな。


「魔力検査で魔力を隠すには高度な魔力操作が必要、でも魔力操作は1か月では初歩くらいまでしか覚えそうもない。どうすれば解決できる?」


顔が見えたわけでも音が聞こえたワケでもないけど、ヤツがニマァと笑う感覚が伝わってくる。

この野郎まんまと俺を弄びやがって。

口惜しいけどコイツの正解にたどり着いたようだ。


『まず魔力操作の訓練を全力で行います。必ずしも初歩まで憶える必要はありませんが本気で行う必要があります』


『検査の後も続ける必要があります。完璧な魔力操作を必ず取得してください』


『転生ボーナスがありますので本気でやれば1か月で初歩はクリアするでしょう。今回は魔力検査までにそのレベルを目標にしてください』


次から次へとまくしたてられる。

いちいち区切られて「バカにわかりやすく教えてやってる」感がヒドイ。


「間に合わなくてもいいから本気で完璧な魔力操作を目指して訓練すりゃいい。そういうことだな?」


『その通りです。ポイントは本気で魔力操作を目指すこと。そしてこれからの人生のどこかで必ず完璧な魔力操作を身に付けることです』


これからの人生・・・?わかるかそんなもん。

やることはわかったが理屈はサッパリだ。


『今はそれでもいいですが考えることをやめたら終わりです。モノを考えないということは「考える人に従う」ことになりますよ。それではアナタの言うところの・・・』


「わかった、わかったから。そこはやりながら考えるから、まずはその魔力操作を教えろよ。教えてくれるんだろ?」


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